Home|
ロジンスキー(Artur Rodzinski)|ビゼー:交響曲 ハ長調/歌劇「カルメン」より第3幕への前奏曲
ビゼー:交響曲 ハ長調/歌劇「カルメン」より第3幕への前奏曲
アルトゥール・ロジンスキ指揮:ニューヨーク・フィルハーモニック 1945年1月15日録音
Bizet:Symphony in C major, WD33 [1.Allegro vivo]
Bizet:Symphony in C major, WD33 [2.Adagio]
Bizet:Symphony in C major, WD33 [3.Scherzo: Allegro]
Bizet:Symphony in C major, WD33 [4.Finale: Allegro vivace]
Bizet:Carmen Prelude to Act3
これこそ、青春の歌です。
音楽家の悪妻といえば、モーツァルトの妻、コンスタンツェが有名ですが、極めつけはビゼーでしょう。
彼女は夫の才能を全く信用せずに馬鹿にし続けていました。さらに、ビゼーがその不幸な人生を若くして終えると、彼女はさっさと別の男と再婚をして、前夫の作品はほったらかしにして散逸するのに任せました。
おかげで、彼の作品はそのかなりの部分が失われてしまいました。このビゼー17才の手になる若書きのすばらしい作品も、今世紀になって再発見されたものです。
コンスタンツェは少なくとも夫の作品を大切に保管しました。
おかげで私たちは彼の作品のほとんどすべてを失なわずにすみました。
ビゼーの妻の悪妻ぶりは際だっています。
それにしても、この作品が17才の若者の作品とはにわかに信じがたいものがありますが、反面、17才の若者にしか書けないだろう、さわやかさと厳かさもあります。
若者と厳かさというのはなんだか矛盾するみたいですが、それはあまりにも人間というものを知らなさすぎます。
若者、特に少女というものは、その限られたある一瞬の間だけですが、この上もない神秘性と厳粛さを漂わせます。疑問に思う方は映画「レオン」を見られたし。(もっとも最近はそんな一瞬を持つこともなく、くたびれた大人の女になってしまう人も多いようですが)
そして、男は少女ほどではないにしても、事情は同じです。
そういう若さが持つ一瞬の厳かさを、この音楽ははっきりと感じ取らせてくれます。
ビゼーといえば「カルメン」であることは事実ですが、彼は決してカルメンだけの作曲家ではないのです。
実に即物的な演奏です
ロジンスキーはストコフスキーの招きで1925年に渡米し、フィラデルフィアの副指揮者としてキャリアを積み上げた人です。その後、29年にはロサンゼルスフィル、33年からはクリーブランド管弦楽団、そして43年にはニューヨークフィルの常任指揮者へと階段を駆け上がっていきました。
実に即物的な演奏をする人で、現代音楽の解釈では定評のある人でした。
ただこのビゼーなどは、今の感覚からするともう少し歌わせてくれてもいいのにな!と思ってしまうのも事実です。特に第2楽章などではビゼーの青春の歌をもっと切々と歌ってほしいのですが、そう言う部分になるとかえって素っ気なく演奏してしまうのがロジンスキーらしいと言えばロジンスキーらしいといえます。
でも正直なところ、ちょっと物足りなく思ってしまうのも事実です。
[2022年9月29日追記]
Flacファイル化するときにRCAからの正規復刻盤で聞き直してみました。いやはや、録音クオリティの違いというものは演奏というものに対する評価をガラリと変えてします。
正規復刻盤で聞いてみれば、「いささか素っ気ない」などとは到底言えません。
その違いは音の芯の部分がしっかりしているかどうかでしょう。
指揮者によってはザッハリヒカイトに徹して、作品が構造的な弱点を持っていてもそれはそれなりに再現してしまう人もいます。それはそれで悪いことではないと思うのですが、ロジンスキーという人はそう言う弱さが目の前に表れるとそれに喝を入れて引き締めにかかります。
それは言葉をかえればスパルタ的に鞭をふるってたるんだ部分を引き締め、この作品ってこんなに立派な音楽だったんだと納得させてしまう力を持っています。
それは言葉をかえれば、一つ一つの楽器を決して疎かにしない精緻なアンサンブルへの執念です。
どこかドライな感じはアメリカンテイストであり、そして精緻さへの執念はトスカニーニ譲りなのでしょうが、全体として非常な推進力にあふれながら横への旋律ラインが意外なほどによく歌うのが実に面白いのです。
ただし、もとからそれなりに美しいと言うか可愛らしいというか、そう言う聞かせどころであるような部分になると、それ以上に手を加えないのもロジンスキーの特徴のようです。それは、聞き手からすれば、その前後のスタイリッシュに引き締められた音楽との間に妙な落差があって肩すかしを食わされたような気になるのです。
そして、その様な特徴は晩年になるほど顕著になるのですが、この第2楽想などは可愛らしい女の子をさらに引き締めて凛々しくさせています。
決して素っ気ない音楽になっていなかったようです。
この演奏を評価してください。
- よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
- いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
- まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
- なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
- 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10
208 Rating: 4.8/10 (206 votes cast)
よせられたコメント
【最近の更新(10件)】
[2024-11-21]
ショパン:ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調, Op.11(Chopin:Piano Concerto No.1, Op.11)
(P)エドワード・キレニ:ディミトリ・ミトロプーロス指揮 ミネアポリス交響楽団 1941年12月6日録音((P)Edword Kilenyi:(Con)Dimitris Mitropoulos Minneapolis Symphony Orchestra Recorded on December 6, 1941)
[2024-11-19]
ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.77(Brahms:Violin Concerto in D major. Op.77)
(Vn)ジネット・ヌヴー:イサイ・ドヴローウェン指揮 フィルハーモニア管弦楽 1946年録音(Ginette Neveu:(Con)Issay Dobrowen Philharmonia Orchestra Recorded on 1946)
[2024-11-17]
フランク:ヴァイオリンソナタ イ長調(Franck:Sonata for Violin and Piano in A major)
(Vn)ミッシャ・エルマン:(P)ジョセフ・シーガー 1955年録音(Mischa Elman:Joseph Seger Recorded on 1955)
[2024-11-15]
モーツァルト:弦楽四重奏曲第17番「狩」 変ロ長調 K.458(Mozart:String Quartet No.17 in B-flat major, K.458 "Hunt")
パスカル弦楽四重奏団:1952年録音(Pascal String Quartet:Recorded on 1952)
[2024-11-13]
ショパン:「華麗なる大円舞曲」 変ホ長調, Op.18&3つの華麗なるワルツ(第2番~第4番.Op.34(Chopin:Waltzes No.1 In E-Flat, Op.18&Waltzes, Op.34)
(P)ギオマール・ノヴァエス:1953年発行(Guiomar Novaes:Published in 1953)
[2024-11-11]
ドヴォルザーク:ヴァイオリン協奏曲 イ短調, Op.53(Dvorak:Violin Concerto in A minor, Op.53)
(Vn)アイザック・スターン:ディミトリ・ミトロプーロス指揮 ニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団 1951年3月4日録音(Isaac Stern:(Con)Dimitris Mitropoulos The New York Philharmonic Orchestra Recorded on March 4, 1951)
[2024-11-09]
ワーグナー:「神々の黄昏」夜明けとジークフリートの旅立ち&ジークフリートの葬送(Wagner:Dawn And Siegfried's Rhine Journey&Siegfried's Funeral Music From "Die Gotterdammerung")
アルトゥール・ロジンスキー指揮 ロイヤル・フィルハーモニ管弦楽団 1955年4月録音(Artur Rodzinski:Royal Philharmonic Orchestra Recorded on April, 1955)
[2024-11-07]
ベートーベン:ピアノ協奏曲第4番 ト長調 作品58(Beethoven:Piano Concerto No.4, Op.58)
(P)クララ・ハスキル:カルロ・ゼッキ指揮 ロンドン・フィルハーモニック管弦楽団 1947年6月録音(Clara Haskil:(Con)Carlo Zecchi London Philharmonic Orchestra Recorded om June, 1947)
[2024-11-04]
ブラームス:交響曲第3番 ヘ長調, Op.90(Brahms:Symphony No.3 in F major, Op.90)
アルトゥーロ・トスカニーニ指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1952年9月29日&10月1日録音(Arturo Toscanini:The Philharmonia Orchestra Recorded on September 29&October 1, 1952)
[2024-11-01]
ハイドン:弦楽四重奏曲 変ホ長調「冗談」, Op.33, No.2,Hob.3:38(Haydn:String Quartet No.30 in E flat major "Joke", Op.33, No.2, Hob.3:38)
プロ・アルテ弦楽四重奏団:1933年12月11日録音(Pro Arte String Quartet]Recorded on December 11, 1933)