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シェルヘン(Hermann Scherchen)|ハイドン:交響曲第45番 嬰ヘ短調 「告別」
ハイドン:交響曲第45番 嬰ヘ短調 「告別」
シェルヘン指揮 ウィーン交響楽団 1958年録音
Haydn:交響曲第45番 嬰ヘ短調 「告別」 「第1楽章」
Haydn:交響曲第45番 嬰ヘ短調 「告別」 「第2楽章」
Haydn:交響曲第45番 嬰ヘ短調 「告別」 「第3楽章」
Haydn:交響曲第45番 嬰ヘ短調 「告別」 「第4楽章」
帰りたいよー!
ハイドンの初期シンフォニーの中では最も有名な作品です。もちろん、その「有名」さは、「告別」と題されることになるエピソードによるものです。そして、このエピソードについては、知っている人にはウンザリするほど聞かされた代物でしょうが、知らない人は知らないわけであって、こういうサイトの性質上、やはり説明せざるを得ません。
耳タコの人はご容赦あれ。
ハイドンが使えていたエステルハージ候は夏になると、湖を見渡す風光明媚な場所にたてられたエステルハーザ宮で過ごすことが習慣となっていました。この宮殿はフランスのヴェルサイユ宮殿をモデルとしたものだったのですが、建設当初はかなり手狭で、多くの楽員は家族を連れて行くことが出来ず、単身赴任を強いられていました。
通常、一年の半分をこの宮殿で過ごすのが通例だったので、これは多くの楽員にとってかなり不便であると同時に負担でもあったようです。
ところが、1772年の滞在は、どういう訳か、通常の6ヶ月が経過してもエステルハージ候は帰ろうとせず、単身赴任の延長は2ヶ月を超えるようになってしまいました。これには、さすがに多くの楽員から不満の声が起こり、楽長であったハイドンに何としてくれと言う訴えが殺到するようになりました。
しかし、封建制度のもとで、主君である候に面と向かって苦情を訴えることも出来ませんから、それを音楽を通して婉曲に伝えようとして作曲されたのがこの「告別」と題された交響曲でした。
目玉は最終楽章です。
最初はプレストで、何の変哲もない通常の終曲という風情で音楽が始まります。この音楽が属音上で半終止し、その後フェルマータ休止をはさんでアダージョの音楽が始まります。言うまでもないことですが、交響曲の終わりはプレストのまま華やかに終わるのが普通ですから、これは明らかに「異様」です。
きっとエステルハージ候もこれは「普通」じゃないとすぐに気づいたはずです。
しかし、ハイドンの趣向はさらに手がこんでいました。
彼は、この後、譜面台の蝋燭を吹き消して楽員が次々と退場していくように指示したのです。
第1オーボエと第2ホルンから始まって、次々と楽員が去っていきます。そして、最後の14小節は二人の第1ヴァイオリンだけが寂しげに演奏を続け、消えるように音楽が終わると、その二人も蝋燭を吹き消して去っていきます。
まさに「そして、誰もいなくなった」です。
この曲が実際に演奏されると、その意味するところを悟った候は、その翌日に休暇を与えて全員を帰郷させたそうです。
ただし、この「告別」というタイトルはハイドンがつけたものではなく、18世紀のわり頃に後世の人がつけたもののようです。
おそらくはこの作品の最高の演奏だろうと思います。
ハイドンの初期シンフォニーの中では、この44番「悲しみ」と45番の「告別」は人気作で、パブリックドメインの音源を見つけ出すことが出来ました。特に、44番に関してはシェルヘンとフリッチャイという注目に値する指揮者による二通りの音源をアップすることが出来ました。
さらに、嬉しいことに、この二つの演奏、全くといっていいほどに雰囲気が異なります。スタンダードで正統派のフリッチャイと、異形のシェルヘンです。
と、書いたのですが、この45番の「告別」は、まさに正統派の素晴らしい名演だと言い切れます。
シェルヘンは後のベートーベンの全集が祟って、爆裂型の指揮者として珍重されたりしているのですが、それは大きな誤解です。彼の演奏の大部分は、当時の新即物主義の典型とも言うべきすっきりとしてポロポーションの整った見通しの良い演奏が持ち味でした。そして、そう言う彼の美質がもっとも上手く発揮された演奏の一つがこの「告別」の演奏です。
それにしても、今年のニューイヤーコンサートで繰り広げられた、告別の演奏は「醜悪」の一言に尽きるものでした。とりわけ、バレンボイムのあの無様な猿芝居は見ていて吐き気を催した人多かったのではないでしょうか。
流石は、自分のキャリアアップのために妻のデュ・プレを連れましてボロボロにし、さらには彼女が難病にかかると、さっさと見切りをつけて他の女に乗り換えて恥じることのなかった男に相応しい「猿芝居」でした。
もしも、あの演奏を見て(そう、聞いてではなくて、見て!!)、この作品に悪いイメージを持たれた方には是非とも一度は聞いてもらいたい演奏です。
最後に、演奏者が「アウフ・ヴィーダーゼーエン」(綴りが分からん^^;)と言って去っていく趣向もなかなか面白いです。もちろん、シェルヘンはあんな趣味の悪い猿芝居はしていませんので安心できます。
なお、上記の悪口雑言はバレンボイムファンの方には聞くに耐えないものと思われますが、デュ・プレを深く愛している私にとっては、彼はこの世の中で「許せないやつ」ランキングの最上位に常に位置しますので、ご容赦のほどをm(_ _)m
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よせられたコメント
2009-07-06:Sammy
- 個人的には「ニューイヤー」は新年早々なので、別に「猿芝居」でもよいと思っていますけれど…。あれはあれでくつろいでいていいのでは、別に芸術性を求めなくともいいのでは、というのが私の「ニューイヤー」の受け止め方です。
この作品についてはかつてある演奏会で、事情を知らぬまま聴いていて、楽団員がどんどんいなくなるので驚いたのが初めての出会いでした。以降意識して聞いてきましたが、そのほとんどがピリオド楽器の演奏だったのもあり、それと対比すると、いや、現代楽器の演奏と比べても、この演奏はゆれの少ない、強いきちっとした音で引きこまれた。かなりどっしりきっちりした演奏だと思います。
それだけに、逆に終楽章の後半の独特のゆったりした安定感、その中での一つ一つの楽器の美音は素晴らしいです。Auf Wiedersehen!だけでなく、足音らしいものも入っているのも愛嬌ですね。
2009-07-08:ヨシ様
- シェルヘンのハイドン。いいですね。
蛇足ながら、私もバレンボイムは大嫌いです。
なぜピアニストなのに指揮をしたがるのでしょう。
ピアニストとしては優秀なのに指揮は最悪、最低です。
バレンボイムがニューイヤーを二度と指揮しないように
願うばかりです。
あの下品な指揮ぶりは、もう二度と見たくありません。
2009-07-09:ナルサス
- シェルヘンという人は変わり者&すこし古い人(→音質の良い録音がなさそう)というイメージがあるからか知名度の割りに人気面ではどうにも・・・という人ですね。
私も、現代音楽(というかあまり知られていない作品全般)を熱心に広めようとしたことや世界各地での幅広い指揮活動など、音楽に対する献身ぶりは尊敬していたものの、純粋に演奏家としては超一流とは言いがたいと感じていました。
しかし、この「告別」は本当にいいですね。月並みですが聞いていて気分が晴れて幸せになれます。
以前、N響の団員さんがブログでネルロ・サンティが来演した際に「ハイドンをこんなに面白く聞かせられる人はなかなかいない」と書いていましたが、こんなに素敵なハイドン演奏が存在しながら演奏会でハイドンがプログラムに上がることがなかなかないというのは指揮者、オケ双方とも難しいのでしょうね。
私は今年のニューイヤーコンサートは1分1秒たりとも視聴しませんでした・・・。
「バレンボイムのJ.シュトラウスなんて誰が好き好んで聞くんだ!」という気分でしたから。2008年のプレートル翁(2010年も指揮)のニューイヤーで満足していた矢先に「09年はバレンボイム」と発表された時は本当に気分を害されましたwせめてゲルギ(ry
もっとも、改めてyou tubeで例の告別を見てみましたが、あれはあれで楽しめたというのが正直なところでしたが・・・。
それにしてもスター・ピアニスト出身の指揮者というのは上手くいかないようですね。アシュケナージは言うまでもなくバレンボイムは指揮者としても成功を収めたと言われていますがピアニストとしての才能と比較すれば比較になりません。
正直、ピアニストとしては「デュ・プレの件があったことは承知しているが、それでも素晴らしい音楽家だ」という風に賞賛する人が存在しても驚きませんが、指揮者としては「デュ・プレを自らのキャリアアップのために連れまわした挙句・・・」と言われても仕方がないですね。
2011-02-25:Joshua
- 1958年のこの録音、
第4楽章が、団員の Aufwiedersehen「さようなら」
が次々にオンマイクで聞こえてきます。
国立歌劇場のオケと録音したCDでも同じことをしていますね。
そこでふと思ったのは、この当時二十歳の団員でも今は、72歳。
4、50台だった団員は、鬼籍に入っているんだろうなあ、
ということです。すると妙に「さようなら」の声が実感を持って
響いてきて不思議でした。もっともシェルヘンが狙った効果ではないでしょうが。
演奏は、ほかにアップロードしていただいている、ビーチャム・フリッチャイ・セル
と並んで味わい深いものです。もちろんワルターのもいいですが。
2011-03-03:nako
- 終楽章、しゃれてますね!足音が入っているのも大変によいですね^^ギシギシどすんなんて音まで聞こえたりして。シロウトなこともあり、普通にCDで聴いていても撤収の様子がよくわからず、もどかしい思いをしていたのですが、すっきりしました。
怖いもの見たさで、バレンボイムのニューイヤーの映像、見てしまいました。
ニューイヤーの「お遊び」は、親しみがもてて好きなのですが、あれはちょっとやりすぎじゃないかいな、というのが個人的感想です。もっとオトナのユーモア的なものの方が好ましく思われます。
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