Home|
ブレイニン(Norbert Brainin)|モーツァルト:ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲 K364
モーツァルト:ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲 K364
Vn.ブレイニン Va.シドロフ Blech指揮 London Mozart Players 1953年1月19・20日録音
Mozart:ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲K364「第1楽章」
Mozart:ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲K364「第2楽章」
Mozart:ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲K364「第3楽章」
痛切なる青春の音楽
私が初めてウィーンとザルツブルグを訪れたのは1992年のことで、ちょうどその前の年はモーツァルトの没後200年という事で大変な盛り上がりをみせた後でした。とはいっても、未だに町のあちこちにその「余熱」のようなものがくすぶっているようで、いまさらながらモーツァルトいう存在の大きさを実感させられました。
さて、その没後200年の行事の中で、非常に印象に残っているシーンがあります。それは、ヨーロッパで制作されたモーツァルトの伝記ドラマだったと思うのですが、若きモーツァルトが失意の底で野良犬のように夜のウィーンをさまよい歩くシーンです。そこにかぶさるように流れてきた協奏交響曲の第2楽章の冒頭のメロディがこのシーンに見事なまでにマッチングしていました。
ドラマのBGMというのは安直に選択されることが多くて邪魔にしかならないことの方が多いのですが、その時ばかりは若きモーツァルトの痛切なまでの悲しみを見事に表現していて深く心に刻み込まれたシーンでした。
ところが、一度聞けば絶対に忘れないほどに魅力的なメロディなのに、そのメロディは楽章の冒頭に姿を現すだけで、その後は二度と姿を見せないことに恥ずかしながら最近になって気がつきました。
似たような形に変形されては何度も姿を現すのですが、あのメロディは完全な形では二度と姿を現さないのです。
もったいないといえばこれほどもったいない話はありません。しかし、その「奥ゆかしさ」というか「もどかしさ」がこの作品にいいようのない陰影をあたえているようです。
冒頭の部分で愛しき人の面影をしっかりと刻み込んでおいて、あとはその面影を求めて聞き手をさまよい歩かせるような風情です。そして、時々その面影に似た人を見かけるのですが、それは似てはいてもいつも別人なのです。そして、音楽はその面影に二度と巡り会えないままに終わりを迎えます。
いかにモーツァルトといえども、青春というものがもつ悲しみをこれほどまでに甘く、そして痛切にえがききった作品はそうあるものではありません。
ソリスト主導の演奏
ヴァイオリンはブレイニン、ヴィオラはシドロフという顔ぶれです。あまり馴染みのない名前かもしれませんが、アマデウス弦楽四重奏団のファーストヴァイオリンとヴィオラ奏者だといった方が通りがいいかもしれません。
ユング君がこの作品を聞くときに真っ先に手が伸びるのはセルが手兵のクリーブランド管弦楽団と録音したもので、その時はオーケストラの首席奏者がソリストをつとめていました。その演奏は指揮者のセルが全てをコントロールしていて、ソリストの二人もその指揮命令系統の中に完全に組み込まれた演奏でした。
しかし、ここで聞くことのできる演奏はそれとは正反対です。
演奏の主導権はヴァイオリンのブレイニンが完全に握っていて、彼が自由にのびのびと歌う音楽に全てが追従しています。確かにセルの演奏のような完成度は望むべくもありませんが、部屋の温度が確実に5,6度は上がるようなアツサはあります。
完成された完璧なプロポーションは確かに素晴らしいものですが、時にはパッションに身を浸すのも悪くはありません。
この演奏を評価してください。
- よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
- いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
- まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
- なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
- 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10
499 Rating: 5.7/10 (242 votes cast)
よせられたコメント
【最近の更新(10件)】
[2024-11-21]
ショパン:ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調, Op.11(Chopin:Piano Concerto No.1, Op.11)
(P)エドワード・キレニ:ディミトリ・ミトロプーロス指揮 ミネアポリス交響楽団 1941年12月6日録音((P)Edword Kilenyi:(Con)Dimitris Mitropoulos Minneapolis Symphony Orchestra Recorded on December 6, 1941)
[2024-11-19]
ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.77(Brahms:Violin Concerto in D major. Op.77)
(Vn)ジネット・ヌヴー:イサイ・ドヴローウェン指揮 フィルハーモニア管弦楽 1946年録音(Ginette Neveu:(Con)Issay Dobrowen Philharmonia Orchestra Recorded on 1946)
[2024-11-17]
フランク:ヴァイオリンソナタ イ長調(Franck:Sonata for Violin and Piano in A major)
(Vn)ミッシャ・エルマン:(P)ジョセフ・シーガー 1955年録音(Mischa Elman:Joseph Seger Recorded on 1955)
[2024-11-15]
モーツァルト:弦楽四重奏曲第17番「狩」 変ロ長調 K.458(Mozart:String Quartet No.17 in B-flat major, K.458 "Hunt")
パスカル弦楽四重奏団:1952年録音(Pascal String Quartet:Recorded on 1952)
[2024-11-13]
ショパン:「華麗なる大円舞曲」 変ホ長調, Op.18&3つの華麗なるワルツ(第2番~第4番.Op.34(Chopin:Waltzes No.1 In E-Flat, Op.18&Waltzes, Op.34)
(P)ギオマール・ノヴァエス:1953年発行(Guiomar Novaes:Published in 1953)
[2024-11-11]
ドヴォルザーク:ヴァイオリン協奏曲 イ短調, Op.53(Dvorak:Violin Concerto in A minor, Op.53)
(Vn)アイザック・スターン:ディミトリ・ミトロプーロス指揮 ニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団 1951年3月4日録音(Isaac Stern:(Con)Dimitris Mitropoulos The New York Philharmonic Orchestra Recorded on March 4, 1951)
[2024-11-09]
ワーグナー:「神々の黄昏」夜明けとジークフリートの旅立ち&ジークフリートの葬送(Wagner:Dawn And Siegfried's Rhine Journey&Siegfried's Funeral Music From "Die Gotterdammerung")
アルトゥール・ロジンスキー指揮 ロイヤル・フィルハーモニ管弦楽団 1955年4月録音(Artur Rodzinski:Royal Philharmonic Orchestra Recorded on April, 1955)
[2024-11-07]
ベートーベン:ピアノ協奏曲第4番 ト長調 作品58(Beethoven:Piano Concerto No.4, Op.58)
(P)クララ・ハスキル:カルロ・ゼッキ指揮 ロンドン・フィルハーモニック管弦楽団 1947年6月録音(Clara Haskil:(Con)Carlo Zecchi London Philharmonic Orchestra Recorded om June, 1947)
[2024-11-04]
ブラームス:交響曲第3番 ヘ長調, Op.90(Brahms:Symphony No.3 in F major, Op.90)
アルトゥーロ・トスカニーニ指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1952年9月29日&10月1日録音(Arturo Toscanini:The Philharmonia Orchestra Recorded on September 29&October 1, 1952)
[2024-11-01]
ハイドン:弦楽四重奏曲 変ホ長調「冗談」, Op.33, No.2,Hob.3:38(Haydn:String Quartet No.30 in E flat major "Joke", Op.33, No.2, Hob.3:38)
プロ・アルテ弦楽四重奏団:1933年12月11日録音(Pro Arte String Quartet]Recorded on December 11, 1933)