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ワインガルトナー(Felix Weingartner)|ベートーベン:交響曲第3番 変ホ長調 「エロイカ」
ベートーベン:交響曲第3番 変ホ長調 「エロイカ」
ワインガルトナー指揮 ウィーン・フィル 1936年5月22日・23日録音
Beethoven:交響曲第3番 変ホ長調 「エロイカ」 「第1楽章」
Beethoven:交響曲第3番 変ホ長調 「エロイカ」 「第2楽章」
Beethoven:交響曲第3番 変ホ長調 「エロイカ」 「第3楽章」
Beethoven:交響曲第3番 変ホ長調 「エロイカ」 「第4楽章」
音楽史における最大の奇跡

今日のコンサートプログラムにおいて「交響曲」というジャンルはそのもっとも重要なポジションを占めています。しかし、この音楽形式が誕生のはじめからそのような地位を占めていたわけではありません。
浅学にして、その歴史を詳細につづる力はありませんが、ハイドンがその様式を確立し、モーツァルトがそれを受け継ぎ、ベートーベンが完成させたといって大きな間違いはないでしょう。
特に重要なのが、この「エロイカ」と呼ばれるベートーベンの第3交響曲です。
ハイリゲンシュタットの遺書とセットになって語られることが多い作品です。人生における危機的状況をくぐり抜けた一人の男が、そこで味わった人生の重みをすべて投げ込んだ音楽となっています。
ハイドンからモーツァルト、そしてベートーベンの1,2番の交響曲を概観してみると、そこには着実な連続性をみることができます。たとえば、ベートーベンの第1交響曲を聞けば、それは疑いもなくモーツァルトのジュピターの後継者であることを誰もが納得できます。
そして第2交響曲は1番をさらに発展させた立派な交響曲であることに異論はないでしょう。
ところが、このエロイカが第2交響曲を継承させ発展させたものかと問われれば躊躇せざるを得ません。それほどまでに、この二つの間には大きな溝が横たわっています。
エロイカにおいては、形式や様式というものは二次的な意味しか与えられていません。優先されているのは、そこで表現されるべき「人間的真実」であり、その目的のためにはいかなる表現方法も辞さないという確固たる姿勢が貫かれています。
たとえば、第2楽章の中間部で鳴り響くトランペットの音は、当時の聴衆には何かの間違いとしか思えなかったようです。第1、第2というすばらしい「傑作」を書き上げたベートーベンが、どうして急にこんな「へんてこりんな音楽」を書いたのかと訝ったという話も伝わっています。
それほどまでに、この作品は時代の常識を突き抜けていました。
しかし、この飛躍によってこそ、交響曲がクラシック音楽における最も重要な音楽形式の一つとなりました。いや、それどことろか、クラシック音楽という芸術そのものを新しい時代へと飛躍させました。
事物というものは着実な積み重ねと前進だけで壁を突破するのではなく、時にこのような劇的な飛躍によって新しい局面が切り開かれるものだという事を改めて確認させてくれます。
その事を思えば、エロイカこそが交響曲というジャンルにおける最高の作品であり、それどころか、クラシック音楽という芸術分野における最高の作品であることをユング君は確信しています。それも、「One of the Best」ではなく、「The Best」であると確信しているユング君です。
ベートーベン演奏の原点とも言うべき録音
ベートーベンの交響曲を全曲録音したのはこのワインガルトナーが最初です。その意味では、今日に至るベートーベン演奏の原点としての意味を持ちます。
しかし、録音はお世辞にも良好とは言い難いものですし、演奏そのものもこれに続くトスカニーニやフルトヴェングラーという錚々たる面々の演奏をすでに知っている耳にとっては取り立てて評価すべきものが乏しいと言わざるを得ません。
それでも、是非ワインガルトナーの録音をアップしてほしいという声が多く寄せられます。
おそらくは、演奏を「楽しみたい」と言うよりは、原点としての歴史的価値を一度は耳で「確かめてみたい」という思いなのでしょう。
ユング君のサイトは数はそろっているけれども音質はいまいちとよく言われます。確かに30年代から40年代の録音は、昨今の最新録音になじんだ耳にはいささか厳しいものがあることは事実です。ですから、最近は基本的に50年代以降の録音を中心にアップしてきました。良質なモノラル録音は最近の録音と比べても遜色ないほどの素晴らしさがあります。ユング君としては、そう言う良質なモノラル録音をアップするたびに「どうだ、これでもうユング君のサイトは音が悪い・・・とは言わせないぞ!!」なんどと一人で力みかえっています。(^^;
そんな努力(?)を積み重ねている最中に、いかに歴史的価値があるとは言え、20年代から30年代にかけて録音された演奏をアップすることには躊躇いを感じていました。
これが、例えばコルトーとティボーによるフランクのヴァイオリンソナタのように、演奏そのものにも価値があるなら問題はないのですが、ワインガルトナーのベートーベンにその様な価値を見いだす人はほとんどいないでしょう。
そんなわけで、要望が多く寄せられるのにも関わらず、どうしてもアップする気になれないでズルズルと先延ばしになっていました。
でも、あれこれ考えあぐねた末に、ついにアップする決心をしました。
結論から言えば、「実際の演奏を一度は耳で確かめては見たけれどCDを買い込んでまでも聞いてみる気にはなれない」というユーザー側の正直な気持ちに応えるべきだと判断したと言うことです。そして、ユング君のサイトのようなところで、そう言う類の録音をまとめてアップしておくというのも意味のあることかもしれないと思い直した次第です。
もちろん、これからも新しくパブリックドメインの仲間に入った録音・演奏ともに良質なものをアップしていくことが基本にはなるのですが、演奏史を振り返る意味で歴史的な価値があるものは録音に難点があってもアップしていこうと思います。
と言うことで、話は全くワインガルトナーには関係のないことばかりになったのですが、この録音に関しては以下のサイトに詳しい解説が載っております。
私が下らぬ事を長々と書き散らすよりは、こちらをご覧あれ。
http://www.geocities.co.jp/Hollywood-Kouen/7792/weingartner.html
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よせられたコメント
2013-01-19:渡邊 眞
- 1936年といえば、昭和11年。226事件の年ですね。「昭和からのおくりもの」というサイトをじっくりと読ませていただきながら聞いていました。想像力で響きなどを補いながら聞いていると、きっとこの演奏には現代に継承されるエロイカ演奏の伝統、スタイルとでもいうものがあるのだろうと感じました。この録音からもウィーンフィルの素晴らしさが伝わってきました。
この録音に価値はないとユングさんはおっしゃいますが、77年前の録音自体にやはり価値はあるのではないでしょうか。そして誰でもきけるという環境を提供してくださるユングさんに感謝いたします。写真は60年後に価値が出るという話を聞いたことがあります(たぶん木村伊兵衛)。
この年ベームは42歳、カラヤン28歳。
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