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オットー・クレンペラー(Otto Klemperer)|ブラームス:交響曲第4番 ホ短調 作品98
ブラームス:交響曲第4番 ホ短調 作品98
クレンペラー指揮 バイエルン放送交響楽団 1957年9月27日録音
Brahms:交響曲第4番ホ短調 op.98 「第1楽章」
Brahms:交響曲第4番ホ短調 op.98 「第2楽章」
Brahms:交響曲第4番ホ短調 op.98 「第3楽章」
Brahms:交響曲第4番ホ短調 op.98 「第4楽章」
とんでもない「へそ曲がり」の作品

ブラームスはあらゆる分野において保守的な人でした。そのためか、晩年には尊敬を受けながらも「もう時代遅れの人」という評価が一般的だったそうです。
この第4番の交響曲はそういう世評にたいするブラームスの一つの解答だったといえます。
形式的には「時代遅れ」どころか「時代錯誤」ともいうべき古い衣装をまとっています。とりわけ最終楽章に用いられた「パッサカリア」という形式はバッハのころでさえ「時代遅れ」であった形式です。
それは、反論と言うよりは、もう「開き直り」と言うべきものでした。
しかし、それは同時に、ファッションのように形式だけは新しいものを追い求めながら、肝腎の中身は全く空疎な作品ばかりが生み出され、もてはやされることへの痛烈な皮肉でもあったはずです。
この第4番の交響曲は、どの部分を取り上げても見事なまでにロマン派的なシンフォニーとして完成しています。
冒頭の数小節を聞くだけで老境をむかえたブラームスの深いため息が伝わってきます。第2楽章の中間部で突然に光が射し込んでくるような長調への転調は何度聞いても感動的です。そして最終楽章にとりわけ深くにじみ出す諦念の苦さ!!
それでいながら身にまとった衣装(形式)はとことん古めかしいのです。
新しい形式ばかりを追い求めていた当時の音楽家たちはどのような思いでこの作品を聞いたでしょうか?
控えめではあっても納得できない自分への批判に対する、これほどまでに鮮やかな反論はそうあるものではありません。
スタジオ録音と聞き比べてみれば結構面白いです。
ハスキルとの共演でクレンペラー大先生のことを随分と悪く書いたので、少しは彼の大先生の名誉を回復するためにブラームスの交響曲のライブ演奏を追加しておきます。
・交響曲第1番ハ短調 op.68 フランス国立放送管弦楽団 1954年9月17日録音
・交響曲第2番ニ長調 op.73 ベルリン放送交響楽団 1957年1月21日録音
・交響曲第3番ヘ長調 op.90 ウィーン交響楽団 1956年3月8日録音
・交響曲第4番ホ短調 op.98 バイエルン放送交響楽団 1957年9月27日録音
クレンペラーは56年から57年にかけてフィルハーモニア管とのコンビでブラームスの交響曲全集を録音していますから、それと聞き比べてみるとのも面白いでしょう。
あのスタジオ録音に関しては「全体を通してまとめてみれば、極めて真っ当ななテンポ設定と、キチンとしたフォルム重視の、実にスタンダードな演奏だと言うことです。部分的には『おや?』という異形な部分があることも事実ですが、全体的に見てみれば、実に真っ当で立派な演奏です。」とまとめています。
よく知られているように、クレンペラーはモントリオール空港のタラップからの転落事故で大怪我をしてからは椅子に座って指揮をするようになり、おかげで抑制のきいた音楽作りができるようになったと陰口をたたかれています。ところが、その抑制のきいた演奏も59年の寝たばこ事件で大火傷を負い、その抑制がさらに行き過ぎた超スローテンポの音楽作りをするになります。
つまり、今回紹介したライブ録音もフィルハ?モニア管とのスタジオ録音も、ある意味クレンペラーの「絶頂期」に録音されたものなのです。(もちろん、最晩年の録音を評価する多くの人からは石礫が飛んできそうな物言いですが・・・)
ところが、その演奏の雰囲気は随分と異なります。
たとえば、第4番のスタジオ録音は「これほどゴツゴツ感のある第4番も珍しいのではないでしょうか。特に、最終楽章のパッサカリアは、あの音形が聞き手にもはっきりと分かるように、念押しするようにきっちりと提示されています。」と書いたような演奏です。それに対して、ライブ録音の第4番は実に細やかなニュアンスにあふれていて、「優美」とも言えるほどに感情たっぷりに歌い上げています、
もしも、これをブラインドで聞かされて指揮者がクレンペラーだと言い当てられる人はほとんどいないでしょう。
第1番もライブもどちらかと言えば軽めで第4楽章のあの有名なテーマなども実に優美に歌い上げています。作品全体のフォルムが実にかっちりとしていて、ある意味では極めて優等生的な演奏だったスタジオ録音とはずいぶん雰囲気が異なります。
第2番のスタジオ録音も「前半の3楽章がいささか窮屈な感が否めません」と書いたようなキッチリとした演奏になっているのですが、ライブの方は最初からかなりテンションが高めです。そのため、指揮者のコントロールが行き届いていないようでいささか荒っぽい感じの演奏になっています。
ただ、クレンペラーが凄いと思うのは、何をしたのかは分かりませんが、第3楽章あたりからはオケが落ち着いてきて完全に統制がとれてきていることです。惜しむらくは、最終楽章の爆発的に盛り上がっていく部分でリミッターがかかったようになっていて、その凄さが十分に収録され切っていないことです。
ただ、第3番に関しては、演奏のベクトルがとても似通っています。ですから、ミスなくきれいに仕上がっているスタジオ録音の立派さが際だっています。
なるほど、指揮者というものは煮ても焼いても食えない代物のようで、その場その場の雰囲気でくるくると姿を変えます。それが、クレンペラーのような傑物であればなおさらと言うことなのでしょう。
かなりマニアックな聴き方ではありますが、同時期に録音されたスタジオ録音とライブ録音を聞きくべてみるというのは、そう言う指揮者の多面性というものに気づくと言うことでは面白い試みだと思いました。
なお録音に関しては、会場のノイズなどがかなり盛大に入っていて人によっては好き嫌いが分かれると思います。私などはあまり好きな方ではありません。しかし、肝心のオケの音は、この時代のライブ録音としては「出色」と言っていいほどに押し強い部分を上手くすくい取っています。聴き応えは十分です。
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よせられたコメント
2015-08-28:Joshua
- クレンペラーが同じブラームスのピアノ協奏曲、
特に1番を振って残していてくれたら、とこの演奏も思わせてくれました。
基本的には1年前のフィルハーモニア盤と同じ腰の据わった重量級の演奏。
こちらは、ドイツの当時地方オケだったバイエルンが必死に弾いている、吹いている、ように聴こえます。3番トロンボーンの凄まじいこと。終楽章のコーダは巨大なものが襲いかかってくるような印象を受け、身震いしました。
88まで数奇な人生を生き抜いたこの男の音楽はスケールが一回りも二回りも違う。
ほんの5年前ですが、ベルリン放送やウィーン響を振った2番や3番、フランスのオケとは思えない重厚な1番もアップされてますね。
クレンペラー恐るべし。フルヴェンやワルターやトスカニーニを忘れさせてくれることがある数少ない指揮者です。
2015-09-20:Joshua
- バイエルン放送、といえば
同時期に同曲を録音したシューリヒトがいます。
この顔合わせでは、ワグナーの序曲・前奏曲を採り上げていただいています。
バイエルンが創立されたのが1949年で、19世紀末にその前身のあったミュンヘンフィルを考えると同地方でありながら、急成長の歴史があり、初代ヨッフムに依るところが大きいんでしょう。クーベリックが1970年代に引き連れてDvorakイギリスを聴かせてくれたのが、この楽団と私の馴れ初めです。今回聞き返し、やはりブラームスに相応しいこの楽団の音です。冒頭に戻り、ウィーンでブラ2、フランクフルトで1,2番を振っていたシューリヒトの4番がバイエルン。クレンペラーやシューリヒトを指揮者に向かえて音楽のできる幸せな楽団だったのです。
*PS ロンドンにもいいブラームスが響いていました。ドラティの全曲聴かせていただきました。バレー指揮者面目躍如。(Pierre Monteuxに通ずるところ)。鬱陶しさのないそれでいて全声部が克明に語り掛けてくる「朝のブラームス」、と感じ、一気に4曲聞いてしまいました。
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