Home|
オーマンディ(Eugene Ormandy)|ヨハン・シュトラウス II:ワルツ「千夜一夜物語」 Op.346
ヨハン・シュトラウス II:ワルツ「千夜一夜物語」 Op.346
ユージン・オーマンディ指揮 フィラデルフィア管弦楽団 1961年12月28日録音
Johann Strauss II:A Thousand and One Nights, Op.346
社交の音楽から芸術作品へ
父は音楽家のヨハン・シュトラウスで、音楽家の厳しさを知る彼は、息子が音楽家になることを強く反対したことは有名なエピソードです。そして、そんなシュトラウスにこっそりと音楽の勉強が出来るように手助けをしたのが母のアンナだと言われています。後年、彼が作曲したアンネンポルカはそんな母に対する感謝と愛情の表れでした。
やがて、父も彼が音楽家となることを渋々認めるのですが、彼が1844年からは15人からなる自らの楽団を組織して好評を博するようになると父の楽団と競合するようになり再び不和となります。しかし、それも46年には和解し、さらに49年の父の死後は二つの楽団を合併させてヨーロッパ各地へ演奏活動を展開するようになる。
彼の膨大なワルツやポルカはその様な演奏活動の中で生み出されたものでした。そんな彼におくられた称号が「ワルツ王」です。
たんなる社交場の音楽にしかすぎなかったワルツを、素晴らしい表現力を兼ね備えた音楽へと成長させた功績は偉大なものがあります。
ヨハン・シュトラウス2世:ワルツ「千夜一夜物語」op.346
これもシュトラウスのワルツのなかでは有名曲になるのでしょうが、もとは彼のオペレッタ「インディゴと40人の盗賊」からの美味しいところ取りです。
当時は、世間で話題になったオペラやオペレッタから美味しい部分を抜き出して編曲するというのはよくやられました。著作権などと言う概念は全くなかったのですから、美味しく編曲すればやった者勝ちだったわけです。
もちろん、これは自作からの編曲ですから今の時代であっても何の問題もありません。
確か「南国のバラ」も「女王のレースのハンカチーフ」というオペレッタからの編曲だったはずです。
美味しいメロディラインを作ったのであれば、それを徹底的に使い回すのも芸の内だったのでしょうか。
端正であると同時に豊満
オーマンディがどうしても低く見られる要因として「オペラ」を指揮しなかったと言うことがあります。実はミンシュもほぼ同様で、彼もまた「オペラ」との縁は非常に少なかった指揮者でした。
そして、アメリカではまだしも、ヨーロッパではその事は決定的な「弱点」と見なされました。
ただし、ミンシュはそう言うことは殆ど気にしていなかったようです。
それに対して、オーマンディの方はその事に多少の引け目を感じていたのか、唯一、ヨハン・シュトラウスの「こうもり」だけを録音しています。そして、それを「ヨハン・シュトラウスの理想的指揮者」と鼻であしらったのがストラヴィンスキーでした。
しかしながら、そんな風に馬鹿にされながらも、彼が鬼のトレーニングで築き上げた「フィラデルフィア・サウンド」は唯一無二の魅力を持っていました。
例えばリヒャルト・シュトラウスの「薔薇の騎士」組曲を聴いてみれば、それはまさに「薔薇の騎士」のダイジェスト版になっているだけでなく、その響きの豊麗さは誰にも真似の出来ない優れものでした。
ですから、そんなオーマンディが手兵のフィラデルフィア管の豊饒な響きを最大限にフル活用してヨハン・シュトラウスのワルツやポルカを演奏すればどんな音楽になるのかは概ね予想はつきます。
そして、現実はその予想をはるかに上回る面白さと美しさに満ちた音楽を聞かせてくれています。
まず最初に断っておかなければいけないのは、ここには「ウィーンの粋」はありません。基本的にワルツはワルツとしてきちんと3拍子で構成されていますし、ポルカはポルカらしく力強い推進力が強調されています。
つまりは、ウィンナー・ワルツという「伝統」からは自由になって、それらの作品を純粋器楽として端正に構築しているのです。その点ではセル&クリーブランド管によるシュトラウス演奏と方向性は同じです。しかし、セルになくてオーマンディにあったのはフィラデルフィア管の豊麗なサウンドです。
そう言えば、セルのウィンナー・ワルツをまるで士官学校での舞踏会みたいだと書いた事があるのですが、ここにはその様な禁欲的な雰囲気は全くありません。その音楽は端正であると同時に豊満でもあります。
そして、こういう表現というのは、簡単にやれるように見えて意外と難しいものであることに気づかされます。
そして、これが誉め言葉になるのかどうかは分かりませんが、「オーケストラの休日」でも感じたように、こういう小品を扱わせたときのオーマンディの上手さは抜きんでています。
この演奏を評価してください。
- よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
- いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
- まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
- なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
- 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10
4604 Rating: 6.2/10 (107 votes cast)
よせられたコメント
2021-05-29:アドラー
- オーマンディ/フィラデルフィアによるウィンナワルツは、アップして頂いた「青きドナウ」や「ウィーンの森」では楽しめたのに、これは何度聴いてもなぜか、どこか重い感じがします。音はきれいだし見事な演奏なのですが。。私はシュトラウスの(ポルカでなく)ワルツでは、譬えるなら(ドナウ)川の川下りをしていると日向からふっと木陰に入って空気感が変わるような、そんなリズムや曲想の変化が途中に出てくるのを楽しみにしている(とアップしていただいている他のシュトラウスの演奏と聴き比べて気がついた)のですが、オーマンディの「千夜一夜」には、「ドナウ」や「ウィーンの森」と違ってそれが余り感じられず、最後まで私の中のリズムが弾力をもつことなく終わる感じです。何度も聴いていればその印象も変わるのかもしれないので、今後も聴かせて頂きますが、毎日、興味深い演奏を紹介してくださるので、なかなかじっくりと聴けません(贅沢な悩み)。
【最近の更新(10件)】
[2024-11-21]
ショパン:ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調, Op.11(Chopin:Piano Concerto No.1, Op.11)
(P)エドワード・キレニ:ディミトリ・ミトロプーロス指揮 ミネアポリス交響楽団 1941年12月6日録音((P)Edword Kilenyi:(Con)Dimitris Mitropoulos Minneapolis Symphony Orchestra Recorded on December 6, 1941)
[2024-11-19]
ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.77(Brahms:Violin Concerto in D major. Op.77)
(Vn)ジネット・ヌヴー:イサイ・ドヴローウェン指揮 フィルハーモニア管弦楽 1946年録音(Ginette Neveu:(Con)Issay Dobrowen Philharmonia Orchestra Recorded on 1946)
[2024-11-17]
フランク:ヴァイオリンソナタ イ長調(Franck:Sonata for Violin and Piano in A major)
(Vn)ミッシャ・エルマン:(P)ジョセフ・シーガー 1955年録音(Mischa Elman:Joseph Seger Recorded on 1955)
[2024-11-15]
モーツァルト:弦楽四重奏曲第17番「狩」 変ロ長調 K.458(Mozart:String Quartet No.17 in B-flat major, K.458 "Hunt")
パスカル弦楽四重奏団:1952年録音(Pascal String Quartet:Recorded on 1952)
[2024-11-13]
ショパン:「華麗なる大円舞曲」 変ホ長調, Op.18&3つの華麗なるワルツ(第2番~第4番.Op.34(Chopin:Waltzes No.1 In E-Flat, Op.18&Waltzes, Op.34)
(P)ギオマール・ノヴァエス:1953年発行(Guiomar Novaes:Published in 1953)
[2024-11-11]
ドヴォルザーク:ヴァイオリン協奏曲 イ短調, Op.53(Dvorak:Violin Concerto in A minor, Op.53)
(Vn)アイザック・スターン:ディミトリ・ミトロプーロス指揮 ニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団 1951年3月4日録音(Isaac Stern:(Con)Dimitris Mitropoulos The New York Philharmonic Orchestra Recorded on March 4, 1951)
[2024-11-09]
ワーグナー:「神々の黄昏」夜明けとジークフリートの旅立ち&ジークフリートの葬送(Wagner:Dawn And Siegfried's Rhine Journey&Siegfried's Funeral Music From "Die Gotterdammerung")
アルトゥール・ロジンスキー指揮 ロイヤル・フィルハーモニ管弦楽団 1955年4月録音(Artur Rodzinski:Royal Philharmonic Orchestra Recorded on April, 1955)
[2024-11-07]
ベートーベン:ピアノ協奏曲第4番 ト長調 作品58(Beethoven:Piano Concerto No.4, Op.58)
(P)クララ・ハスキル:カルロ・ゼッキ指揮 ロンドン・フィルハーモニック管弦楽団 1947年6月録音(Clara Haskil:(Con)Carlo Zecchi London Philharmonic Orchestra Recorded om June, 1947)
[2024-11-04]
ブラームス:交響曲第3番 ヘ長調, Op.90(Brahms:Symphony No.3 in F major, Op.90)
アルトゥーロ・トスカニーニ指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1952年9月29日&10月1日録音(Arturo Toscanini:The Philharmonia Orchestra Recorded on September 29&October 1, 1952)
[2024-11-01]
ハイドン:弦楽四重奏曲 変ホ長調「冗談」, Op.33, No.2,Hob.3:38(Haydn:String Quartet No.30 in E flat major "Joke", Op.33, No.2, Hob.3:38)
プロ・アルテ弦楽四重奏団:1933年12月11日録音(Pro Arte String Quartet]Recorded on December 11, 1933)