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ハイフェッツ(Jascha Heifetz)|チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調, Op.35
チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調, Op.35
(Vn)ヤッシャ・ハイフェッツ:ヴァルター・ジュスキント指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1950年6月19日~20日録音
Tchaikovsky:Violin Concerto in D major Op.35 [1.Allegro moderato - Moderato assai]
Tchaikovsky:Violin Concerto in D major Op.35 [2.Canzonetta. Andante]
Tchaikovsky:Violin Concerto in D major Op.35 [3.Finale. Allegro vivacissimo]
演奏不能! 〜初演の大失敗!

これほどまでに恵まれない環境でこの世に出た作品はそうあるものではありません。
まず生み出されたきっかけは「不幸な結婚」の破綻でした。これは有名な話のなので詳しくは述べませんが、その精神的なダメージから立ち直るためにスイスにきていたときにこの作品は創作されました。
ヴァイオリンという楽器にそれほど詳しくなかったために、作曲の課程ではコテックというヴァイオリン奏者の助言を得ながら進められました。
そしてようやくに完成した作品は、当時の高名なヴァイオリニストだったレオポルド・アウアーに献呈をされるのですが、スコアを見たアウアーは「演奏不能」として突き返してしまいます。ピアノ協奏曲もそうだったですが、どうもチャイコフスキーの協奏曲は当時の巨匠たちに「演奏不能」だと言ってよく突き返されます。
このアウアーによる仕打ちはチャイコフスキーにはかなりこたえたようで、作品はその後何年もお蔵入りすることになります。そして1881年の12月、親友であるアドルフ・ブロドスキーによってようやくにして初演が行われます。
しかし、ブドロスキーのテクニックにも大きな問題があったためにその初演は大失敗に終わり、チャイコフスキーは再び失意のどん底にたたき落とされます。
やはり、アウアーが演奏不能と評したように、この作品を完璧に演奏するのはかなり困難であったようです。
しかし、この作品の素晴らしさを確信していたブロドスキーは初演の失敗にもめげることなく、あちこちの演奏会でこの作品を取り上げていきます。やがて、その努力が実って次第にこの作品の真価が広く認められるようになり、ついにはアウアー自身もこの作品を取り上げるようになっていきました。
めでたし、めでたし、と言うのがこの作品の出生と世に出るまでのよく知られたエピソードです。
しかし、やはり演奏する上ではいくつかの問題があったようで、アウアーはこの作品を取り上げるに際して、いくつかの点でスコアに手を加えています。
そして、原典尊重が金科玉条にようにもてはやされる今日のコンサートにおいても、なぜかアウアーによって手直しをされたものが用いられています。
つまり、アウアーが「演奏不能」と評したのも根拠のない話ではなかったようです。ただ、上記のエピソードばかりが有名になって、アウアーが一人悪者扱いをされているようなので、それはちょっと気の毒かな?と思ったりもします。
ただし、最近はなんと言っても原典尊重の時代ですから、アウアーの版ではなく、オリジナルを使う人もポチポチと現れているようです。でも、数は少ないです。クレーメルぐらいかな?
やっぱり難しいんでしょうね。
漲るような自信が溢れている
ハイフェッツはチャイコフスキーの協奏曲を3回録音しています。
- ジョン・バルビローリ指揮 ロンドンフィルハーモニー管弦楽団 1937年3月25日録音
- ヴァルター・ジュスキント指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1950年6月19日~20日録音
- フリッツ・ライナー指揮 シカゴ交響楽団 1957年4月19日録音
SP盤の時代、モノラ宇録音の時代、そしてステレオ録音の時代にそれぞれ録音していると言うことです。それは、ハイフェッツほどのビッグ・ネームであれば当然と言えば当然です。そして、今さら言うまでもないことですが、このうちに57年にライナーと共演したステレオ録音が彼の代表盤と言うことになっています。
ただし、この時代のハイフェッツの協奏曲の録音には、その立派さを認めながらもどこか違和感を感じるときがあります。特に、ベートーベンやブラームス、チャイコフスキーにメンデルスゾーンというような大曲にその傾向があります。そして、ヴィエニャフスキやヴュータン、ブルッフのような協奏曲だとそう言う違和感は全く感じません。
ただし、それはハイフェッツは小品ならば名人芸を全開させて問題なく弾きこなせるけれども、大作になると力が及ばないといっているわけではありません。実際このチャイコフスキーの協奏曲にしたって、あの57年盤のハイフェッツほど万全の技巧で颯爽スタイリッシュに弾きこなしているヴァイオリニストはそうそういるものではありません。そして、チャイコフスキーならではの叙情性にも不足はしていません。
それで、どこに文句があるんだと言うことになるのですが、やはりどこかで、これはこの作品のファースト・チョイスじゃないよな、と言う気持ちが拭いきれないのです。
そう思えば、例えモノラル録音であっても、さらに凄いテクニックで弾ききっているこのモノラル盤も忘れるには惜しいような気がするのです。
ハイフェッツはどこまでも自分に厳しい音楽家であり、日々の練習は絶対に欠かさない人でした。ですから、他人が何といっても、50年代の後半には己の衰えのようなものは感じとっていたのではないかと思います。そして、後の時代に彼の代表盤になることになってしまった(^^;RCAでのステレオ盤は、そう言うもどかしさがハイフェッツの中に否定しきれずにあることを認めながら、それでもその時点でやりきれることをやり遂げた録音だったように思うのです。
それと比べれば、この50年のハイフェッツには漲るような自信が溢れています。そして、ジュスキントはその伴奏指揮者に徹していて、華やかなスターに最高のスポット・ライトをあてることに専念しています。その意味では、名人芸のひけらかしと言う面も否応なく感じてしまうのですが、そう言う振り切ったハイフェッツもまた魅力的なのです。
やはり、モノラルであってもその存在意義は失っていないと言えるのではないでしょうか。
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よせられたコメント
2021-04-19:吉田源三
- 1937年と1950年と、ハイフェッツの技術も音楽様式も同じです・
問題になるのは。共演者とオーケストラです。
ジュスキンとは、N響きと何度も共演したけれど、皆から好かれていましたし、柔らかいいい音がしていました。
ライナー・シカゴは世界のトップクラスでいましたから、問題ない。
ジュスキントは、N響の相性抜群で、殉難性抜群で、合わオケけはありません。
ミュンシュボストンはステレオで、音は最高ですが、遜色在りません。
デジタルの方が音が悪いのですから、カラヤンベルリンフィルなんて問題になりません。
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