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マーク(Peter Maag)|モーツァルト:セレナード第8番 ニ長調 K.286 「4つのオーケストラのためのノットゥルノ」
モーツァルト:セレナード第8番 ニ長調 K.286 「4つのオーケストラのためのノットゥルノ」
マーク指揮 Hr.バリー・タックウェル ロンドン交響楽団 1959年録音
Mozart:4つのオーケストラのためのノットゥルノ k286 「第1楽章」
Mozart:4つのオーケストラのためのノットゥルノ k286 「第2楽章」
Mozart:4つのオーケストラのためのノットゥルノ k286 「第3楽章」
追いかけあいと重なりの醸し出す不思議な効果を楽しむ音楽
この作品はとても変わった楽器編成でかかれています。最初、セレナード第8番 ニ長調 K.286と言う作品名に「4つのオーケストラのためのノットゥルノ」という説明のようなものがついているのがなかなか理解できなかったのです。
しかし、実際に音楽を聴いてみて納得がいきました。
4つのオーケストラというのは通常編成のオーケストラではなくて、ホルンが2、ヴァイオリンが2にヴィオラとバス楽器からなる小さなグループのことを意味しています。ですから、4つのオーケストラというのはこの小さな小グループを4つ使って演奏しなさいと言うことなのです。
面白いのは、モーツァルトはこの4つのグループのうちの3つに「第1エコー」「第2エコー」「第3エコー」という名前を与えていることです。そして、特別な名前を与えたれていないグループがメインの働きをし、エコーグループはそれを追いかけて模倣するような構成になっています。メヌエット楽章で聞くことのできるホルンの追いかけあいが醸し出す雰囲気などは実に面白い効果が楽しめます。
そして、その追いかけあいや重なり方は微妙に変化が加えられているので、聞き手は飽きると言うことがありません。
なお、この作品は1777年の謝肉祭のために書かれたと言われています、何かのパーティーの席上で披露されたと思うのですが、きっと大受けしたことでしょう。
さらに不可思議なのは、メヌエット楽章で終わる3楽章構成になっていることです。普通は、このあとにロンド楽章がきて終わるのが普通なので、もしかしたら未完成の作品ではないかと言われてきました。しかし、最近の研究では、同時代の(有名ではない)作品にはメヌエット楽章で終わる3楽章構成の作品が数多くあることが分かってきて、この考えは否定されるようになってきています。
ブレインもいいけれどモノラルだから・・と言う人のために
ホルン奏者と言えばデニス・ブレインという「お約束」があったためか、どうもそれ以外の演奏家は影が薄くなります。
このタックウェルという人も、ロンドン交響楽団の首席奏者として長く活躍し、その後はソリストとして活動した人なのですが、その名前を知っている人はそれほど多くないでしょう。
しかし、調べてみると、彼はホルンが独奏楽器として活躍する作品の中で唯一と言っていいほどにメジャーであるモーツァルトの協奏曲を数多く録音しています。
1959年?1961年録音:ペーター・マーク指揮 ロンドン交響楽団(ここで紹介している録音)
1971年録音:マリナー指揮 アカデミー室内管弦楽団
1983年録音:自身の指揮によって イギリス室内管弦楽団
1990年録音:自身の指揮によって フィルハーモニア管弦楽団
この中では、マリナーと組んだ1971年の録音の評価が高いのでしょうが、それでもそれを褒めると、「お可愛そうにね、先代(ブレインのことです)の演奏をご存じでしたらね。」なんて言われそうな雰囲気が漂ってしまうのが辛いところです。
ただし、タックウェル自身も母国のオーストラリアからイギリスにやってきて、ブレインの演奏を聴いて雷に打たれたような衝撃を受けたと語っていますから、そのように言われても彼としては苦笑するしかなかったでしょうね。
なお、このマークと組んだ録音は彼にとっては20代の頃の録音ですから、ブレインに敬意を払いながら、そして一歩でもブレインに近づこうとして己の持てる力をすべて注ぎ込んだ演奏だったのだと思います。これが、71年の録音になると、そう言う肩の力も抜けて余裕を持って微妙なニュアンスなども自在に吹き分けているように思います。
しかし、こういう若いときの「一所懸命」な演奏もまたいいものです。
この演奏を評価してください。
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