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オーマンディ(Eugene Ormandy)|ベートーベン:交響曲第8番 ヘ長調 作品93
ベートーベン:交響曲第8番 ヘ長調 作品93
オーマンディ指揮 フィラデルフィア管弦楽団 1961年12月10日録音
Beethoven:Symphony No.8 in F, Op.93 [1.Allegro vivace e con brio]
Beethoven:Symphony No.8 in F, Op.93 [2.Allegretto scherzando]
Beethoven:Symphony No.8 in F, Op.93 [3.Tempo di Menuetto]
Beethoven:Symphony No.8 in F, Op.93 [4.Allegro vivace]
谷間に咲く花、なんて言わないでください。

初期の1番・2番をのぞけば、もっとも影が薄いのがこの8番の交響曲です。どうも大曲にはさまれると分が悪いようで、4番の交響曲にもにたようなことがいえます。
しかし、4番の方は、カルロス・クライバーによるすばらしい演奏によって、その真価が多くの人に知られるようになりました。それだけが原因とは思いませんが、最近ではけっこうな人気曲になっています。
たしかに、第一楽章の瞑想的な序奏部分から、第1主題が一気にはじけ出すところなど、もっと早くから人気が出ても不思議でない華やかな要素をもっています。
それに比べると、8番は地味なだけにますます影の薄さが目立ちます。
おまけに、交響曲の世界で8番という数字は、大曲、人気曲が多い数字です。
マーラーの8番は「千人の交響曲」というとんでもない大編成の曲です。
ブルックナーの8番についてはなんの説明もいりません。
シューベルトやドヴォルザークの8番は、ともに大変な人気曲です。
8番という数字は野球にたとえれば、3番、4番バッターに匹敵するようなスター選手が並んでいます。そんな中で、ベートーベンの8番はその番号通りの8番バッターです。これで守備位置がライトだったら最低です。
しかし、ユング君の見るところ、彼は「8番、ライト」ではなく、守備の要であるショートかセカンドを守っているようです。
確かに、野球チーム「ベートーベン」を代表するスター選手ではありませんが、玄人をうならせる渋いプレーを確実にこなす「いぶし銀」の選手であることは間違いありません。
急に話がシビアになりますが、この作品の真価は、リズム動機による交響曲の構築という命題に対する、もう一つの解答だと言う点にあります。
もちろん、第1の解答は7番の交響曲ですが、この8番もそれに劣らぬすばらしい解答となっています。ただし、7番がこの上もなく華やかな解答だったのに対して、8番は分かる人にしか分からないと言う玄人好みの作品になっているところに、両者の違いがあります。
そして、「スター指揮者」と呼ばれるような人よりは、いわゆる「玄人好みの指揮者」の方が、この曲ですばらしい演奏を聞かせてくれると言うのも興味深い事実です。
そして、そう言う人の演奏でこの8番を聞くと、決してこの曲が「小粋でしゃれた交響曲」などではなく、疑いもなく後期のベートーベンを代表する堂々たるシンフォニーであることに気づかせてくれます
心地よく、そして安心して音楽に浸ることができる演奏
エロイカの項でも強調したのですが、オーマンディのベートーベンは世間で言われるほどには悪くはありません。今回、吉田大明神にぼろくそに言われたエロイカに続いて2番と8番を聞いてみたのですが、実にオーソドックスに仕上がっていて見事なものです。
確かに、こういう演奏を取り上げて、無個性だという批判はあるでしょう。しかし、こういうゆったりとしたテンポと豊かな響きできちんとベートーベンの音楽を仕上げてくれていれば、心地よく、そして安心して音楽に浸ることができます。とりわけ、昨今のピリオド演奏のようにいたずらにテンポをあげたり妙にぎくしゃくとしたエッジを効かせたりして、それを「個性的」と自賛しているならば、こういう「無個性」な演奏の方がよほど優れものです。
聞けば分かることですが、2番の第2楽章なんかだと大トロの演奏になっていると思いきや、意外なほどにすっきりとした「歌」に仕上がっています。つまりは、オーマンディという人は世間で思われているほどに「外連味」のない演奏をする人なのです。楽譜に書かれてあることを、何も足さず何も引かず、あるがままに、ただしフィラデルフィアのゴージャスな響きでもって演奏した人でした。そして、「エロイカ」のような作品だと、そのスタイルに対していささか物足りなさを感じる人がいたとしても、こういう2番や8番のような脇役でればなんの不足もないでしょう。
とりわけ、2番の交響曲はハイドンの偉大な交響曲の系譜を引き継ぐ、大傑作であったことがよく分かる演奏です。8番もまた引き締まった演奏で。第3楽章のホルンのソロなどを聞くと、フィラデルフィア管の個々のプレーヤーの能力の高さを思い知らされます。
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