Home|
ミルシテイン(Nathan Milstein)|ヴィターリ:シャコンヌ
ヴィターリ:シャコンヌ
Vn.ミルシテイン P ヴァルサム 1956年1月27日録音
Vitali:シャコンヌ
ヴァイオリンを演奏する人にとってはとても有名な作品らしいです

「Vitali(ヴィターリ)」の「シャコンヌ」は、ヴァイオリンを演奏する人にとっては有名な作品らしくて、「シャコンヌ」と言えばバッハかヴィターリと言うほど認知度が高いようです。ただし、「聴き専」の人間にとっては、「シャコンヌ」と言えばバッハの無伴奏しか思い浮かばないのが普通です。
私も、ミルシテインが録音した小品をチェックしていてこの作品に初めて出会いました。
「シャコンヌ」と言うことなので、バッハのあの有名な「シャコンヌ」との違いに興味がひかれたのですが、聞いてみるとまるでロマン派の小品みたいな音楽です。もちろん、バロック時代の音楽にもロマンティックな音楽はたくさんあるのですが、このネットリ感みたいなものはちょっとバロック時代の音楽とは異質です。
あれれ、不思議だなと思ってGoogle先生に聞いてみると、19世紀にフェルディナント・ダーヴィトというヴァイオリニストがヴィターリの作品をヴァイオリンと通奏低音のための作品に編曲したものだと言うことが分かりました。なるほどね、と納得していると、さらにその後の研究で原曲はヴィターリのものではないことが判明したそうで、もしかするとヴィターリの名を借りたダーヴィト自身の作品かもしれないという見方もあることが分かりました。
そういえば、クライスラーも自分の作品を有名作曲家の未発見の作品だと「偽って」発表したことはよく知られていますが、事情は似たようなものだったのかもしれません。
しかし、そんなトリビアは脇に置いておくとしても、実際にこの音楽を耳にしてみれば、なぜに今まで人気が出なかったのかと不思議な思いに駆られるほどの素晴らしさです。一言で言えば、この上もない甘美な悲劇性と言えるのでしょうか。やはりどう聞いてもこれはロマン派の音楽です。でも、この胸にぐっとくるような素晴らしさは間違いなく一級品です。
変に勘ぐると、このすばらしい音楽はヴァイオリンを演奏する人間だけの「秘密」にしておこうという申し合わせでもあったのではないか・・・とすら思ってしまいます。
ミルシテインならではの「小品」の世界
ミルシテインという人の経歴を調べてみると、すでにSP盤の時代から積極的に録音を行っていたことに気づかされます。そして、このSP盤の時代というのは、ヴァイオリンのための小品が「埋め草」ではなく「主役」だった時代です。ですから、クライスラーやティボーなどは言うまでもなく、ハイフェッツなんかもそういう「小品」を全身全霊を込めて演奏し、録音しました。
昨今のヴァイオリニスト一番残念に思うのは、そういう耳に優しい「小品」をまともに取り上げようとしないことであり、さらに取り上げても実に「下手くそ」な事です。何しろそういう作品は、楽譜に書かれたとおり正確に弾いてもらっても面白くもおかしくもありませんから、何とも料理のしようがないという困った雰囲気がありありとうかがえます。(例外は天満敦子くらいでしょうか)
ミルシテインという人は、「クライスラーやティボーほど甘美ではなく、シゲティほどの深みもないし、ハイフェッツのような驚きもない」などと貶されてきました。
しかし、この言う小品を聞いていると、そういう大家にはないある種の「爽やかさ」を持っていたことに気づかされます。一聴しただけでは特徴に乏しい演奏家のように思えますが、同時代の大家たちの「濃い演奏」の中においてみると、これはこれで大きな自己主張だったことに気づかされます。
彼もまたSP盤の時代活動を開始したヴァイオリニストらしく、ミルシテインならではの「小品」の世界を持っていたと言うことです。
この演奏を評価してください。
- よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
- いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
- まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
- なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
- 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10
1261 Rating: 5.7/10 (303 votes cast)
よせられたコメント
2010-06-30:shin
- 全く知らない作品でしたが、素晴らしいですね!
ダウンロードしてから何度も聞いています。
無知な私に新たな発見をさせてくれたユング君に感謝、感謝です!
2010-07-12:南 一郎
- すがり付きたいような、素晴らしい演奏です。音とそれにこもる情が心を捉えます。
バイオリンは音色を通して音楽が聞こえてこないと演奏の存在価値がない。
ORFのコンサート録音や「ラストコンサート」のCDで聞ける音と寸分違わない音色と音楽に感動しました。
2011-10-08:are you ready?
- 弾いたことがありますが、音楽性に富んだ作品です。僕てきにはこっちのほうが有名かも・・・
2018-09-29:sorama
- この演奏は天高い星を切望するイメージがします。
ミルシタインも、紛れもない天才と思ってましたので、世の中では大家でないと思われたというのにびっくりしました。
世の中の評価は便利だけど、みんなが頼り過ぎると素晴らしいものが埋もれてしまうだろう、と思いました。
丁寧な紹介をいつもありがとうございます。
【最近の更新(10件)】
[2025-07-22]

エルガー:行進曲「威風堂々」第2番(Elgar:Pomp And Circumstance Marches, Op. 39 [No. 2 in A Minor])
サー・ジョン・バルビローリ指揮 ニュー・フィルハーモニア管弦楽団 1966年7月14日~16日録音(Sir John Barbirolli:New Philharmonia Orchestra Recorded on July 14-16, 1966)
[2025-07-20]

ショパン:ポロネーズ第6番 変イ長調, Op.53「英雄」(管弦楽編曲)(Chopin:Polonaize in A flat major "Heroique", Op.53)
ルネ・レイボヴィッツ指揮 ロンドン新交響楽団 1961年録音(Rene Leibowitz:New Symphony Orchestra Of London Recorded 1961)
[2025-07-18]

バッハ:トッカータとフーガ ニ短調 BWV.565(Bach:Toccata and Fugue in D Minor, BWV 565)
(Organ)マリー=クレール・アラン:1959年11月2日~4日録音(Marie-Claire Alain:Recorded November 2-4, 1959)
[2025-07-16]

ワーグナー:ローエングリン第3幕への前奏曲(Wagner:Lohengrin Act3 Prelude)
ユージン・オーマンディ指揮 フィラデルフィア管弦楽団 1959年12月30日録音(Eugene Ormandy:Philadelphis Orchestra Recorded on December 30, 1959)
[2025-07-15]

ワーグナー:「タンホイザー」序曲(Wagner:Tannhauser Overture)
ユージン・オーマンディ指揮 フィラデルフィア管弦楽団 1964年12月7日録音(Eugene Ormandy:Philadelphis Orchestra Recorded on December 7, 1964)
[2025-07-11]

ベートーベン:交響曲第6番 ヘ長調 作品68 「田園」(Beethoven:Symphony No.6 in F major, Op.68 "Pastoral")
ヨーゼフ・カイルベルト指揮 バンベルク交響楽団 1960年録音(Joseph Keilberth:Bamberg Symphony Recorded on 1960)
[2025-07-09]

エルガー:行進曲「威風堂々」第1番(Elgar:Pomp And Circumstance Marches, Op. 39 [No. 1 In D Major])
サー・ジョン・バルビローリ指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1962年8月28日~29日録音(Sir John Barbirolli:Philharmonia Orchestra Recorded on August 28-29, 1962)
[2025-07-07]

バッハ:幻想曲とフーガ ハ短調 BWV.537(J.S.Bach:Fantasia and Fugue in C minor, BWV 537)
(organ)マリー=クレール・アラン:1961年12月10日~12日録音(Marie-Claire Alain:Recorded December 10-12, 1961)
[2025-07-04]

メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 ホ短調, Op.64(Mendelssohn:Violin Concerto in E minor Op.64)
(Vn)ヨーゼフ・シゲティ:トーマス・ビーチャム指揮 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団 1933年録音(Joseph Szigeti:(Con)Sir Thomas Beecham London Philharmonic Orchestra Recoreded on 1933)
[2025-07-01]

ベートーベン:交響曲第5番 ハ短調 「運命」 作品67(Beethoven:Symphony No.5 in C minor, Op.67)
ヨーゼフ・カイルベルト指揮 ハンブルク・フィルハーモニー管弦楽楽団 1958年録音(Joseph Keilberth:Hamburg Philharmonic Orchestra Recorded on 1958)