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レスピーギ:イル・トラモント(Respighi:"Il Tramonto" Poem For Quartet And Voice)

バリリ四重奏団:(S)セーナ・ユリナッチ 1954年録音(Barylli Quartet:(S)Sena Jurinac Recorded on 1954)

Respighi:"Il Tramonto" Poem For Quartet And Voice


マイナー曲に留め置くのはあまりにも勿体ない

「イル・トラモント(日没)」は、メゾソプラノ(またはソプラノ)と弦楽四重奏(あるいは弦楽合奏)のために書かれた、極めて抒情的で美しい「叙事詩」です。
「ローマ三部作」のような色彩豊かな管弦楽曲で知られるレスピーギですが、この作品ではより内省的で、世紀末的なデカダンスとイタリア的なカンタービレが融合した独自の世界観を示しています。

この曲は、イギリスの詩人パーシー・ビッシュ・シェリーの詩「夕暮れ(The Sunset)」を、ロベルト・アスコリがイタリア語に訳したテキストに基づいています。
若い恋人たちが夕暮れ時、明日の日の出を共に眺める約束をして愛を語らいます。しかし、翌朝、女性が目覚めると隣の恋人は息絶えていました。
残された彼女は狂うことも死ぬこともできず、ただ静かに絶望と孤独の中に生き、数年後に穏やかな死を迎える、という悲劇的で耽美的な物語です。

約15分ほどの単一楽章の作品ですが、詩の内容に寄り添うように場面が展開していきます。

レスピーギはロシアでリムスキー=コルサコフに師事したため、弦楽器の扱いが非常に巧みです。ソプラノの歌声と弦楽器が対等に絡み合い、時に優しく寄り添い、時に激しくむせび泣くようなアンサンブルは圧巻です。
特に、最後の数分間、静かに「Peace, peace...(Pace, pace)」と繰り返される部分は、音楽史の中でも屈指の美しい幕切れの一つと言えるでしょう。

全体的に、どこかリヒャルト・シュトラウスの「最後の4つの歌」を思わせる雰囲気があります。これをマイナー曲に留め置くのはあまりにも勿体ない。


ウェストミンスターは本当に素晴らしい録音を残してくれました

ウェストミンスターに残されたバリリ四重奏団やウィーン・コンツェルトハウス四重奏団の録音を聞いてみると、今風の演奏比べれば縦の線なんかはかなりいい加減です。さらに、アンダンテやアダージョの楽章なんかになると、いかにもおらが町の音楽はこうなんだ!と言うような土着性(媚び?)を感じさせてくれるます。
言葉をかえれば、ハイドンやモーツァルト、ベートーベン、シューベルト等々の「おらが町」の音楽家の音楽を「おらが風」に演奏してきた伝統を強く感じさせます。
もちろん、「おらが町」ではないシューマンやブラームスであっても、さらにはそれよりも遠い地のドヴォルザークにヤナーチェクに、さらにはレスピーギであっても「ウィーン風」に演奏してしまうのです。

しかし、こういう音楽の形に安易に「ウィーン風」という形容詞を冠するには注意が必要です。

何故ならば、ウィーンにおける戦前の演奏を聴いてみると意外なほどに端正な演奏をしていることが多くて、いわゆるこういう「ウィーン風」の演奏には出会わないという事実があるからです。
そして、私たちが一般的にイメージする「ウィーン風」の演奏というイメージの少なくない部分が、アメリカのウェストミンスターというレーベルによって作られたのかもしれないという「疑惑」が否定しきれないのです。

ウェストミンスターというレーベルがヨーロッパに乗り込んできたのは40年代の終わり頃でした。
第2次世界大戦の傷手は至る所に残っていて、クラシック音楽の世界と言っても未だに立ち直るには時間と金がいる状況だったのです。そして、そう言う危機的な状況だったが故に、ウェストミンスターという新興レーベルがウィーンの音楽界に食い込むことができたのです。

そして、そう言うレーベルから録音の依頼があったときにウィーンの音楽家連中は考えたはずです。
海の向こうのアメリカでは鬼のような即物主義が音楽界を席巻しているらしい、…それならばそれと同じスタイルで勝負するのはどう考えても得策ではない、…当然のことながら、レーベルの方にしても、そんなスタイルの演奏は望んでもいないだろう、…それならば、アメリカとは異なった自分たちのスタイルを前面に押し出すことこそが世界市場で売り出していくための武器だ…(私の妄想ですが^^;)」と考えたはずです。

そして生まれたのが、いわゆる「ウィーン風」の演奏だったのです。(言い切っちゃいます!!)

その「ウィーン風の演奏」とは、今まであまり意識もしていなかった自分たちの独特な演奏スタイルを意識化したものでした。
そして、世界市場で売り出していくための武器として、その意識化した自らの演奏スタイルをよりデフォルメされた形で昇華した演奏スタイルものが「ウィーン風」だったのです。
ですから、私たちが伝統的スタイルと信じてきた「ウィーン風の演奏」とは、マーラーが毛嫌いした「怠惰の別名」としての伝統ではなく、新しく再構築された演奏スタイルにつけられた「戦略的ブランド名」だったのです。

そして、おそらくこの戦略は、その後の歴史を見れば大成功であったことは疑う余地はありません。
ウィーンという町は言うまでもなくハプスブルグ帝国の都として栄えてきた町です。まさに都市の中の都市であり、それ故に、そこに住まう連中は骨の髄までの都市の人間なのです。

そして、本当の意味での「都市の人間」というのは実にこすっからい存在なのです。
白洲正子は京都の人間を「千年のすれっからし」と呼びました。
そして、いわゆる「ウィーン風」の演奏は、そう言うこすっからい連中でなければ表現できない味があることを忘れてはいけません。

バリリ四重奏団やウィーン・コンツェルトハウス四重奏団のメンバーは流石の都会人なのです。

この演奏を評価してください。

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  5. 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10



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