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フランク:交響曲ニ短調

フリッツ・レーマン指揮 バンベルグ交響楽団 1954年2月28日〜3月3日録音




偉大なるマイナー曲

この屈指の名曲を「マイナー曲」と言えばお叱りを受けそうですが、意外ときいていない人が多いのではないでしょうか?まあCDの棚に一枚か二枚程度は並んでいるのでしょうが、それほどに真剣に聞いたことはないと言う人も多いのではないでしょうか?

名曲というハンコはしっかり押されているにもかかわらず何故か人気はないと言う点で、「偉大なマイナー曲」と表現させてもらいました。

理由はいくつか考えられるでしょうが、まず第一に、フランクが交響曲という分野ではこれ一曲しか残さなかったことがあげられるでしょう。
交響曲作家というのは一般的に多作です。ベートーベンの9曲を代表として、少ない方ではブラームスやシューマンの4曲、多い方ではショスタコーヴィッチの15曲というあたりです。マーラー、ブルックナー、ドヴォルザーク、チャイコフスキー、シベリウスなどなど、誰を取り上げてもそれなりにまとまった数の交響曲を残しました。
それだけにたった1曲しか残さなかったフランクの交響曲は、何かの間違いで(^^;、ポット産み落とされたような雰囲気が漂って「あまり重要でない」ような雰囲気が漂ってしまうのがマイナー性を脱却できない一つの理由となっているようです。

ただ、これは彼の人生を振り返ってみると大きな誤解であることは明らかです。吉田秀和氏がどこかで書いていましたが、60歳をこえ、残りの人生が少なくなりつつある10年間に、それこそねらいを定めたように、一つのジャンルに一作ずつ素晴らしい作品を産み落としたのがフランクという人でした。
そして、交響曲という分野においてねらいを定めてたった一つ産み落とされたのがこの交響曲なのです。

何かの片手間でポッと一つだけ作曲されたのではなく、自分の人生の総決算として、まさにねらいを定めたように交響曲という分野でたった一つだけ生み出され作品がこのニ短調のシンフォニーなのです。

さらにマイナー性を脱却できない第二の理由は作品が持つ「暗さ」です。とりわけこの作品の決定盤として君臨してきたフルトヴェングラーの演奏がこの暗さを際だたせた演奏だっただけに、フランクの交響曲は「暗い」というイメージが定着してしまいました。

たしかに、第一楽章の冒頭を聞くと実に「暗い」事は事実です。しかし、聞き進んでいく内に、この作品の本質がそのような暗さにあるのではなく、じつは「暗」から「明」への転換にあることに気づかされます。
そう、辛抱して最後まで聞いてくれればこの作品の素晴らしさを実感してもらえるのに、多くの人は最初の部分だけで辟易して、聞くのをやめてしまうのです。(実はこれってかつてのユング君でした・・・)

最終楽章の燦然と輝く音楽を聴いたとき、このニ短調の交響曲というのはあちこちで言われるような晦渋な作品ではなく、実に分かりやすい作品であることが分かります。そして、いかにドイツ的な仮面をかぶっていても、この作品は本質的にはフランスの音楽であることも了解できるはずです。

フリッツ・レーマン


今となってはほとんど忘れ去られた存在となっているフリッツ・レーマンです。しかし、それは彼の実力に起因するものではなく、まさにこれからと言うところで「無念の死」を遂げてしまったことによります。
フリッツ・レーマンはロッテ・レーマンの弟として1904年にドイツのマンハイムで生まれ、1956年にバッハのマタイ受難曲を演奏しているときに死去しました。本来はかなり幅広いレパートリーを持った指揮者だったのですが、一般的にはバッハやヘンデルの声楽をともなった作品の演奏に定評がありました。そのため、グラモフォンが音楽史分野のカタログを充実させるために「アルヒーフ」レーベルをおこしたときに、その中心となるべき指揮者として彼を登用したほどです。ところが、このアルヒーフが本格的に活動を始めた矢先にわずか51才で劇的な死を迎えてしまうことになります。レーベルの中心的な人物を失ったアルヒーフは少しばかりの混乱の後に、レーマンの後釜に据えたのがリヒターでした。そして、アルヒーフはその後はこのリヒターを中心としてカタログを充実させていくことになりますし、その中で20世紀の録音史に燦然と輝く金字塔を築き上げていくことになります。
歴史に「イフ」はありませんが、もしもレーマンにあと10年の時間があれば、この分野における様相は全く異なったものになっていたはずです。

さて、ここで紹介したのは、その様なレーマンの得意分野である音楽史のカテゴリーではなく、そういうものとはある意味では最も遠い位置にあるバリバリのロマン派シンフォニーです。レーマンは新即物主義を代表する指揮者のように言われるのですが、これを聞く限りでは結構濃いめの仕上がりになっています。そういえば、リヒターも晩年はロマン派の作品にもレパートリーを広げていきましたが、いつもいつも端正で厳格な音楽作りでは疲れてくるのかもしれません。


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