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メンデルスゾーン:組曲「夏の夜の夢」

ジョージ・セル指揮 コンセルトヘボウ管弦楽団 1957年12月2日~4日録音



Mendelssohn:A Midsummer Night's Dream ,Op.21 [1.Overture Op.21]

Mendelssohn:A Midsummer Night's Dream ,Op.61 [2.Scherzo, Op.61 No.1]

Mendelssohn:A Midsummer Night's Dream ,Op.61 [3.Nocturne, Op.61 No.7]

Mendelssohn:A Midsummer Night's Dream ,Op.61 [4.Wedding March, Op.61 No.9]


メンデルスゾーンの天才性が発露した作品

まず初めにどうでもいいことですが、この作品は長く「真夏の夜の夢」と訳されてきました。それは、シェークスピアの原題の「A Midsummer Night's Dream」の「Midsummer」を「真夏」と翻訳したためです。
しかし、これは明らかに誤訳で、この戯曲における「Midsummer」とは、「midsummer day(夏至)」を指し示していることは明らかです。この日は「夏のクリスマス」とも呼ばれる聖ヨハネ祭が祝われる日であり、それは同時に、キリスト教が広くヨーロッパを覆うようになる以前の太陽神の時代の祭事が色濃く反映している行事です。ですから、この聖ヨハネ祭の前夜には妖精や魔女,死霊や生霊などが乱舞すると信じられていました。シェークスピアの「A Midsummer Night's Dream」もこのような伝説を背景として成りたっている戯曲ですから、この「Midsummer」は明らかに「夏至」と解すべきです。
そのため、最近は「真夏の夜の夢」ではなくて、「夏の夜の夢」とされることが多くなってきました。
まあ、どうでもいいような話ですが・・・。

さらに、どうでもいいような話をもう一つすると、この作品は組曲「夏の夜の夢」として、序曲に続けて「スケルツォ」「間奏曲」「夜想曲」「結婚行進曲」が演奏されるのが一般的ですが、実はこの序曲と、それに続く4曲はもともとは別の作品です。

まず、序曲の方が先に作曲されました。これまた、元曲はピアノ連弾用の作品で、家族で演奏を楽しむために作曲されました。しかし、作品のできばえがあまりにもすばらしかったので、すぐにオーケストラ用に編曲され、今ではこの管弦楽用のバージョンが広く世間に流布しています。
これが、「夏の夜の夢 序曲 ホ長調 作品21」です。
驚くべきは、この時メンデルスゾーンはわずか17歳だったことです。
天才と言えばモーツァルトが持ち出されますが、彼の子ども時代の作品はやはり子どものものです。たとえば、交響曲の分野で大きな飛躍を示したK183とK201を作曲したのは、彼もまた1773年の17歳の時なのです。
しかし、楽器の音色を効果的に用いる(クラリネットを使ったロバのいななきが特に有名)独創性と、それらを緊密に結びつけて妖精の世界を描き出していく完成度の高さは、17歳のモーツァルトを上回っているかもしれません。
ただ、モーツァルトはその後、とんでもなく遠いところまで歩いていってしまいましたが・・・。

ついで、この序曲を聴いたプロイセンの王様(ヴィルヘルム4世)が、「これはすばらしい!!序曲だけではもったいないから続くも書いてみよ!」と言うことになって、およそ20年後に「劇付随音楽 夏の夜の夢 作品61」が作曲されます。
このヴィルヘルム4世は中世的な王権にあこがれていた時代錯誤の王様だったようですが、これはバイエルンのルートヴィヒ2世も同じで、こういう時代錯誤的な金持ちでもいないと芸術は栄えないようです。(^^;
ただし、ヴィルヘルム4世の方は「狂王」と呼ばれるほどの「器の大きさ」はなかったので、音楽史に名をとどめるのはこれくらいで終わったようです。

作品61とナンバリングされた劇付随音楽は以下の12曲でできていました。

1. スケルツォ
2. 情景(メロドラマ)と妖精の行進
3. 歌と合唱「舌先裂けたまだら蛇」(ソプラノ、メゾソプラノ独唱と女声合唱が加わる)
4. 情景(メロドラマ)
5. 間奏曲
6. 情景(メロドラマ)
7. 夜想曲
8. 情景(メロドラマ)
9. 結婚行進曲 - ハ長調、ロンド形式
10. 情景(メロドラマ)と葬送行進曲
11. ベルガマスク舞曲
12. 情景(メロドラマ)と終曲(ソプラノ、メゾソプラノ独唱と女声合唱が加わる)

ただし、先にも述べたように、現在では、作品21の序曲と、劇付随音楽から「スケルツォ」「間奏曲」「夜想曲」「結婚行進曲」の4曲がセレクトされて、組曲「夏の夜の夢」として演奏されることが一般的となっています。


オケの響きの何という素晴らしさ!!

正直に告白すると、これはセルが何度かクリーブランド管と録音したものよりもはるかに素晴らしいと言わざるをえません。
何が違うのかと言えば、オケの響きです。
本当に、ベイヌムが健在だった50年代のコンセルトヘボウの響きは本当に素晴らしくて、間違いなく当時の世界最高のオケであったことを確信させてくれます。もちろん、響きだけでなく、機能面でも完璧主義者セルの指示に余裕でこたえています。
とりわけ素晴らしいのが木管の美しさで、それはこの57年に録音したロザムンデにも夏の夜の夢にも共通しています。もちろん、弦楽器のふっくらとした温かい音色も実に見事です。

しかし、その様な素晴らしいオケの響きは60年代の録音では影をひそめます。セルは手兵であるクリーブランド以外ではこのコンセルトヘボウとの関係が深くて、60年代に入ってもベートーベンの運命やシベリウスの2番などを録音しています。
しかし、残念なことに、60年代の録音からはこのような素晴らしいオケの響きは影をひそめています。

コンセルトヘボウは自国民優先の伝統がありました。
メンゲルベルグからベイヌムへと引き継がれたシェフの座は、ベイヌムの突然の死によって1961年に32歳のハイティンクに引き継がれました。もちろん、若きハイティンクに責を帰することはできません。実際、病弱だったベイヌムの晩年には、すでにコンセルトヘボウに陰りが出ていたことも事実です。
オケの高いレベルを維持するのは並大抵のことではないという事です。

出来得れば、ベイヌムが健在だった50年代に運命やシベ2のような大物を録音しておいて欲しかったというのは贅沢にすぎるでしょうか。

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