Home|
ホロヴィッツ(Vladimir Horowitz)|ラフマニノフ:ピアノ協奏曲 第3番 ニ短調 Op.30
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲 第3番 ニ短調 Op.30
(P)ウラディミール・ホロヴィッツ:フリッツ・ライナー指揮 RCAビクター交響楽団 1951年5月8日&10日録音
Rachmaninov:Piano Concerto No.3 in D minor, Op.30 [1.Allegro ma non tanto]
Rachmaninov:Piano Concerto No.3 in D minor, Op.30 [2.Intermezzo: Adagio-3.Finale: Alla breve」
難曲中の難曲
今では映画「シャイン」のおかげで、2番のコンチェルトよりも有名になってしまったかもしれません。なんといっても、古今東西のあらゆるピアノ協奏曲の中でこれほどまでに演奏が困難なものはちょっと思い当たりませんし、映画でもその点を強調して主人公はその困難さにとりつかれて精神に異常をきたしてしまうのですから、話題性は満点です。
しかし、どうなんでしょうか?最近のバカウマの若手連中なら誰でも弾きこなすのではないでしょうか。確かに難しいことは難しいでしょうし、とりわけ2種類あるカデンツァのうち「ossia」と呼ばれる方はとんでもなく難しいものです。それでも、演奏するだけなら何とかやり遂げるだけの能力は今の若手ならほとんどが身につけているのではないでしょうか。
それはさておき、この作品を聞けば、派手さはあるものの2番のコンチェルトで聞けたロシアの郷愁のようなものは後退していることに気づかされます。それは、この作品がラフマニノフのアメリカへの演奏旅行のために創作されたという経緯とも関係しているのかもしれません。当時のアメリカではとにかく派手な名人芸がもてはやされていましたから、この作品ではラフマニノフの芸人魂が爆発したかのような作品が出来上がってしまったのではないでしょうか。
とにかくピアノという楽器を使ってどこまで圧倒的に音楽を盛り上げることができるのかという課題に対する一つの模範解答がここにあることは間違いありません。
ただしなのです。
この作品に限ったことではないのですが、私には彼の作品に散漫でとりとめのない雰囲気を感じ取ってしまうのです。その散漫さが2番のコンチェルトでは影を潜めていたのが、ここでまたあふれ出してきたように感じられます。
ピアノの響きはどこまでも分厚くて重厚であり、それがここぞという場面ではクレッシェンドに続くクレッシェンドで音楽を圧倒的に盛り上げていくのですが、聞き終わった後になんと見えない空虚さを感じてしまいます。その芸人魂には感服するのですが、果たして歴史の審判に耐えて芸術作品として後世に残るのかと聞かれれば自信を持ってイエスとは言えないユング君です。
ホロヴィッツの名刺
何も付けくわえる必要のない演奏であり、この演奏をきけばホロヴィッツとは何者だったのかが手に取るように分かります。
そして、芸人魂が爆発したようなこの作品にとって、最も相応しい演奏スタイルはこのようなものです。確かに、若いときの録音と比べれば「凄味」は少しばかり後退して「叙情性」が前面に出ている雰囲気はあります。
しかし、音質の良さはこのような作品にとっては大きなアドバンテージです。
ホロヴィッツという稀代のピアニストの名刺代わりとして一度はきいておきたい演奏です。
この演奏を評価してください。
- よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
- いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
- まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
- なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
- 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10
571 Rating: 7.1/10 (361 votes cast)
よせられたコメント
2010-09-14:nako
- 自分の意思でもってホロヴィッツという人の演奏を初めて聴いたのが、これと、トスカニーニとのチャイコ協奏曲でした。それまでクライバーンしか聴いたことがなかったので、文字通りひっくり返ったものです。その後、こちらで聴かせていただける他の演奏も含めて、幾つかの演奏を聴いて、やっとこれが特異な?演奏と納得できましたが・・・なんというか。テクニックだけでなく、音色も含めて、彼ひとりだけ、ピアノではない、別の楽器を弾いているような気がしてしまいます。こちらでいろいろなピアニストを聴くにつれ、必ずしも波長が合うヒトではないのですが、なんというか・・・別次元ですね。
ちなみに、こちらでアップされている、より若い時の演奏は、まだ怖くて聴けません(笑)いったい何が待っているのやら。。。
2023-12-07:アドラー
- 何度聞いても凄い演奏ですね。ユングさん仰るように今の若いピアニストならこれをある程度は演奏する力はあると思います。You tubeで今の若い~中堅世代の有名そうなピアニストの演奏を幾つか聴いてそう思いました。昔ならともかく、今は指の動きだけなら、ホロヴィッツだけがダントツ、という時代とは違いますね。
それでも、やはりホロヴィッツは全然違って聞こえます。刻印付けかもしれませんし、好きな演奏家を応援したい気持ちのためもあるかもしれませんが。
おそらく、ホロヴィッツだってこの曲の演奏は実際は楽ではないでしょうけど、聴いた印象としては、今の(この曲が弾けるようになった)ピアニストは頑張って何とかこの曲をテンポ通りに弾けるようになっているのに対し、ホロヴィッツは逆に、この難曲を追い回すだけの技巧のゆとりで演奏している、ように聞こえます。弾くだけでも大変だと思われる速く難しいそうなパッセージなのに、切れのあるシャープな音が曲のあちこちから聞こえてきたり、一瞬のうちに深い孤独感のあるロシア的な情緒のパッセージが訪れる瞬間があったりして、リスナーとしては、テクニックも凄いのですが、そこからロシアの音楽が聞こえてくることが凄いなあと思います。
【最近の更新(10件)】
[2024-11-21]
ショパン:ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調, Op.11(Chopin:Piano Concerto No.1, Op.11)
(P)エドワード・キレニ:ディミトリ・ミトロプーロス指揮 ミネアポリス交響楽団 1941年12月6日録音((P)Edword Kilenyi:(Con)Dimitris Mitropoulos Minneapolis Symphony Orchestra Recorded on December 6, 1941)
[2024-11-19]
ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.77(Brahms:Violin Concerto in D major. Op.77)
(Vn)ジネット・ヌヴー:イサイ・ドヴローウェン指揮 フィルハーモニア管弦楽 1946年録音(Ginette Neveu:(Con)Issay Dobrowen Philharmonia Orchestra Recorded on 1946)
[2024-11-17]
フランク:ヴァイオリンソナタ イ長調(Franck:Sonata for Violin and Piano in A major)
(Vn)ミッシャ・エルマン:(P)ジョセフ・シーガー 1955年録音(Mischa Elman:Joseph Seger Recorded on 1955)
[2024-11-15]
モーツァルト:弦楽四重奏曲第17番「狩」 変ロ長調 K.458(Mozart:String Quartet No.17 in B-flat major, K.458 "Hunt")
パスカル弦楽四重奏団:1952年録音(Pascal String Quartet:Recorded on 1952)
[2024-11-13]
ショパン:「華麗なる大円舞曲」 変ホ長調, Op.18&3つの華麗なるワルツ(第2番~第4番.Op.34(Chopin:Waltzes No.1 In E-Flat, Op.18&Waltzes, Op.34)
(P)ギオマール・ノヴァエス:1953年発行(Guiomar Novaes:Published in 1953)
[2024-11-11]
ドヴォルザーク:ヴァイオリン協奏曲 イ短調, Op.53(Dvorak:Violin Concerto in A minor, Op.53)
(Vn)アイザック・スターン:ディミトリ・ミトロプーロス指揮 ニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団 1951年3月4日録音(Isaac Stern:(Con)Dimitris Mitropoulos The New York Philharmonic Orchestra Recorded on March 4, 1951)
[2024-11-09]
ワーグナー:「神々の黄昏」夜明けとジークフリートの旅立ち&ジークフリートの葬送(Wagner:Dawn And Siegfried's Rhine Journey&Siegfried's Funeral Music From "Die Gotterdammerung")
アルトゥール・ロジンスキー指揮 ロイヤル・フィルハーモニ管弦楽団 1955年4月録音(Artur Rodzinski:Royal Philharmonic Orchestra Recorded on April, 1955)
[2024-11-07]
ベートーベン:ピアノ協奏曲第4番 ト長調 作品58(Beethoven:Piano Concerto No.4, Op.58)
(P)クララ・ハスキル:カルロ・ゼッキ指揮 ロンドン・フィルハーモニック管弦楽団 1947年6月録音(Clara Haskil:(Con)Carlo Zecchi London Philharmonic Orchestra Recorded om June, 1947)
[2024-11-04]
ブラームス:交響曲第3番 ヘ長調, Op.90(Brahms:Symphony No.3 in F major, Op.90)
アルトゥーロ・トスカニーニ指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1952年9月29日&10月1日録音(Arturo Toscanini:The Philharmonia Orchestra Recorded on September 29&October 1, 1952)
[2024-11-01]
ハイドン:弦楽四重奏曲 変ホ長調「冗談」, Op.33, No.2,Hob.3:38(Haydn:String Quartet No.30 in E flat major "Joke", Op.33, No.2, Hob.3:38)
プロ・アルテ弦楽四重奏団:1933年12月11日録音(Pro Arte String Quartet]Recorded on December 11, 1933)