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クリュイタンス(Andre Cluytens)|ビゼー:カルメン
ビゼー:カルメン
クリュイタンス指揮 パリ・オペラ・コミーク座管弦楽団&合唱団他
Bizet:カルメン「前奏曲」
Bizet:カルメン「第1幕」
Bizet:カルメン「第2幕」
Bizet:カルメン「第3幕」
Bizet:カルメン「第4幕」
オペラ嫌い人にはぜひとも聞いてほしい作品です。
オペラは嫌い!と言う人はクラシック音楽ファンの中にも少なくないようです。実はユング君もはじめのころはあまりオペラというジャンルは好きではありませんでした。なぜかというと、あの素っ頓狂な声と大げさな身振り、そして何よりも愚にもつかないようなストーリーがどうにも受け入れがたいものを感じていたのです。
そんなユング君が、オペラというのもなかなかいいもんだ!!と思わせてくれたのがこの「カルメン」でした。
何気なくプレーヤーにセットしたのはカルメンからの抜粋盤でした。今ならそんな中途半端なものを買うんだったら全曲盤を買うべきだといえるのですが、その頃は高いお金を払って、もしかしたらほとんど聞くこともないかもしれない全曲盤を買うことには躊躇いがあったのです。
さて、そうして聴き始めたレコードなのですが、聞き進むうちにすっかり虜になってしまいました。確かに有名なハバネラや闘牛士の歌は魅力的でしたが、何よりも音楽に内包された推進力みたいなものが耳をとらえて離しませんでした。つまらなければすぐに針をあげようと思っていたのが、とうとう最後まで聞き終えて、その足ですぐに全曲盤のレコードを買いに走りました。(だから、抜粋盤なんて言うレコードを買うのは結果としてお金の無駄なのです。)
おそらく、これほどにオペラの入門用に適した作品はないでしょう。ここには、オペラというジャンルが持っている魅力のすべてがつまっています。確かに、ワーグナーの楽劇は偉大でしょうが、しかしオペラなどをまったく聞いたことがない人が「トリスタン」なんぞから聞き始めた日には、二度とオペラを聞こうなどという気をなくさせてしまうのがおちです。
歌の魅力と演劇としての魅力、さらには前奏曲や幕間にはさまれる間奏曲などのオーケストラ曲の美しさなどなど、どれを取っても高いクオリティをもっていながら、そのどれもが耳にやさしく分かりやすいというのは、考えてみれば大変なことだといえます。
ところが、これほどに素晴らしい作品でありながら初演ではまったく受け入れられませんでした。失意のどん底に陥ったビゼーは夜の町をさまよい歩き、その三ヶ月後にこの世を去ったのですから罪は重いです。
19世紀的な価値観では、このオペラに登場する人物はどれもこれもがらが悪くて最後は殺人事件でエンディングというのは受け入れがたかったからだ、などと説明されるのですが、なあに、ユング君にいわせれば当時のパリの聴衆はアホばっかりだったからです。この辺のことは書き始めるとキリがないのですが、そのアホさ加減に振り回されたのはビゼーだけではなくて、あのワーグナーやヴェルディもひどい目にあっています。
ただ、そんなアホな聴衆の中からこんなにも素敵な作品が生み出されたというのは不思議としか言いようがありません。必ずしも恵まれた環境がすぐれた作品を生み出す土壌とはいえないことだけは確かなようです。
●主な登場人物
ドン・ホセ(T):竜騎兵
カルメン (Ms):ジプシーの女
エスカミーリョ (Br):闘牛士
ミカエラ (S):ホセの許婚
メルセデス(S):カルメンの仲間のジプシー
フラスキータ(Ms):カルメンの仲間のジプシー
スニガ(B):隊長
●第1幕:セヴィリアの町のタバコ工場前の広場
♪前奏曲・・・【
聞く】
オペラの中の主題を巧妙に組み合わせて作り上げられています。冒頭のあまりにも有名なテーマは4幕の闘牛士の入場の行進の場、中間部は闘牛士の歌」のメロディです。そして最後に宿命のテーマとも言える不吉な主題が続いて出てきます。
このテーマは、オペラの中でたびたび登場する重要なもので、この1曲にオペラ全体がうまく表現されています。
♪情景と合唱
♪町の子供たちの合唱
♪タバコ工場の女工たちの合唱「空中を目で追って行く」
兵士が広場を通る人たちを眺めているシーンからオペラは始まります。ホセのいいなづけであるミカエラがホセを探しに来るのですが見つけることができずに立ち去ります。
やがて昼休みになり、タバコ工場の女工たちが集まってくると、男たちは「カルメンはどうした」といって登場します。
♪ハバネラ「恋は野の鳥」(カルメン)・・・【
聞く】
あまりにも有名なアリアです。チェロの演奏するハバネラのリズムにのって「恋は野の鳥...」と歌い始めます。
カルメンは自分に関心を示さないホセのことが気になり始め誘惑をはじめます。
♪情景二重唱(ミカエラ、ホセ)
♪合唱シャンソンとメロドラマ
♪セギディーリア「セヴィリアのとりでの近く」と二重唱(カルメン)・・・【
聞く】
♪終曲
カルメンはホセに赤い花をホセに投げつけ立ち去ります。赤い薔薇を投げつける、あの有名なシーンです。ホセは、ついにカルメンの魅力に負けてしまいその花を拾い上げます。ここでも前奏曲の最後に演奏された「宿命のテーマ」が鳴り響きます。
そこにミカエラがやって来たので、ホセは花を懐に隠しながら2人で故郷を思い出す美しい二重唱が歌われます。
その時に、工場内で騒ぎがが起こり音楽は一転して荒々しくなります。カルメンが別の女工と喧嘩をして傷つけてしまったのです。問いつめるスニガに対して「トラ・ラララ」と鼻歌まじりで振る舞い【
聞く】カルメンは牢送りになってしまいます。
ところが、カルメンは護送を命じられたホセを誘惑し始めます。この誘惑の歌がハバネラ同様にとても有名なアリアで、「リリアス・パスティアの酒場に行こう」とホセを誘います。そしてホセはついにその誘惑に負けてしまいカルメンのひもをゆるめてしまいます。とたんにカルメンはホセを突き倒し高笑いを残して去っていきます。(・・・実にどうにもとんでもない女です。まじめ一本槍の初な男と海千山千の美貌の女性の物語、いかが相成りますやら・・・?)
●第2幕:セヴィリアの町外れにあるリリアス・パスティアの酒場
♪間奏曲・・・【
聞く】
「アルカラの竜騎兵」とも呼ばれる曲です。
♪ジプシーの歌「にぎやかな楽のしらべ」
♪合唱
カルメンが仲間と一緒にジプシーの歌を踊り歌います。そこへ「闘牛士ばんざい」の歓声に送られて人気闘牛士エスカミーリョが登場します。
♪闘牛士の歌(エスカミーリョ)・・・【
聞く】
これもまた有名な闘牛士の歌を歌です。中間部の「トレアドール」で始まる部分は第1幕への前奏曲の中間部に出てきたメロディで、エスカミーリョのテーマともいえるメロディです。
♪五重唱「うまい話がある」
♪カンツォネッタ
♪二重唱「トラ・ラララ」(カルメン、ホセ)
♪花の歌「おまえが投げたこの花は」(ホセ)・・・【
聞く】
♪終曲
密輸入者の仲間5人が悪い相談をしているところへホセがアルカラの竜騎兵のメロディを歌いながら登場します。カルメンも逃がしてくれたお礼にカスタネットを手に歌います。ところが、遠くから帰営ラッパが聞こえてくるとホセは帰らないといけないと言いはじめカルメンを怒らせてしまいます。そんなカルメンに対して歌われるのが有名な「花の歌」で、ホセのカルメンに対する思いの丈を歌い上げたドラマティックな曲です。
スニガが尋ねてきてホセに一緒に帰ろうと諭すのですがカルメンの魅力に負けてしまったホセはそれを拒絶してしまいます。ついに二人は決闘になってしまい、そこへ駆けつけた密輸入者たちがスニガを取り押さえてしかい、ホセも密輸入者の仲間入りをすることになってしまいます。
●第3幕:寂しい山中の密輸入者たちの根城
♪間奏曲・・・【
聞く】
この曲には名前はついておらずただ単に「間奏曲」とよばれていますので、カルメンの間奏曲と言えば一般的にこの曲をいいます。、ハープの分散和音の上にフルートが牧歌的なメロディを奏していくとても美しい曲です。
♪終曲6重唱と合唱
♪カルタの3重唱「まぜて!切って!」(カルメン、フラスキータ、メルセデス)
♪アンサンブル
♪アリア「なんの恐れる事がありましょう」(ミカエラ)
♪2重唱(ホセ、エスカミーリョ)
♪終曲
数人のジプシーが密輸の荷物を運んでいます。ホセはカルメンの気をひこうと話しかけるのですが、カルメンは「以前ほど愛していない。束縛されるのは嫌」と答えてしまいます。ホセに飽き始めたカルメンは二人の将来を占おうとしてカルタ占いを始めるのですが、結果は二人の死を予想するばかりです。
そこへホセのことを思い続けるミカエラが登場して有名なアリアを歌います。
その時、怪しい人影に気づいたホセが発砲するので、驚いたミカエラは岩陰に隠れます。
あらわれたのは闘牛士のエスカミーリョで、二人はカルメンをめぐって闘となるのですが、そこへカルメンたちが割って入ります。そこにミカエラが登場し、ホセの母が母が重態であり、彼の帰りを待っていることを知らされ、ホセは仕方なく下山します。
遠くから、エスカミーリョが勝ち誇ったように歌う闘牛士の歌が聞えてきて、カルメンはその方に駆け寄ります。
●第4幕:セヴィリアの闘牛場前の広場
♪間奏曲・・・【
聞く】
アラゴネーズとも呼ばれるスペイン色豊かな曲。
♪合唱
♪行進曲と合唱
♪二重唱と合唱
有名な入場行進曲にのって闘牛士たちが入場してきます。最後にスターのエスカミーリョとカルメンが登場するのですが、エスカミーリョが闘牛場の中に入ると1人になったカルメンにホセが近づいてきます。
ここでまた宿命のテーマが響きます。
しかし気丈なカルメンはホセに「二人の間はおしまい」と冷たく答えます。場内から行進曲にのって万歳の歓声がわきあがるのとは対照的に不吉な宿命のテーマもたびたび表われて二人の間の緊張が増して行きます。
そして、ついにホセに貰った指輪をカルメンが投げ付けるとホセは隠し持った短刀でカルメンを刺しまいます。
ホセは、呆然と崩れるようにひざまずき、倒れた彼女の上に身を投げて、「俺が殺したのだ」と絶望の叫びを上げながら号泣してエンディングをむかえます。
初演の伝統を伝える演奏
カルメンは1875年3月3日にパリのオペラ・コミークで初演されました。それ以来、このオペラはオペラ座で上演されることはなく、1959年までは必ずこのオペラ・コミークで上演されるのがしきたりとなっていました。
このクリュイタンスによる演奏は、そういう初演以来の伝統が息づいているオペラ・コミークでの演奏をもっとも良質な形で録音したものです。当時、クリュイタンスはオペラ・コミークの音楽監督をつとめており、主演している歌手もすべてオペラ・コミークに所属する歌手で固められています。
現在ではカルメンは地のセリフの部分はレチタティーヴォで歌われ、さらにはバレエシーンもはいるいわゆる「グランド・オペラ」スタイルで演奏されるのが一般的です。この「グランド・オペラ」スタイルのカルメンはウィーン初演のためにギローが台詞からレチタティーヴォを作曲しバレエも加えたもので、通常ギロー版と呼ばれているものです。
それに対して、ここでお聞きいただいているクリュイタンスの演奏は、セリフはセリフとして語られる「オペラ・コミック」スタイルなのでいささか違和感を感じる方もいるかと思います。しかし、ビゼーが書いたカルメンはこの「オペラ・コミック」スタイルであり、初演もこのスタイルで上演されました。そして、オペラ・コミークではこのスタイルをかたくなに守り続けてきました。
確かに一人一人の歌手の力量は劣るかもしれません。オペラ座で活躍していた一流どころの歌手たちと比べれば一歩譲ると言われても仕方がありませんが、しかし、聞いていると、彼らは歌手である前に役者であることを大切にしているように聞こえます。このオペラがオペラの初心者にも受け入れられやすいのは、演劇的な要素が強いからだと思うのですが、この演奏はそういう演劇的要素を強く前面に押し出したものだといえます。
カルメンというのはアリアをどんなに立派に歌い上げても演技が大根では興醒めしてしまいますから、その事はとても大切なことです。録音ではその様な舞台の様子は分からないのがかえすがえすも残念です。
もしも、実際の舞台でこのような演奏を聞くことができれば最上の一夜をおくれることは間違いないでしょう。
この演奏を評価してください。
- よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
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- まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
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- 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10
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よせられたコメント
2009-09-14:Joshua
- 4幕ラストは、いつ聴いてもドキドキしますね。マゼール・モッフォのどぎつい響きもよく聴いたものですが、この50年のパリもいいですね。
クリュイタンスは1枚だけフランスのオケでワーグナーを録ってますね。これも不思議なノリがあります。今で言うとデュトワさんみたいなものかな?でもバルトークは振らなかったし、ベート-ベン全集をベルリンとやってのけるなんて
60年代前後としては大した企画でした。ユングさんは7番をアップしてくれたので大変嬉しいです。2番、4番を聴いた事がありますが、田園、8番は名演と聞いており、その他運命、第9、1番、エロイカもとても興味があります。
蛇足ですが、サイト主のユング氏は、そのペンネームから河合隼雄さんを読まれたことと想像します。(あるいはお弟子さんだったかも)NHK第2放送で日曜朝6:45は、河合氏の弟子である鷲田清一さんが9月一杯まで話されますね。シニアの時代の哲学、お聞きでしょうか?先週も館野泉のお話が印象的でした。 河合氏の解説で上田秋成の雨月物語解説(新潮CD)がまた、懐かしさとともに面白く聞けました。蛇足でした。