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ジョージ・セル(George Szell) |スメタナ:「我が祖国」より「ボヘミヤの森と草原」
スメタナ:「我が祖国」より「ボヘミヤの森と草原」
セル指揮 ニューヨークフィル 1951年1月8日録音
Smetana:「我が祖国」より「ボヘミヤの森と草原」
「我が祖国」=「モルダウ」+「その他大勢」・・・?
スメタナの全作品の中では飛び抜けたポピュラリティを持っているだけでなく、クラシック音楽全体の中でも指折りの有名曲だといえます。ただし、その知名度は言うまでもなく第2曲の「モルダウ」に負うところが大きくて、それ以外の作品となると「聞いたことがない」という方も多いのではないでしょうか。
言ってみれば、「我が祖国」=「モルダウ」+「その他大勢」と言う数式が成り立ってしまうのがちょっと悲しい現実と言わざるをえません。でも、全曲を一度じっくりと耳を傾けてもらえれば、モルダウ以外の作品も「その他大勢」と片づけてしまうわけにはいかないことを誰しもが納得していただけると思います。
組曲「我が祖国」は以下の6曲から成り立っています。しかし、「組曲」と言っても、全曲は冒頭にハープで演奏される「高い城」のテーマが何度も繰り返されて、それが緩やかに全体を統一しています。
ですから、この冒頭のテーマをしっかりと耳に刻み込んでおいて、それがどのようにして再現されるのかに耳を傾けてみるのも面白いかもしれません。
第1曲「高い城」
「高い城」とは普通名詞ではなくて「固有名詞」です。(^^;これはチェコの人なら誰しもが知っている「年代記」に登場する「王妃リブシェの予言」というものに登場し、言ってみればチェコの「聖地」とも言うべき場所になっています。ですから、このテーマが全曲を統一する核となっているのも当然と言えば当然だと言えます。
第2曲「モルダウ」
クラシック音楽なんぞに全く興味がない人でもそのメロディは知っていると言うほどの超有名曲です。水源地の小さな水の滴りが大きな流れとなり、やがてその流れは聖地「高い城」の下を流れ去っていくという、極めて分かりやすい構成とその美しいメロディが人気の原因でしょう。
第3曲「シャールカ」
これまたチェコの年代記にある女傑シャールカの物語をテーマにしています。シャールカが盗賊の一味を罠にかけてとらえるまでの顛末をドラマティックに描いているそうです。
第4曲「ボヘミアの森と草原より」
ユング君はこの曲が大好きです。スメタナ自身も当初はこの曲で「我が祖国」の締めにしようと考えていたそうですが、それは十分に納得の出来る話です。牧歌的なメロディを様々にアレンジしながら美しいボヘミアの森と草原を表現したこの作品は、聞きようによっては編み目の粗い情緒だけの音楽のように聞こえなくもありませんが、その美しさには抗しがたい魅力があります。
第5曲「ターボル」
これは歴史上有名な「フス戦争」をテーマにしたもので、「汝ら神の戦士たち」というコラールが素材として用いられています。このコラールはフス派の戦士たちがテーマソングとしたもので、今のチェコ人にとっても涙を禁じ得ない音楽だそうです。(これはあくまでも人からの受け売り。チェコに行ったこともないしチェコ人の友人もいないので真偽のほどは確かめたことはありません。)スメタナはこのコラールを部分的に素材として使いながら、最後にそれらを統合して壮大なクライマックスを作りあげています。
第6曲「ブラニーク」
ブラニークとは、チェコ中央に聳える聖なる山の名前で、この山には「聖ヴァーツラフとその騎士たちが眠り、そして祖国の危機に際して再び立ち上がる」という伝承があるそうです。全体を締めくくるこの作品では前曲のコラールと高い城のテーマが効果的に使われて全体との統一感を保持しています。そして最後に「高い城」のテーマがかえってきて壮大なフィナーレを形作っていくのですが、それがあまりにも「見え見えでクサイ」と思っても、実際に耳にすると感動を禁じ得ないのは、スメタナの職人技のなせる事だと言わざるをえません。
オケがクリーブランドだったらもっと良かったのに
セルはステレオ録音でモルダウは再録音していますが、「ボヘミヤの森と草原」は確かこのモノラル録音しかないのではないでしょうか?個人的には我が祖国の中ではこの「ボヘミヤの森と草原」が一番好きな曲だけに、なおさらこれは貴重です。
ただし、演奏の方についてはいささか残念な出来ではあります。聞いてもらえば分かるように、なとも言えずゴツゴツした雰囲気でボヘミヤの森と草原という言葉からイメージされる伸びやかさが全くありません。さらに、響きも重くて、そこを吹き渡る風もどこかどんよりした感じになっています。
この響きに関しては、録音も含めた再生側の問題が無視できないのであまり簡単にオケに責任を帰するわけにはいかないのですが、しかし、同時代のクリーブランドとの録音ではこのような重さは感じないので、かなりの確立でその責任はニューヨークフィルにあるといっていいでしょう。おそらく合奏の精度が低いために響きが混濁して内部の見通しが悪くなって、それが響きの重さになっているように思えます。
しかし、全体のゴツゴツした雰囲気は同じ日に録音されたモルダウでは感じ取れないので、これはおそらくはセルの解釈によるのでしょう。セルのイメージするボヘミヤの森と草原はかなり「シュヴァルツヴァルト(黒い森)」に近いようです。そう言うもんだと言われればそれまでなのですが、ちょっと残念ではあります。
さらに言えば、オケがクリーブランドだったらもっと良かったのですが、それも少しばかり残念ではあります。
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