Home|
フリッチャイ(Ferenc Fricsay)|ベートーベン:フィデリオ
ベートーベン:フィデリオ
フリッチャイ指揮 スイス・ロマンド管弦楽団 他 1951年録音
Beethoven:フィデリオ「序曲」
Beethoven:フィデリオ「第1幕」
Beethoven:フィデリオ「第2幕」
ベートーベン唯一のオペラ
台本のひどさはよく指摘される作品ですが、作曲の経緯を見てみるとベートーベン自身は気に入っていたようです。友人の助けを借りて何度も書き直しては推敲を重ねています。
それでもひどい出来だと言わねばなりません。
ベートーベンはモーツァルトの「コシ・ファン・トゥッテ」を不道徳なオペラだと口を極めて非難しています。そして、それに対するカウンターとして彼が理想とする女性をこのオペラで描こうとしたようです。
「人間とは自分が見たいと思う現実しか見ない」と言ったのはユリウス・カエサルです。その言葉を借りれば、ベートーベンは自分がみたいと思う女性像を描こうとしました。
この不都合極まる台本も、理想の女性を追い求めるベートーベンにとっては全く不都合ではなかったようです。
ただし、「現実の女性」と言うものを多少は知っていて、「見たくもない現実」をいくらかでも直視できる人間とっては、それはあまりにも「へんてこりん」で「強引」なストーリーだと言うことです。
ただし、そうであったからこそ、彼が見たいと思った理想の夫婦愛と人間賛歌が一切の夾雑物を排除して歌い上げることができたとも言えます。そして、その理想を最後まで愚直に信じ続けたベートーベンであったからこそ、それは十分な現実感をもって聴くものを跪かせる力を持ったとも言えます。
でも、ユング君はモーツァルトのコシの方が好きです。
【フィデリオのあらすじ】
《第1幕》
娘マルツェリーネ(S)は、彼女に言い寄るヤッキーノ(T)をはねのけてしまう。マルツェリーネは、数ヶ月前から牢番として看守ロッコ(Bs)のもとで働くフィデリオ(S)に恋心を抱いているからである。
しかしこのフィデリオこそ、本当はレオノーレという名の女性で、公には死んだと知らされている最愛の夫、フロレスタン(T)を密かに探し出すために潜り込んだのである。
金こそが幸福のすべてと語る看守ロッコは、娘マルツェリーネがフィデリオと結婚してくれたら、と願っている。フィデリオはロッコだけが入ることを許されている一番奥深い牢に何とか潜り込みたいと強く願う。
刑務所所長ドン・ピッツァロ(Bs)は大臣ドン・フェルディナンド(Bs)が視察に来るという急の手紙を受け取る。政敵フロレスタンを不当に幽閉している彼は、密かにフロレスタンの殺害を企む。そして、ロッコに金で依頼するが後込みする姿を見て、彼には墓穴を掘る準備だけさせて、自分でフロレスタンを殺害してしまおうと決心する。
レオノーレは物陰でピツァロとロッコのやりとりを聞きフロレスタン救出の意を決する。
《第2幕》
フロレスタンの牢は地下にあるが、ロッコとレオノーレはそこで命じられるままに墓穴を掘っている。レオノーレはそこにいる囚人がフロレスタンだと気づきどんな犠牲を払っても夫を助け出す決心をする。
やがて合図によりピッツァロが地下牢に到着し、短剣を引き抜いてフロレスタを殺害しようとする。そのとき、フィデリオ(レオノーレ)が「殺すのなら先ず、彼の妻を!」とピッツァロに短銃を向ける。
一瞬ピッツァロがひるんだその時に、大臣ドン・フェルナンドの到来を告げるトランペットが鳴り響く。
人民が駆けつけ、ドン・フェルナンドは幽閉されていた囚人を解放する。
驚愕するピッツァロの前にロッコは進み出て、フロレスタンが彼の横暴で不当に幽閉されていたこと、そして彼から殺害を命じられていたことを告げる。
ピッツァロは捕らえられ、レオノーレは夫フロレスタンの鎖をほどき囚人たちを解放する。すべての人民は鎖からの開放と自由とを高らかに歌い上げレオノーレの勇気を称える。
明晰なフィデリオ
フリッチャイという人については惜しまれつつ若くして病に倒れたということは知っていても、それほどたくさんの演奏を聞いているわけではありません。私のなかの彼への印象といえば、以前彼が演奏するチャイコの5番を聞いたときに「形式感が前面にでた部分と浪漫性が前にでた部分が一つの作品の中で奇妙に同居した演奏」と書いた事に尽きます。
ところがここで聞けるフィデリオはその様な奇妙な同居はなく、贅肉をそぎ落としたような明晰さが演奏全体を支配しています。
彼はフルトヴェングラーのような重厚でロマン的な演奏を聞かせたと言われるのですが、ここではかなり趣が異なるようです。
この演奏を評価してください。
- よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
- いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
- まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
- なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
- 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10
111 Rating: 5.1/10 (210 votes cast)
よせられたコメント
2008-06-01:深刻男もたまにはいい
- なかなか聞かせる演奏で、音もききやすいです。
配役は、どうなってるのでしょうか?レオノーレ役(だと思うのですが)が、すごく良く伸びる声で、聞きほれました。誰の声なんでしょう?YUNGさん、よかったら教えていただけませんか?
<ユング君の追記>
ヘレン・ウェルス(レオノーレ)
ペーター・アンダース(フロレスタン)
ヨーゼフ・メッテルニヒ(ドン・ピッツァロ)
ゴットロープ・フリック(ロッコ)
リザ・オットー(マルツェリーネ)
カール・ワイザー(ヤキーノ)
リュボミール・パンチェフ(ドン・フェルナンド)、他
【最近の更新(10件)】
[2024-11-21]
ショパン:ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調, Op.11(Chopin:Piano Concerto No.1, Op.11)
(P)エドワード・キレニ:ディミトリ・ミトロプーロス指揮 ミネアポリス交響楽団 1941年12月6日録音((P)Edword Kilenyi:(Con)Dimitris Mitropoulos Minneapolis Symphony Orchestra Recorded on December 6, 1941)
[2024-11-19]
ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.77(Brahms:Violin Concerto in D major. Op.77)
(Vn)ジネット・ヌヴー:イサイ・ドヴローウェン指揮 フィルハーモニア管弦楽 1946年録音(Ginette Neveu:(Con)Issay Dobrowen Philharmonia Orchestra Recorded on 1946)
[2024-11-17]
フランク:ヴァイオリンソナタ イ長調(Franck:Sonata for Violin and Piano in A major)
(Vn)ミッシャ・エルマン:(P)ジョセフ・シーガー 1955年録音(Mischa Elman:Joseph Seger Recorded on 1955)
[2024-11-15]
モーツァルト:弦楽四重奏曲第17番「狩」 変ロ長調 K.458(Mozart:String Quartet No.17 in B-flat major, K.458 "Hunt")
パスカル弦楽四重奏団:1952年録音(Pascal String Quartet:Recorded on 1952)
[2024-11-13]
ショパン:「華麗なる大円舞曲」 変ホ長調, Op.18&3つの華麗なるワルツ(第2番~第4番.Op.34(Chopin:Waltzes No.1 In E-Flat, Op.18&Waltzes, Op.34)
(P)ギオマール・ノヴァエス:1953年発行(Guiomar Novaes:Published in 1953)
[2024-11-11]
ドヴォルザーク:ヴァイオリン協奏曲 イ短調, Op.53(Dvorak:Violin Concerto in A minor, Op.53)
(Vn)アイザック・スターン:ディミトリ・ミトロプーロス指揮 ニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団 1951年3月4日録音(Isaac Stern:(Con)Dimitris Mitropoulos The New York Philharmonic Orchestra Recorded on March 4, 1951)
[2024-11-09]
ワーグナー:「神々の黄昏」夜明けとジークフリートの旅立ち&ジークフリートの葬送(Wagner:Dawn And Siegfried's Rhine Journey&Siegfried's Funeral Music From "Die Gotterdammerung")
アルトゥール・ロジンスキー指揮 ロイヤル・フィルハーモニ管弦楽団 1955年4月録音(Artur Rodzinski:Royal Philharmonic Orchestra Recorded on April, 1955)
[2024-11-07]
ベートーベン:ピアノ協奏曲第4番 ト長調 作品58(Beethoven:Piano Concerto No.4, Op.58)
(P)クララ・ハスキル:カルロ・ゼッキ指揮 ロンドン・フィルハーモニック管弦楽団 1947年6月録音(Clara Haskil:(Con)Carlo Zecchi London Philharmonic Orchestra Recorded om June, 1947)
[2024-11-04]
ブラームス:交響曲第3番 ヘ長調, Op.90(Brahms:Symphony No.3 in F major, Op.90)
アルトゥーロ・トスカニーニ指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1952年9月29日&10月1日録音(Arturo Toscanini:The Philharmonia Orchestra Recorded on September 29&October 1, 1952)
[2024-11-01]
ハイドン:弦楽四重奏曲 変ホ長調「冗談」, Op.33, No.2,Hob.3:38(Haydn:String Quartet No.30 in E flat major "Joke", Op.33, No.2, Hob.3:38)
プロ・アルテ弦楽四重奏団:1933年12月11日録音(Pro Arte String Quartet]Recorded on December 11, 1933)