クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~



AmazonでCDをさがすAmazonでグリュミオー(Arthur Grumiaux)のCDをさがす
Home|グリュミオー(Arthur Grumiaux)|モーツァルト:ヴァイオリンソナタ第28番 ホ短調 K.304

モーツァルト:ヴァイオリンソナタ第28番 ホ短調 K.304

(P)クララ・ハスキル (Vn)アルテュール・グリュミオー 1958年10月16~17日録音



Mozart:ヴァイオリン・ソナタ第28番 ホ短調 K.304(300c) 「第1楽章」

Mozart:ヴァイオリン・ソナタ第28番 ホ短調 K.304(300c) 「第2楽章」


マンハイム・ソナタ:作品番号1のK301〜K306と愛らしいピエロンに捧げられたK296

モーツァルトが本当の意味でヴァイオリンソナタの作曲に着手するのは就職先を求めて母と一緒にマンハイムからパリへと旅行したときです。このとき、モーツァルトはマンハイムにおいてシュスターという人物が作曲した6曲のヴァイオリンソナタに出会います。モーツァルトはこのときの感想を姉のナンネルに書き送ってます。
「・・・わたしはこれらを、この地ですでに何度も弾きました。悪くありません。・・・」
「悪くありません。」・・・この一言がモーツァルトから発せられるとは何という賛辞!!

残念なことに、モーツァルトを感心させたシュスターの作品がどのようなものかは現在に伝わっていません。しかし、それらの作品が、従来のピアノが「主」でヴァイオリンが「従」であるという慣例を打ち破り、その両者が「主従」の関係を交替しながら音楽を作り上げていくという「交替の原理」にもとづくものであったことは間違いありません。
モーツァルトは旅費を工面するために引き受けたド・ジャンからのフルート作品の作曲にうんざりしながら、その合間を縫ってヴァイオリンソナタを作曲します。このうちの5曲(K301・K302・K303・K305・K296)はマンハイムで完成し、残りの2曲(K304、K306)はパリへ移動してから完成されたと言われています。そして、K301〜K306の6曲はプファルツの選帝候妃に作品番号1として、そしてK296はマンハイムで世話になった宿の主人の愛らしい娘、テレーゼ・ピエロンに捧げられています。
私たちが、モーツァルトのヴァイオリンソナタとしてよく耳にするのはこれ以降の作品です。

モーツァルトは選帝候妃に捧げた作品番号1の6曲について、明確に「ピアノとヴァイオリンのための二重奏曲」と述べています。そして、あまりにも有名なホ短調ソナタを聴くときに、何かをきっかけとして一気に飛躍していくモーツァルトの姿を見いだすのです。
そこでは、ピアノとヴァイオリンはただ単に交替するだけでなく、この二つの楽器が密接に絡み合いながら人間の奥底に眠る深い感情を語り始めるのです。アインシュタインが指摘しているように、「やがてベートーベンが開くにいたる、あの不気味な戸口をたたいている」のです。
さらに、作品番号1の最後を飾るK306と愛らしいピエロンのためのK296は、当時のヴァイオリンソナタの通例を破って3楽章構成になっています。この K296は第2楽章がクリスティアン・バッハのアリア「甘いそよ風」による変奏曲になっていて、実に親しみやすい作品です。また、K306の方は、K304のホ短調ソナタとは打って変わって、華やかな演奏効果にあふれたコンチェルト・ソナタに仕上がっています。


才能あふれる若者を引き立てようとしたココロ穏やかな音楽

2010年が明けました。普通はこの後に、2009年のあれこれのふりかえりや反省などとともに新しい年への希望や抱負などが続くのですが、このサイトでは、「1959年にリリースされた音源が新しくパブリックドメインになりました」となります。(^^v
さて、この1959年という年を振り返ってみると、実にみのり豊かな年であったことに気づかされます。
リヒターの「マタイ受難曲」やショルティの「ラインの黄金」は言うまでもなく、その後長くスタンダードの位置を占めるようになる録音が数多くリリースされた年でした。

さて、その中から、新年の最初を如何にと熟慮した末に(?)選んだのが、このハスキル&グリュミオーによるモーツァルトのヴァイオリンソナタです。
まず何と言っても、グリュミオーのヴァイオリンの音が美しい!!そして、録音の方も申し分なしで、その美音を実に見事にすくい取っていて不満は全く感じません。もちろん、ただ音が美しいだけでなく、グリュミオーのヴァイオリンはモーツァルトの音楽にこめられた「歌心」を見事に描ききっています。
少し残念なのは、ハスキルがグリュミオーのサポートに徹しきっているのか、いささか控えめなことです。たとえば、ホ短調ソナタの第2楽章などは、もっと零れるような涙のしずくを感じさせるように弾くことだって可能だと思うのですが、何故か彼女はそうしていません。あくまでも控えめにふるまってグリュミオーの美しさを際だてようとしています。
しかし、考えようによってはこういうの演奏は希有な存在です。芸の世界は目立ってなんぼ・・・です。それをあえて、自分を殺してまでも相手の美点をひきたてようとしているのですから。
確かに、ヴァイオリンとピアノがしっかりと自己主張して丁々発止のやりとりをするのを聞くのも耳福ではあります。
しかし、一つの世界を築き上げた老人(ハスキル63歳)が、才能あふれる若者(グリュミオー37歳)を引き立てようとした演奏は、実にしみじみとココロ穏やかにさせてくれて、これまた耳福であります。
弱肉強食を是とし、その中で他人を出し抜いてでも前に出ることを賛美してきた社会が醜くも崩壊する様を見せつけられた後では、こういう音楽はまさに(あまり使いたくない言葉ですが・・・)、一つの「救い」であるのかもしれません。

この演奏を評価してください。

  1. よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
  2. いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
  3. まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
  4. なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
  5. 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10



1200 Rating: 5.8/10 (195 votes cast)

  1. 件名は変更しないでください。
  2. お寄せいただいたご意見や感想は基本的に紹介させていただきますが、管理人の判断で紹介しないときもありますのでご理解ください
名前*
メールアドレス
件名
メッセージ*
サイト内での紹介

 

よせられたコメント

2010-01-03:bebe


2010-01-09:hiroron


2010-07-22:nako


2012-01-19:鈴木正仁





【リスニングルームの更新履歴】

【最近の更新(10件)】



[2024-04-18]

エルガー:チェロ協奏曲 ホ短調, Op.85(Elgar:Cello Concerto in E minor, Op.38)
(Cello)アンドレ・ナヴァラ:サー・ジョン・バルビローリ指揮 ハレ管弦楽団 1957年録音(Andre Navarra:(Con)Sir John Barbirolli:Halle Orchestra Recorded on 1957)

[2024-04-16]

フランク:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ イ長調(Franck:Sonata for Violin and Piano in A major)
(P)ロベール・カサドシュ:(Vn)ジノ・フランチェスカッティ 1947年5月7日録音(Robert Casadesus:(Vn)Zino Francescatti Recorded on May 7, 1947)

[2024-04-14]

ベートーヴェン:序曲「コリオラン」, Op.62(Beethoven:Coriolan, Op.62)
アルトゥーロ・トスカニーニ指揮 NBC交響楽団 1945年6月1日録音(Arturo Toscanini:NBC Symphony Orchestra Recorded on June 1, 1945)

[2024-04-12]

モーツァルト:弦楽四重奏曲 第3番 ト長調 K.156/134b(Mozart:String Quartet No. 3 in G Major, K. 156)
パスカル弦楽四重奏団:1952年録音(Pascal String Quartet:Recorded on 1952)

[2024-04-10]

ハイドン:弦楽四重奏曲第1番 変ロ長調「狩」,Op. 1, No. 1, Hob.III:1(Haydn:String Quartet No.1 in B-Flat Major, Op. 1, No.1, Hob.3:1, "La chasse" )
プロ・アルテ弦楽四重奏団:1938年6月5日録音(Pro Arte String Quartet:Recorded on June 5, 1938)

[2024-04-08]

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番 ハ短調 作品18(Rachmaninov:Piano Concerto No.2 in C minor, Op.18)
(P)ジェルジ・シャーンドル:アルトゥール・ロジンスキ指揮 ニューヨーク・フィルハーモニック 1946年1月2日録音(Gyorgy Sandor:(Con)Artur Rodzinski New York Philharmonic Recorded on January 2, 1946)

[2024-04-06]

シベリウス:交響的幻想曲「ポヒョラの娘」(Sibelius:Pohjola's Daughter - Symphonic Fantasy Op.49)
カレル・アンチェル指揮:チェコ・フィルハーモニー管弦楽団 1962年6月7日~8日録音(Karel Ancerl:The Czech Philharmonic Orchestra Recorded on June 7-8, 1962)

[2024-04-04]

ベートーヴェン:ロマンス 第2番 ヘ長調, Op.50(Beethoven:Romance for Violin and Orchestra No.2 in F major, Op.50)
(Vn)ジノ・フランチェスカッティ:ジャン・モレル指揮 コロンビア交響楽団 1952年4月23日録音(Zino Francescatti:(Con)Jean Morel Columbia Symphony Orchestra Recorded on April 23, 1952)

[2024-04-02]

バルトーク:弦楽四重奏曲第6番, Sz.114(Bartok:String Quartet No.6, Sz.114)
ヴェーグ弦楽四重奏団:1954年7月録音(Quatuor Vegh:Recorded on July, 1954)

[2024-03-31]

ベートーヴェン:ロマンス 第1番 ト長調, Op.40(Beethoven:Romance for Violin and Orchestra No.1 in G major, Op.40)
(Vn)ジノ・フランチェスカッティ:ジャン・モレル指揮 コロンビア交響楽団 1952年4月23日録音(Zino Francescatti:(Con)Jean Morel Columbia Symphony Orchestra Recorded on April 23, 1952)