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リリー・クラウス(Lili Kraus) |モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番 ニ短調 K.466
モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番 ニ短調 K.466
(P)リリー・クラウス ウィリー・ボスコフスキー指揮 ウィーン・コンツェルトハウス室内管弦楽団 1955年録音 Mozart:Piano Concerto No.20 in D minor, K.466 [1.Allegro]
Mozart:Piano Concerto No.20 in D minor, K.466 [2.Romance]
Mozart:Piano Concerto No.20 in D minor, K.466 [3.Allegro assai]
こににも一つの断層が口を開けています
この前作である第19番のコンチェルトと比べると、この両者の間には「断層」とよぶしかないほどの距離を感じます。ところがこの両者は、創作時期においてわずか2ヶ月ほどしか隔たっていません。
モーツァルトにとってピアノ協奏曲は貴重な商売道具でした。
特にザルツブルグの大司教との確執からウィーンに飛び出してからは、お金持ちを相手にした「予約演奏会」は貴重な財源でした。当時の音楽会は何よりも個人の名人芸を楽しむものでしたから、オペラのアリアやピアノコンチェルトこそが花形であり、かつての神童モーツァルトのピアノ演奏は最大の売り物でした。
1781年にザルツブルグを飛び出したモーツァルトはピアノ教師として生計を維持しながら、続く82年から演奏家として活発な演奏会をこなしていきます。そして演奏会のたびに目玉となる新曲のコンチェルトを作曲しました。
それが、ケッヘル番号で言うと、K413?K459に至る9曲のコンチェルトです。それらは、当時の聴衆の好みを反映したもので、明るく、口当たりのよい作品ですが、今日では「深みに欠ける」と評されるものです。
ところが、このK466のニ短調のコンチェルトは、そういう一連の作品とは全く様相を異にしています。
弦のシンコペーションにのって低声部が重々しく歌い出すオープニングは、まさにあの暗鬱なオペラ「ドン・ジョヴァンニ」の世界を連想させます。そこには愛想の良い微笑みも、口当たりのよいメロディもありません。
それは、ピアノ協奏曲というジャンルが、ピアノニストの名人芸を披露するだけの「なぐさみ」ものから、作曲家の全人格を表現する「芸術作品」へと飛躍した瞬間でした。
それ以後にモーツァルトが生み出さしたコンチェルトは、どれもが素晴らしい第1楽章と、歌心に満ちあふれた第2楽章を持つ作品ばかりであり、その流れはベートーベンへと受け継がれて、それ以後のコンサートプログラムの中核をなすジャンルとして確立されていきます。
しかし、モーツァルトはあまりにも時代を飛び越えすぎたようで、その様な作品を当時の聴衆は受け入れることができなかったようです。このような「重すぎる」ピアノコンチェルトは奇異な音楽としかうつらず、予約演奏会の聴衆は激減し、1788年には、ヴァン・シュヴィーテン男爵ただ一人が予約に応じてくれるという凋落ぶりでした。
早く生まれすぎたものの悲劇がここにも顔を覗かせています。
ウィーンゆかりの作曲家の作品を集中的に録音
ボスコフスキーは50年代の中頃に、ピアニストとのリリー・クラウスやウィーンフィルの気心の知れた連中を集めて、ウィーンゆかりの作曲家の作品を集中的に録音しています。
そのラインナップは、確認できただけで以下の通りです。
モーツァルト:ヴァイオリンソナタ(ほぼ全集) (P)リリー・クラウス (Vn)ウィリー・ボスコフスキー 1954年~1957年録音
モーツァルト:ピアノ三重奏曲全集 (P)リリー・クラウス (Vn)ボスコフスキー (vc)ニコラス・ヒューブナー 1954年録音
モーツァルト:ピアノ協奏曲第9番・20番 (con)ウィリー・ボスコフスキー (p)リリー・クラウス ウィーン・コンツェルトハウス室内管弦楽団 1955年録音
ベートーベン:ヴァイオリンソナタ全集 (P)リリー・クラウス (Vn)ウィリー・ボスコフスキー 1955年録音
シューベルト:ヴァイオリンとピアノのためのソナチネ第1番、第2番、第3番 (P)リリー・クラウス (Vn)ウィリー・ボスコフスキー 1957年録音
ウィーンフィルというのはいうまでもなくウィーン国立歌劇場のオケのメンバーによって自主的に運営されている団体です。そして、母体であるウィーン国立歌劇場というのは、9月から翌年6月までのシーズンでクリスマスの日しか休まないという世界で最も勤勉な歌劇場です。もちろん、オケのメンバーは交代で歌劇場で演奏するのですが、それでも激務であることは変わりはなく、その合間を縫ってこれだけの録音を残したことには驚きを感じます。
ただ、そういう事情が背景にあるためか、その演奏はスコアを徹底的に読み込んで新しい解釈や発見を世に問うというものではなく、我らが街の、我らが作曲家の作品を、我らの先輩達が演奏してきた流儀で演奏しています。そして、それが、「伝統とは怠惰の別名」と喝破したマーラーの言葉を思い出してしまうような場面があちこちにあります。
要は、緩いんですね。(^^v
ですから、モーツァルトやシューベルトはまだしも、ベートーベンのヴァイオリンソナタに関してはほとんど話題になることもなく、忘れ去られてしまった録音になっています。こう言い切っても、ほぼ間違いないでしょう。
しかし、考えてみれば、ベートーベンのヴァイオリンソナタというのは、そのほとんどがベートーベンの初期作品です。特に、作品12の3作品などははっきりとハイドンやモーツァルトの影響が刻み込まれています。4番から8番にしても、それらは「エロイカ以前」の作品です。あまり眦決して演奏するよりは、こういう緩めの風情でのんびり聞くのも悪くはないのです。
そう言えば、この作品の決定盤ともいうべきオイストラフ&オポーリン盤について、こんな恐れ多いことを書いたことがあります。
「仕事の仕上がりが完璧であればあるほど、ベートーベンの若書きゆえの弱さみたいなものがあぶり出されていくような気もするのです。」
ほとんど言いがかりのような物言いなのですが、この緩い演奏を聴くことで、再びそれが言いがかりとも言い切れないことに音楽の難しさを垣間見たような気がします。
なお、最後に録音に関する情報を一つ。
このボスコフスキーとクラウスを核とした一連の録音は、前半はウィーンで、後半はパリで行われています。このベートーベンのヴァイオリンソナタに関していえば、1番から5番、そして8番がウィーンで行われ、録音を担当したのはAntoine Duhamel(アントワーヌ・デュアメル)です。
アントワーヌ・デュアメルと言えばフランスの作曲家、音楽学者として知られているのですが、この頃はAndre Charlin(アンドレ・シャルラン)のもとで録音エンジニアをしていたのですね。
そして、注目すべきは後半のパリでの録音で、こちらはフランスの伝説的名ンジニア、アンドレ・シャルランが担当しています。
雰囲気的には54年から55年にかけてはAntoine Duhamel、56年から57年にかけてははAndre Charlinが担当したようです。
Antoine Duhamelの録音はどちらかと言えば常識的な音のとり方ですが、Andre Charlinの方はさすがの音作りです。ピアノとヴァイオリンという二つの楽器が対等に一つの空間で鳴り響いている姿を実にうまくすくい取っています。こういうのを聞くと、編成の小さな室内楽ではモノラル録音であることはほとんどハンデにはならないことを教えられます。
この演奏を評価してください。
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いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10
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