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ブルックナー:交響曲第4番 変ホ長調「ロマンティック」

マタチッチ指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1954年10月12〜13日、12月11&14日録音



Bruckner:交響曲第4番 変ホ長調 「ロマンティック」

Bruckner:交響曲第4番 変ホ長調 「ロマンティック」

Bruckner:交響曲第4番 変ホ長調 「ロマンティック」

Bruckner:交響曲第4番 変ホ長調 「ロマンティック」


わかりやすさがなにより・・・でしょうか

短調の作品ばかり書いてきたブルックナーがはじめて作曲した長調の作品がこの第4番です(変ホ長調)。この後、第5番(変ロ長調)、第6番(イ長調)、第7番(ホ長調)と長調の作品が続きます。

その中にあっても、この第4番は長調の作品らしい明るい響きと分かりやすい構成のためか、ブルックナー作品の中では早くから親しまれてきました。
「ロマンティック」という表題もそのような人気を後押ししてくれています。

この表題はブルックナー自身がつけたものでありません。弟子たちが作品の解説をブルックナーに求めたときに、ブルックナー自身が語ったことをもとに彼らがつけたものだと言われています。
世間にはこのような表題にむきになって反論する人がいるのですが、(曰く、絶対音楽である交響曲にこのような表題は有害無益、曰く、純粋な音楽の美を語るには無用の長物、などなど・・・)ユング君はけっこう楽しんでいます。それに、この作品の雰囲気に「ロマンティック」と言う表題はなかなか捨てたもんではありません。

それから、ブルックナーというと必ず版と稿に関わる問題がでてきます。この4番についても1874年に作曲されてから、81年に初演されるまでに数え切れないほどの改訂を繰り返しています。そういう詳細にこだわるブルックナーファンは多いのですが、ユング君にはその詳細をおってここに詳述する能力もやる気もありませんので、そういう情報が必要な人は別のサイトを当たってください。(メールで訪ねられても困ります・・・よろしく!)


私のココロは「でもなあ」と呟きます

最晩年のマタチッチに対する評価は日本とヨーロッパでは大変な落差があったようです。日本ではそれこそ神のように崇められていたのに対して、ヨーロッパではどこからもお呼びがかからないような存在になっていました。
真偽のほどはさだかではありませんが、全く指揮をする場が与えられないために、「ただでもいいから振らせてくれ」と頭を下げて頼みまわっていたという話も伝えられています。そして、これもまた真偽のほどは定かではありませんが、N響の事務局はそんなマタチッチの「いくらでもいいから」という願い(?)にこたえて、伝説となった84年の来日時には犯罪的とも言えるほどの低いギャラで招いたという噂も流布しています。

こんな事になってしまった最大の原因は彼の指揮法にあります。
若い頃の写真を見るとしっかりと指揮棒を持っていますが、いつの頃からか彼は指揮棒を持たなくなってしまいました。そして、有名な1984年の来日公演などをみると、オケの前に立って手をヒラヒラさせているだけで、よくもまあ、こんな指揮で演奏ができるものだと感心させられたものです。
ただし、当時この指揮で演奏したN響の団員によると、指揮の曖昧さという点では朝比奈も同じだが、マタチッチの場合はどんな音楽がしたいのかは伝わってきた、と証言しています。裏を返せば、朝比奈の場合は両方ともダメと言うことなので、大阪人ととしては「今畜生!」と思わされますが、反面「結局そう言うことなのね。」と納得してしまう話でもありました。

つまりこういうことです。
マタチッチにしても朝比奈にしても、スキルとしての指揮法に関してはほめられたものではありませんでした。しかし、こんな音楽がしたいという「思い」は余人の追随を許さぬものがありました。そして、そう言う「思い」というものは、オケが指揮者に対して深い尊敬の念を抱いているときは伝わるものですが(聞き取ろうとする・・・かな?)、そうでなければ曖昧きわまる指揮にウンザリさせられるだけとなります。
ですから、上記の証言は、N響はマタチッチに対しては深い尊敬の念を抱いていたが、朝比奈に関しては必ずしもそうではなかったと言うことをはしなくも暴露したものでした。
そして、朝比奈とN響との構図がマタチッチに関しては日本とヨーロッパの間に存在したと言うことです。

今さら言うまでもないことですが、フルトヴェングラーの指揮もとんでもなく曖昧なものでした。
しかし、ウィーンフィルでもベルリンフィルでも、そんな曖昧さゆえに彼にダメ出しをするなどと言うことは考えられませんでした。それどころか、その曖昧きわまる指揮をとおしてフルトヴェングラーが伝えようとする音楽をくみ取ろうとして、彼らは必死の献身を行ったのでした。
しかし、マタチッチの事例は、80年代のヨーロッパではそんな牧歌的な時代はすぎさり、彼ほどの指揮者であっても指揮の曖昧さゆえに「軽蔑」の対象となり、彼が伝えようとする音楽に耳を傾けるオケはなかったと言うことを証言しています。
その指揮者が心の中にどれほど偉大な音楽をかかえていようと、それを伝えるためのスキルを持たなければ指揮の場すら与えられない時代になりつつあったのです。

おそらくこの背景にはCDの登場があったであろうことは容易に推察できます。
アナログの時代には「雰囲気」で勝負できても、デジタルになるとアンサンブルの瑕疵は白日の下にさらけ出されるようになります。事実、アナログ時代の名盤がCDになってみると意外なほどにお粗末だったのでガッカリしたという事例が数多くありました。
CDが主流となる80年代から90年代にかけてオケの性能は飛躍的に向上します。それは、オケの側から見れば、デジタルの時代の要請にこたえた涙ぐましい努力の結果でした。それだけに、指揮の未熟さでアンサンブルに瑕疵が生じるなどと言うことは、オケのメンバーから見れば許しがたいことだったはずです。

しかし、結果として、その様な技術優先によるアンサンブルの向上は音楽にとって「幸せ」だったのでしょうか。
いや、こういう言い方をすると誤解を招くかもしれません。
私は、そう言う技術面に対する献身を否定しているわけではありません。そう言う献身の結果として、私たちは最上のアンサンブルに支えられた精緻きわまる演奏を楽しめるようになりました。しかし、そう言う「成果」を客観的には評価しながらも、心の奥の正直な声が「でもなあ」と呟くのです。

当時全くの無名だったマタチッチを起用してブルックナーの4番を録音しようと思い立ったのはレッグでした。
アンサンブルはこの時代のものとしては二重丸でしょうが、昨今の精緻きわまるブルックナー演奏に慣れた耳にからするとずいぶん緩めに聞こえます。おまけに、使用しているスコアは弟子達による改鼠版なのですから、何とも牧歌的な話です。
しかし、聞こえてくる音楽は勇壮かつ豪快。もちろん、ただの大風呂敷を広げただけの演奏だという醒めた見方もできるでしょうが、聞いていて楽しいことはこの上もありません。
しかし、こういう音楽が生きていける場所が「今」という時代には存在しないのです。疑いもなく。
それが、「でもなあ」と呟かざるをえない私のココロなのです。

この演奏を評価してください。

  1. よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
  2. いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
  3. まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
  4. なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
  5. 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10



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