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パブロ・カザルス(Pablo Casals) |エルガー:チェロ協奏曲 ホ短調, Op.85
エルガー:チェロ協奏曲 ホ短調, Op.85
(Cello)パブロ・カザルス:エードリアン・ボールト指揮 BBC交響楽団 1945年10月14日録音
Elgar:Cello Concerto in E minor ,Op.38 [1.Adagio; Moderato]
Elgar:Cello Concerto in E minor ,Op.38 [2.Lento; Allegro molto]
Elgar:Cello Concerto in E minor ,Op.38 [3.Adagio]
Elgar:Cello Concerto in E minor ,Op.38 [4.Allegro]
意外と評価が低い作品なのでしょうか?・・・、不思議です。
レコード芸術という雑誌があります。ユング君は購読しなくなって随分な日が経つのですが、一応クラシック音楽を聴く人間にとっては定番のような雑誌です。その定番の雑誌の定番とも言うべき企画がベストレコードの選出です。20世紀が終わろうかと言うときには、誰もが想像するとおりに20世紀のベストレコードの選出を行っています。その時の企画が一冊の本となって出ているのですが、選出の対象となった300の作品の中にこの協奏曲はノミネートされていません。
エルガーの作品でノミネートされているのは驚くなかれ「威風堂々」だけです。これでは、エルガーはマーチの作曲だったと誤解されても仕方がありません。
チェロによる協奏曲と言うことでは、おそらくドヴォルザークのものと並び立つ最高傑作だと思うのですが、残念ながら無視をされています。
それは同時に、日本におけるエルガー評価の反映なのかもしれません。
それはエルガーに限ったことではなく、同時代のイギリスを代表するディーリアスになるとノミネートすらされていませんから、日本におけるイギリス音楽の不人気ぶりは際だっています。おそらくその一番大きな原因は、にこりともしない晦渋さにあるのでしょうね。
どこかで聞いたエピソードですが、エルガーの作品は退屈だという意見には不満を感じるイギリス人も、ディーリアスになると他国の人間には分かってもらえないだろうなと諦めてしまうそうです。
しかし、あらためてこのエルガーのチェロ協奏曲を聴いてみると、冒頭のチェロのメロディは実に魅力的です。ドヴォルザークならこれに続いてどんどん魅力的な歌を聞かせてサービス満点の作品に仕上げてくれるのですが、エルガーの場合はその後はいつものイギリス風に戻ってしまいます。しかし、ある種の晦渋さと背中合わせになっているそのような渋さが、聞き込むほどに良くなってくるという意味で「大人の音楽」と言えるのかもしれません。
なお、この作品を完成させた翌年に彼を生涯にわたって支え続けてきた妻を亡くすのですが、その打撃はエルガーから創作意欲を奪ってしまいます。その後の15年間で数えるほどの作品しか残していませんから、この協奏曲は実質的にはエルガーの最晩年の作品といえます。
演奏活動を停止する直前の録音
1936年にスペイン内乱が勃発します。
フランコの独裁政権に反発したカザルスは最終的にフランスに亡命し、スペインとの国境に近い町プラドに住むことになりました。南部フランスはドイツの占領こそ受けなかったのですが、反フランコ・反ファシストのカザルスには辛い日々だったようです。
しかし、カザルスの苦悩は戦後も続くことになります。
それは、戦争が終了した後に各国の政府が次々とフランコ政権を承認していったからです。
1945年6月からカザルスは演奏活動を再開するのですが、その様な各国政府の態度に抗議の意を表明するために1945年11月13日パリのサル・プレイエルでの演奏会を最後に演奏活動の停止を宣言することになります。
ここでお聞きいただいている録音は45年の10月に行われたものですから、まさにカザルスがその様な思い切った行動に出る直前の演奏です。
そんな彼がエルガーの作品を選んだのは実に納得のいく話です。
現実的対応という「利口な対応」など出来るはずもない、頑固な男の怒りをたたきつけるにはこれほどふさわしい作品はありません。
この演奏を評価してください。
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