クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~




Home|トスカニーニ(Arturo Toscanini)|ベートーベン:交響曲第4番

ベートーベン:交響曲第4番

トスカニーニ指揮 BBC交響楽団 1939年6月1日録音



Beethoven:交響曲第4番「第1楽章」

Beethoven:交響曲第4番「第2楽章」

Beethoven:交響曲第4番「第3楽章」

Beethoven:交響曲第4番「第4楽章」


北方の巨人にはさまれたギリシャの乙女

北方の巨人にはさまれたギリシャの乙女、と形容したのは誰だったでしょうか?(シューマンだったかな?)エロイカと運命という巨大なシンフォニーにはさまれた軽くて小さな交響曲というのがこの作品に対する一般的なイメージでした。

そのためもあって、かつてはあまり日の当たらない作品でした。
そんな事情を一挙に覆してくれたのがカルロス・クライバーでした。言うまでもなく、バイエルン国立歌劇場管弦楽団とのライブ録音です。

最終楽章のテンポ設定には「いくら何でも早すぎる!」という批判があるとは事実ですが、しかしあの演奏は、この交響曲が決して規模の小さな軽い作品などではないことをはっきりと私たちに示してくれました。(ちなみに、クライバーの演奏で聴く限り、優美なギリシャの乙女と言うよりはとんでもないじゃじゃ馬娘です。)

改めてこの作品を見直してみると、エロイカや運命にはない独自の世界を切り開こうとするベートーベンの姿が見えてきます。
それはがっしりとした構築感とは対極にある世界、どこか即興的でロマンティックな趣のある世界です。それは、長い序奏部に顕著ですし、そのあとに続く燦然たる光の世界にも同じ事が言えます。第2楽章で聞こえてくるクラリネットのの憧れに満ちた響き、第3楽章のヘミオラ的なリズムなどまさにロマン的であり即興的です。
そして、こういうベクトルを持った交響曲がこれ一つと言うこともあり、そう言うオンリーワンの魅力の故にか、現在ではなかなかの人気曲になっています。


歌って、歌って。

トスカニーニの録音で最も世間に流通しているのは50年代のNBC交響楽団との演奏です。そして残念なことに、そこで聞くことのできる演奏の大部分は最良の演奏からはほど遠いものです。
それらの録音に共通する問題点は、まず何よりもセカセカとした神経質なテンポとぎくしゃくした造形、そしてカサカサに乾いた響きです。正直に言って、まるで音楽の遺骨を見せつけられているようで、これのどこが20世紀を代表する偉大な指揮者の演奏なんだと首をひねりたくなります。

そして、「所詮トスカニーニはフルヴェンの足元にも及ばない存在であり、彼のフルヴェンに対するナチス呼ばわりの非難も偉大なフルヴェンに対する嫉妬以外の何者でもなかったんだ」、などという誤解が蔓延する原因ともなりました。
これはトスカニーニにとっても不幸な事でしたが、何よりも私たち聞き手にとっても大きな不幸でした。

何故ならば、真に素晴らしいトスカニーニを聞くには50年代ではなくて20年代から30年代の録音を聞くべきだからです。問題の多い50年代の録音だけを聞いてトスカニーニをダメ出しをして、その結果として彼の全盛期の録音を聞かなかったとしたらこれほど聞き手にとって不幸なことはありません。
そして、このベートーベンの演奏を聞いてもらえればその「不幸」の意味は簡単に了解してもらえると思います。

しなやかで強靱、それでいながらどの部分をとっても素晴らしい歌心に満ちた音楽です。50年代のカサカサにひからびた音楽とは別人のような演奏です。
彼がオケに向かって最もよく発した言葉は「歌って、歌って。どの音符も休止符まで歌うつもりで歌って。歌わなければ音楽はゼロだ。」でしたが、その様なトスカニーニの本領が遺憾なく発揮された演奏です。

トスカニーニファンにとっては常識に属する事なのでしょうが、ユング君にとっては「発見」と言っていいほどの感動を持って聞き終えた演奏でした。

この演奏を評価してください。

  1. よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
  2. いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
  3. まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
  4. なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
  5. 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10



81 Rating: 4.4/10 (200 votes cast)

  1. 件名は変更しないでください。
  2. お寄せいただいたご意見や感想は基本的に紹介させていただきますが、管理人の判断で紹介しないときもありますのでご理解ください
名前*
メールアドレス
件名
メッセージ*
サイト内での紹介

 

よせられたコメント

2009-02-15:平林将義





【リスニングルームの更新履歴】

【最近の更新(10件)】



[2025-09-14]

フランク:天使の糧(Franck:Panis Angelicus)
ルネ・レイボヴィッツ指揮 ロンドン新交響楽団 1961年録音(Rene Leibowitz:New Symphony Orchestra Of London Recorded 1961)

[2025-09-12]

ベートーベン:交響曲第3番 変ホ長調 作品55「英雄」(Beethoven:Symphony No.3 in E flat major , Op.55 "Eroica")
ジョルジュ・ジョルジェスク指揮 ブカレスト・ジョルジェ・エネスク・フィルハーモニー管弦楽団 1961年3月録音(George Georgescu:Bucharest George Enescu Philharmonic Orchestra Recorded on March, 1961)

[2025-09-10]

ブラームス:弦楽四重奏曲 第1番 ハ短調(Brahms:String Quartet No.1 in C minor, Op.51 No.1)
アマデウス弦楽四重奏団 1951年録音(Amadeus String Quartet:Recorde in 1951)

[2025-09-08]

フォーレ:夜想曲第2番 ロ長調 作品33-2(Faure:Nocturne No.2 in B major, Op.33 No.2)
(P)エリック・ハイドシェック:1960年10月21~22日録音(Eric Heidsieck:Recorded 0n October 21-22, 1960)

[2025-09-06]

バッハ:小フーガ ト短調 BWV.578(Bach:Fugue in G minor, BWV 578)
(Organ)マリー=クレール・アラン:1959年11月2日~4日録音(Marie-Claire Alain:Recorded November 2-4, 1959)

[2025-09-04]

レスピーギ:ローマの噴水(Respighi:Fontane Di Roma)
ジョン・バルビローリ指揮 ニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団 1939年1月21日録音(John Barbirolli:Philharmonic-Symphony Of New York Recorded on January 21, 1939)

[2025-09-01]

フォーレ:夜想曲第1番 変ホ短調 作品33-1(Faure:Nocturne No.1 in E-flat minor, Op.33 No.1)
(P)エリック・ハイドシェック:1960年10月21~22日録音(Eric Heidsieck:Recorded 0n October 21-22, 1960)

[2025-08-30]

ベートーベン:交響曲第2番 ニ長調 作品36(Beethoven:Symphony No.2 in D major ,Op.36)
ジョルジュ・ジョルジェスク指揮 ブカレスト・ジョルジェ・エネスク・フィルハーモニー管弦楽団 1961年4月20日録音(George Georgescu:Bucharest George Enescu Philharmonic Orchestra Recorded on April 20, 1961)

[2025-08-28]

ラヴェル:舞踏詩「ラ・ヴァルス」(Ravel:La valse)
ルネ・レイボヴィッツ指揮 パリ・コンセール・サンフォニーク協会管弦楽団 1960年録音(Rene Leibowitz:Orcheste de la Societe des Concerts du Conservatoire Recorded on 1960)

[2025-08-26]

フランク:交響詩「呪われた狩人」(Franck:Le Chasseur maudit)
アルトゥール・ロジンスキー指揮 ウィーン国立歌劇場管弦楽団 1954年6月27~7月11日録音(Artur Rodzinski:Wiener Staatsoper Orchester Recorded on June 27-July 11, 1954)