Home|
トゥーレック(Rosalyn Tureck)|バッハ:ゴルドベルグ変奏曲
バッハ:ゴルドベルグ変奏曲
(P)ロザリン・トゥーレック 1957年6月17日〜10月11日録音
Bach:ゴルドベルグ変奏曲
不眠症対策というのはあまりにも有名なエピソードですが・・・

1741年のことです。
ドレスデンを旅をしたバッハは、世話になったロシア公使カイザーリング伯爵のもとを訪ねます。伯爵は当時不眠症にかかっていたために、伯爵に仕えるヨーハン・ゴットリーブ・ゴールトベルクという14歳の少年にクラヴィーアを演奏させていました。(まだ14の子供に、自分が眠りにつけるまで毎日毎日ピアノを演奏させ続けるとはどんな神経をしとったんだ!!)
そんな伯爵が、「穏やかでいくらか快活な性質を持ち、眠れぬ夜に気分が晴れるようなクラヴィーア曲を作ってくれ」とバッハに依頼をして誕生したのがこの作品です。
ユング君はこの「不眠症対策」というエピソードは後世の人が面白おかしくでっち上げたお話だと最初は思っていたのですが、実は大筋で事実と一致しているようですね。それにしても、小さな子供にかくも過酷な命令を平然と出せるような人間が不眠症になるとは信じがたい話です。
でも、ゴルドベルク少年はその過酷な試練に耐えたおかげで、このバッハ晩年の大傑作に自分の名前を残すことになります。
作曲の経緯から言えば、「カイザーリング変奏曲」と呼ばれてもなんの不思議もないと思うのですが、なぜか「ゴルドベルグ変奏曲」と呼ばれるようになったのですから、これまた歴史の皮肉と言わねばなりません。
これなら眠れそうです。
データベースで確認した人は演奏時間が94分7秒というのを見て何かの間違いと思われたかもしれません。しかし、冒頭のアリアが流れ出すと、そのあまりの「遅さ」にのけぞりながらも、なるほどこれなら演奏時間が1時間半を超えるのも仕方がない・・・!!と、納得されたはずです。ただ、最晩年にDGで録音した演奏も同じように1時間半もかけて演奏しているので、このテンポ設定は奇を衒ったものではなく、彼女にとってはもっとも納得のいくものだったことは間違いありません。
「Rosalyn Tureck」はロザリン・トゥレックと読むのが正解らしいです。シカゴで生まれジュリアードで学んだピアニストらしいのですが、現在ではグールドのバッハ演奏に大きな影響を与えたピアニストとして一部では高い評価を与えられているようです。
中には、この演奏を聴いてグールドの演奏をパクッタと思ったのだが、よく調べてみると逆にグールドの方がトゥーレックに影響を受けたと分かって驚いた!と書いている人なんかもいます。凄いなー、この演奏を聴いて55年に録音されたグールドのゴルドベルグ変奏曲に激似だと聴き取れる「耳」を持っている人がこの世の中にはいるんですね。さらには、1つ1つの声部が並行して流れてゆくさまが明瞭に聴こえてくるのが素晴らしい、と言う人もいるのですが、今時そう言う声部が明瞭に聴き取れないような演奏が録音されて市場に出回っているのものがあるのなら教えて欲しい・・・と、つっこみの一つも入れたくなります。
それよりは、このトゥーレックの演奏を初めて聞いた人は、あのグールドの演奏の対極にあるものと感じるのが普通ではないでしょうか。それは、テンポの問題だけではなく、勢いと気迫に満ちたグールドに対して静謐で沈潜した趣を感じるトゥーレックという感じです。
ただし、睡眠薬代わりに作曲されたこの作品の出自を考えると、意外とこのとっーレックの演奏が「正解」かもしれません。グールドの演奏を聴きながら眠れる人はほとんどいないでしょうが、この演奏ならかなりの人が安らかに眠りにつけるはずです。私も、・・・寝てしまいました・・・。(^^;
この演奏を評価してください。
- よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
- いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
- まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
- なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
- 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10
1055 Rating: 5.2/10 (206 votes cast)
よせられたコメント
2009-04-03:セル好き
- これは凄い。確かに響き方は55年のグールド盤を彷彿とさせるところがあり、ノンレガート奏法で括ってしまえる以上の類似感がありますが、むしろそれ以上の洗練さえ感じるところも多々ある一方で練習曲のように初々しく響く変奏もあり、(バッハは細かい指定はしないので)編曲的要素もすばらしいと思いましたよ。
2009-06-28:吉之助
- ユングくん、こんばんは。いつもお世話になります。このサイトのおかげで・恐らくこのサイトがなければ知り合えなかった演奏と知り合えて・本当に有難く思っております。このトゥーレックの演奏もそうです。ところで、どなたかが「グールドの方がトゥーレックに影響を受けたと分かって驚いた」と書いているというのは、グールドの55年の録音ではなくて・後年の再録音81年のもののことかと思います。そう言われれば冒頭部分は確かに雰囲気が似ているような気がしますね。まあ影響を受けたかどうかは分かりません。それはなかったと思いますがね。
2014-09-27:Joshua
- ロザリン・トゥーレック
女性だったんですね。かっちりと弾いた「まじめ」な演奏と聴きました。
ピアノでのゴールドベルグは、実は1942年アラウの録音が最初ではないでしょうか?ライナーノートによると、ランドフスカの録音が出たSPの折、お蔵入りしたそうです。アラウは80歳になって(なくなる8年前)、リマスターしたこの演奏を聴き、ピアノのゴールドベルグの有効性を確信したそうです。(でも再録音はなかったんです)これを聴く限り、グールドは録音時期を得た分、得をしてはいないか?と思ってしまいます。上手いし、じゅうぶん変化にも富んでいる。音さえも少し良ければ、アラウは対等です。今日のペライアやシフの名演の布石はここにあったのか、と思えます。ちなみに、このサイトでも確認しましたが、ベートーベンのソナタ・協奏曲、その他ショパン・チャイコフスキーで聴けるアラウの素晴らしさは確かなものです。KOUHOU評論家の影響もあり、アラウは愚鈍と決め込んでいたわたしの考えは変わりました。さて、トゥーレックさん。はっきりくっきりで、直球投手ですね。こんなのも、あれこれ手の入った演奏を聴いた後ではいいものです。
2015-05-06:D.Saigo
- これはまた、ゆっくりとした演奏ですね。90分超ですか…。
バルヒャの演奏は70分ぐらいだったか…?
グールドとの関連は抜きにして、これはこれで、しっかりした演奏ですよね。
「がんばって」最後まできいてみました。(眠らずに!)
ただ、私の駄耳のせいか、最初のアリアの部分に限らず、いたるところでテンポが揺れているように聞こえます。最近、耳が遠くなったような気もしますし、
リズム感も鈍くなったか…?!
それにしても、ユング様のおかげで、さまざまな演奏に接することができます。
おそらく、このサイトがなければ、私にとっての「ゴルドベルグ」は
バルヒャ1枚、グールド2枚で終わっていたでしょう。
ありがたいことです。
【最近の更新(10件)】
[2025-03-28]

ラヴェル:スペイン狂詩曲(Ravel:Rhapsodie espagnole)
シャルル・ミュンシュ指揮:ボストン交響楽団 1950年12月26日録音(Charles Munch:The Boston Symphony Orchestra Recorded on December 26, 1950)
[2025-03-24]

モーツァルト:セレナード第6番 ニ長調, K.239「セレナータ・ノットゥルナ」(Mozart:Serenade in D major, K.239)
ヨーゼフ・カイルベルト指揮 バンベルク交響楽団 1959年録音(Joseph Keilberth:Bamberg Symphony Recorded on 1959)
[2025-03-21]

シューベルト:交響曲第2番 変ロ長調 D.125(Schubert:Symphony No.2 in B-flat major, D.125)
シャルル・ミュンシュ指揮 ボストン交響楽団 1949年12月20日録音(Charles Munch:The Boston Symphony Orchestra Recorded on December 20, 1949)
[2025-03-17]

リムスキー=コルサコフ:スペイン奇想曲, Op.34(Rimsky-Korsakov:Capriccio Espagnol, Op.34)
ジャン・マルティノン指揮 ロンドン交響楽団 1958年3月録音(Jean Martinon:London Symphony Orchestra Recorded on March, 1958)
[2025-03-15]

リヒャルト・シュトラウス:ヴァイオリンソナタ 変ホ長調 ,Op.18(Richard Strauss:Violin Sonata in E flat major, Op.18)
(Vn)ジネット・ヌヴー (P)グスタフ・ベッカー 1939年録音(Ginette Neveu:(P)Gustav Becker Recorded on 1939)
[2025-03-12]

モーツァルト:弦楽四重奏曲第22番 変ロ長調 K.589(プロシャ王第2番)(Mozart:String Quartet No.22 in B-flat major, K.589 "Prussian No.2")
パスカル弦楽四重奏団:1952年録音(Pascal String Quartet:Recorded on 1952)
[2025-03-09]

ショパン:ノクターン Op.27&Op.37(Chopin:Nocturnes for piano, Op.27&Op.32)
(P)ギオマール・ノヴァエス:1956年発行(Guiomar Novaes:Published in 1956)
[2025-03-07]

モーツァルト:交響曲第36番 ハ長調「リンツ」 K.425(Mozart:Symphony No.36 in C major, K.425)
ヨーゼフ・カイルベルト指揮 バンベルク交響楽団 1960年録音(Joseph Keilberth:Bamberg Symphony Recorded on 1960)
[2025-03-03]

ブラームス:交響曲 第1番 ハ短調, Op.68(Brahms:Symphony No.1 in C Minor, Op.68)
アルトゥール・ロジンスキ指揮:ニューヨーク・フィルハーモニック 1945年1月8日録音(Artur Rodzinski:New York Philharmonic Recorded on January 8, 1945)
[2025-02-27]

ドビュッシー:ヴァイオリン・ソナタ ト短調(Debussy:Sonata for Violin and Piano in G minor)
(Vn)ジネット・ヌヴー (P)ジャン・ヌヴー 1948年録音(Ginette Neveu:(P)Jean Neveu Recorded on 1948)