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Home|ターリッヒ(Vaclav Talich)|ヴィーチェスラフ・ノヴァーク:モラヴィア=スロバキア組曲, Op.32

ヴィーチェスラフ・ノヴァーク:モラヴィア=スロバキア組曲, Op.32

ヴァーツラフ・ターリヒ指揮:チェコ・フィルハーモニー管弦楽団 1953年6月9日~12日録音



Novak:Moravian-Slovak Suite, Op.32 [1.At church]

Novak:Moravian-Slovak Suite, Op.32 [2.Children's scene]

Novak:Moravian-Slovak Suite, Op.32 [3.The lovers]

Novak:Moravian-Slovak Suite, Op.32 [4.The ball]

Novak:Moravian-Slovak Suite, Op.32 [5.The night]


スロバキアの民謡とモラヴィアの田園地帯にインスピレーション

ヴィーチェスラフ・ノヴァークはスークとほぼ同時期にドヴォルザークのもとで学んでいます。しかし、その認知度には大きな差があるようです。
それは、ドヴォルザークのもとで学んだ最大の成果は、師であるドヴォルザークのさらに向こう側にあったブラームスの堅固な音楽のスタイルであり、様式的には基本的には後期ロマン派からでなかったことが原因しているのかもしれません。

しかし、その事は、ある種の晦渋さ、または度し難い自己満足に塗り込められた20世紀の音楽の中においてみれば、彼の作品は素直に美しいとも言えるのです。そう言えば、あのスークにしても、若い頃はドヴォルザークそっくりだった音楽が晩年になるに従ってどんどん晦渋なものになっていったものです。

ヴィーチェスラフ・ノヴァークは母国チェコではそれなりに認知度はあるようですが、それ以外の場所ではほとんど知られていない作曲家です。しかし、この「モラヴィア=スロバキア組曲」のような美しくも魅力的な音楽を聞かされると、もう少し広く世に紹介されてもいいのではないかと思ってしまいます。

なこの「モラヴィア=スロバキア組曲」はノヴァークが20世紀の初め頃に隣国だったモラビアを訪れた時の印象をもとに1903年に作曲されたものです
彼がそこで出会ったスロバキアの民謡とモラヴィアの田園風景にインスピレーションを得たようで、彼がモラヴィアで見たさまざまな風景や音楽、さらには彼がその地で経験した事を音楽的に描写したものだと言えます。全体は5つの部分からなり、小編成のオケとハープ、オルガンで演奏されるようになっています。


  1. 教会で(At church)
    「教会で」と題されたこのオープニング曲は田舎の教会へと聞き手を誘います。そのために、ここではオルガンを使うことで教会の雰囲気を演出しています。そして、田園地帯にある教会に相応しく牧歌的なメロディが弦楽器とハープによって美しく描写されていきます。そこにはどこか天国的な雰囲気すら漂う美しさです。

  2. 子供のシーン (Children's scene)
    「子供のシーン」は、遊び心のあるメロディーと子守唄で構成されています。弾むようなオープニングのテーマは、陽気で軽快です。

  3. 恋人たち(The lovers)
    「恋人たち」はソロクラリネットによる優しいメロディーによってこの叙情的な楽章が開始されます。そして、そこに弦楽器が入ってくるとしだいに陽気で遊び心のある、そして複雑な声部の絡み合いを披露していきます。そして、オーケストラは間奏曲風の音楽を経て最後は弦楽器にとハープによって静かに曲が綴じられます。

  4. ボール(The ball)
    「ボール」は、喜びと興奮に満ちた村のお祭りを描いています。伝統的なフォークダンスとリズムから生まれた音楽であり、ノヴァークの優れた才能が遺憾なく発揮されています。ボールでのダンスはしだいにテンポが速くなり、最後はそのテンポが頂点に達して熱狂の中で曲は終わります。

  5. 夜(The night)
    フィナーレ楽章はオープニング楽章とスタイルが似ています。ゆったりとした導入部では波打つハープが月明かりを表し、豊かな弦楽器の響きとそれによりそう木管楽器が燦めく水面を表しています。
    そして、それに続けて教会と恋人たちのテーマが前面に出てくると音楽はより豊かで劇的になり、最後は大きなクライマックスへと盛り上がっていきます。
    しかし、そのクライマックスが消えていくと、夜はゆっくりと遠くへと消えていき、あとにはモラヴィアへの静かな思い出だけが残ります。





折り目正しく作品の姿を出来る限り正当に伝えようとしている

アンチェルはチェコの現代作曲家の作品の紹介に熱心でした。それと比べると、ターリッヒはそれほど熱心ではなかったのですが、それよりも一世代前の、すなわちドヴォルザークからの影響を強く受けた世代の作曲家の紹介に熱心でした。
具体的に言えば、ヨゼフ・スーク、ヴィーチェスラフ・ノヴァーク、ヴィレーム・ブロデクあたりでしょうか。
特に、スークの作品の紹介には熱心でしたし、スメタナのマイナー作品も良く取り上げています。

そして、そう言う作品の演奏を聞いていて一つ気づいたことがあります。
それは、スメタナやドヴォルザークの有名作品では民族色を強く出すことが多いのですが、余り聞かれる機会の少ない作品だとそう言う側面は極力抑制して、どちらかと言えば折り目正しく作品の姿を出来る限り正当に伝えようとしているように思えることです。

ただし、「折り目正しく」とは言っても決して四角四面になることはなく、チェコ・フィルの美しい響きを存分に活用して、それらの作品が持っている豊かさや美しさを十分に引きだしています。
これは、日頃、そう言う作品に触れる機会の少ないものにとっては、言葉をかえればそう言う作品へのファースト・コンタクトとしてはもっとも幸福な出会いを用意してくれると言うことになります。

そして、その事は、ターリッヒがそう言う自国の作曲家に対して深い理解と尊敬の念を持っていたことの証左でもあります。
おそらく、「こんな作品見たことも聞いたこともない」という人が多くて、最初から敬遠される方も多いかと思うのですが、どれもこれも非常に聴き応えのある音楽ですので、まずは一度お試しあれ!!

この演奏を評価してください。

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