クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~




Home|アンセルメ(Ernest Ansermet)|ビゼー:交響曲 ハ長調

ビゼー:交響曲 ハ長調

エルネスト・アンセルメ指揮 スイス・ロマンド管弦楽団 1960年10月録音



Bizet:Symphony in C Major [1.Allegro vivo]

Bizet:Symphony in C Major [2.Adagio]

Bizet:Symphony in C Major [3.Menuetto (Scherzo)]

Bizet:Symphony in C Major [4.Allegro Vivace (Finale)


これこそ、青春の歌です。

音楽家の悪妻といえば、モーツァルトの妻、コンスタンツェが有名ですが、極めつけはビゼーでしょう。
彼女は夫の才能を全く信用せずに馬鹿にし続けていました。さらに、ビゼーがその不幸な人生を若くして終えると、彼女はさっさと別の男と再婚をして、前夫の作品はほったらかしにして散逸するのに任せました。

おかげで、彼の作品はそのかなりの部分が失われてしまいました。このビゼー17才の手になる若書きのすばらしい作品も、20世紀になって再発見されたものです。
コンスタンツェは少なくとも夫の作品を大切に保管しました。
おかげで私たちは彼の作品のほとんどすべてを失なわずにすみました。

ビゼーの妻の悪妻ぶりは際だっています。

それにしても、この作品が17才の若者の作品とはにわかに信じがたいものがありますが、反面、17才の若者にしか書けないだろう、さわやかさと厳かさもあります。
若者と厳かさというのはなんだか矛盾するみたいですが、それはあまりにも人間というものを知らなさすぎます。
若者、特に少女というものは、その限られたある一瞬の間だけですが、この上もない神秘性と厳粛さを漂わせます。疑問に思う方は映画「レオン」を見られたし。(もっとも最近はそんな一瞬を持つこともなく、くたびれた大人の女になってしまう人も多いようですが)

そして、男は少女ほどではないにしても、事情は同じです。
そういう若さが持つ一瞬の厳かさを、この音楽ははっきりと感じ取らせてくれます。

ビゼーといえば「カルメン」であることは事実ですが、彼は決してカルメンだけの作曲家ではないのです。


オーケストラのバランスを完璧にコントロールする驚くべき手腕

実にあっさりと、そしてサラッとした感じで仕上げています。よく言えばラテン的な明晰さに溢れていると言えますが、悪く言えばいささか素っ気なくも聞こえます。
しかし、ここに、さらなる濃度と湿度を加えていけばよくなるのかと言えばそうとも思えませんから、若きビゼーの音楽にはこれくらいが丁度いいのかもしれません。

それは、第2楽章の歌い回しによくあらわれていて、一切粘ることのないサラッとした手触りはこの「Adagio」の「歌」にピッタリです。

そして、もう一つ特筆しておくべき事は、オーケストラのバランスを完璧にコントロールしているアンセルメの驚くべき手腕です。
アンセルメと手兵のスイス・ロマンド管弦楽団が始めて来日したときには、録音で聞くことができた完璧なバランスとはほど遠いものだったので、あの絶妙なバランスは録音によるマジックだと言われたものです。しかしながら、「Decca」録音は基本的にワンポイント的なスタイルを守り続けていましたから、編集の段階でオーケストラの個々の楽器のバランスを手直しすることは不可能でした。

アンセルメは最後までマルチ・トラックによる録音を嫌いました。
何故ならば、スタジオ録音において、オーケストラのバランスを整えるのは録音エンジニアの仕事ではなくて指揮者の仕事だと考えていたからです。ですから、彼が録音スタッフに要求したことは、自分が作りあげたその完璧なバランスを出来る限り正確に拾い上げることだったのです。

実際、そのバランスに関するアンセルメの耳の良さは驚異的だったとカルショーも述懐しています。
若き時代に「バランスのセル」とまで言われたジョージ・セルと較べても劣る部分は全くなかっただけでなく、「Decca」の音の良さの最大の原因は「ffrr」などという録音技術によるだけでなく、何よりもアンセルメがつくり出す音の良さに負うところが大きかったとまで言い切っているのです。

アンセルメがスイス・ロマンド管弦楽団と来日したのは1967年であり、その時アンセルメはすでに80歳を超えており、その翌年にはこの世を去ってしまうのです。
いつも言っていることですが、人は年を重ねれば衰えるものです
その衰えを円熟の枯れた芸などと言うのは、約束を違えたときに新しい判断だと言い張るのと同じくらいいかがわしいのです。

しかしながら、この60年に録音された一連のビゼー作品を聞く限りは、その様な衰えはほとんど感じさせません。80歳というのが一つの分岐点なのかもしれません。

この演奏を評価してください。

  1. よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
  2. いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
  3. まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
  4. なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
  5. 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10



3790 Rating: 5.3/10 (125 votes cast)

  1. 件名は変更しないでください。
  2. お寄せいただいたご意見や感想は基本的に紹介させていただきますが、管理人の判断で紹介しないときもありますのでご理解ください
名前*
メールアドレス
件名
メッセージ*
サイト内での紹介

 

よせられたコメント

2023-01-22:コタロー





【リスニングルームの更新履歴】

【最近の更新(10件)】



[2025-06-01]

ベートーベン:交響曲第2番 ニ長調 作品36(Beethoven:Symphony No.2 in D major)
ヨーゼフ・カイルベルト指揮 バンベルク交響楽団 1959年録音(Joseph Keilberth:Bamberg Symphony Recorded on 1959)

[2025-05-29]

ラヴェル:組曲「クープランの墓(管弦楽版)」(Ravel:Le Tombeau de Couperin)
ユージン・オーマンディ指揮 フィラデルフィア管弦楽団 1958年11月16日録音(Eugene Ormandy:Philadelphis Orchestra Recorded on November 16, 1958)

[2025-05-26]

チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調, Op.35(Tchaikovsky:Violin Concerto in D major Op.35)
(Vn)アルフレード・カンポーリ:アタウルフォ・アルヘンタ指揮 ロンドン交響楽団 1956年12月27日~28日録音(Alfredo Campoli:(Cin)Ataulfo Argenta London Symphony Orchestra Recorded on December 27-28, 1955)

[2025-05-22]

ベートーベン:交響曲第1番 ハ長調 作品21(Beethoven:Symphony No.1 in C major , Op.21)
ヨーゼフ・カイルベルト指揮 バンベルク交響楽団 1959年録音(Joseph Keilberth:Bamberg Symphony Recorded on 1959)

[2025-05-18]

ラヴェル:スペイン狂詩曲(Ravel:Rhapsodie espagnole)
ユージン・オーマンディ指揮 フィラデルフィア管弦楽団 1963年2月24日録音(Eugene Ormandy:Philadelphis Orchestra Recorded on February 24, 1963)

[2025-05-15]

エルガー:ヴァイオリン協奏曲 ロ短調, Op.61(Elgar:Violin Concerto in B minor, Op.61)
(Vn)アルフレード・カンポーリ:サー・エードリアン・ボールト指揮 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団 1954年10月28日~29日録音(Alfredo Campoli:(Con)Sir Adrian Boult The London Philharmonic Orchestra Recorded on October 28-29, 1954)

[2025-05-12]

ラヴェル:舞踏詩「ラ・ヴァルス」(Ravel:La valse)
ユージン・オーマンディ指揮 フィラデルフィア管弦楽団 1963年1月30日録音(Eugene Ormandy:Philadelphis Orchestra Recorded on January 30, 1963)

[2025-05-09]

ブラームス:交響曲第4番 ホ短調, Op.98(Brahms:Symphony No.4 in E minor, Op.98)
ヨーゼフ・カイルベルト指揮 ハンブルク・フィルハーモニー管弦楽楽団 1960年録音(Joseph Keilberth:Hamburg Philharmonic Orchestra Recorded on 1960)

[2025-05-06]

ショパン:ノクターン Op.55&Op.62&Op.72&Op-posth(Chopin:Nocturnes for piano, Op.55&Op.62&Op.72)
(P)ギオマール・ノヴァエス:1956年発行(Guiomar Novaes:Published in 1956)

[2025-05-03]

ブラームス:交響曲第3番 ヘ長調, Op.90(Brahms:Symphony No.3 in F major, Op.90)
ヨーゼフ・カイルベルト指揮 バンベルク交響楽団 1963年録音(Joseph Keilberth:Bamberg Symphony Recorded on 1963)