Home|
ヨッフム(Eugen Jochum)|ブラームス:交響曲第4番 ホ短調 作品98
ブラームス:交響曲第4番 ホ短調 作品98
ヨッフム指揮 ベルリンフィル 1953年12月録音
Brahms:交響曲第4番 「第1楽章」
Brahms:交響曲第4番 「第2楽章」
Brahms:交響曲第4番 「第3楽章」
Brahms:交響曲第4番 「第4楽章」
とんでもない「へそ曲がり」の作品
ブラームスはあらゆる分野において保守的な人でした。そのためか、晩年には尊敬を受けながらも「もう時代遅れの人」という評価が一般的だったそうです。
この第4番の交響曲はそういう世評にたいするブラームスの一つの解答だったといえます。
形式的には「時代遅れ」どころか「時代錯誤」ともいうべき古い衣装をまとっています。とりわけ最終楽章に用いられた「パッサカリア」という形式はバッハのころでさえ「時代遅れ」であった形式です。
それは、反論と言うよりは、もう「開き直り」と言うべきものでした。
しかし、それは同時に、ファッションのように形式だけは新しいものを追い求めながら、肝腎の中身は全く空疎な作品ばかりが生み出され、もてはやされることへの痛烈な皮肉でもあったはずです。
この第4番の交響曲は、どの部分を取り上げても見事なまでにロマン派的なシンフォニーとして完成しています。
冒頭の数小節を聞くだけで老境をむかえたブラームスの深いため息が伝わってきます。第2楽章の中間部で突然に光が射し込んでくるような長調への転調は何度聞いても感動的です。そして最終楽章にとりわけ深くにじみ出す諦念の苦さ!!
それでいながら身にまとった衣装(形式)はとことん古めかしいのです。
新しい形式ばかりを追い求めていた当時の音楽家たちはどのような思いでこの作品を聞いたでしょうか?
控えめではあっても納得できない自分への批判に対する、これほどまでに鮮やかな反論はそうあるものではありません。
スタンダードな堂々たる名演
ヨッフムはほとんど同じ時期に、ベルリンフィルとのコンビで1番を録音しています。その演奏に対してユング君はかつてこのようにコメントしました。
「この演奏は、ブラ1という作品の至る所にあらわれる力みかえったところや異常に気合いの入った部分などを徹底的に丸め込んでいます。つまり、普通だったら思いっきり力を入れて見得を切りたくなるような部分は、すべて角を削り取って穏やかに、たおやかに響かせるようにしています。ですから、この作品にある種の英雄的なものを求める人にとっては「なんだこれは!」と怒り出したくなるような演奏になっているのです。」
ということで、ユング君はヨッフムによるこの演奏を「異形の演奏」と断定しました。
ところが、ほとんど同じ時期に録音されたこの4番の方は、実に立派な堂々たる名演に仕上がっています。オケの響きは充実しており、そのプロポーションはどこから眺めても見ても完璧です。
クラシック音楽を長く聴き続けていると、その様な完璧なプロポーションというものに飽き飽きしてきて、どこかに歪みやデフォルメがほどこされているような「畸形的」な演奏ばかりを探すようになったりするものですが、このような演奏をきくと、スタンダードな演奏というのはいいものだとあらためて再認識させられます。
それは、「ローマの休日」や「カサブランカ」なんかをみて、あらためてヘップバーンやバーグマンに惚れ惚れするのと似ています。(もちろん、それらの作品を同時代に体験したほどユング君は年ではありませんが・・・)
モノラル時代のものとしては音質も良好ですから、初めてこの作品に触れる人にとっては相応しい録音だといえます。
この演奏を評価してください。
- よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
- いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
- まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
- なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
- 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10
570 Rating: 6.3/10 (255 votes cast)
よせられたコメント
2022-07-30:村地優
- まるまる一週間かけて、リスニングルームを遡り、最後?の2003年だったかに行き着きました。以前からもかなりDLしていたので、ハードディスクにいっぱいたまりました。これまでは、ほぼほぼ、MP3データベースからDLして、別のサイトでジャケットの画像を取ってきて、iTuneで貼り付け…。定年退職後もパートでほぼ毎日終日働いており、通勤電車でMPとワイヤレスイヤフォンで聴いています。気に入ったら、同じ曲ばかり。オーディオとレコードで下宿の部屋の半分が埋もれていた時代から、隔世の感があります。
リスニングルームの嬉しいのは、3つ。貴兄の貴重なコメント、見た事の無いジャケット、そしてこのブラームス4番のように、何故かMP3データベースには無い曲と出会えることです。はじめは、「これ、検索でけへんのかい」とかも思いましたが、だんだんとこの「出会い探し」にハマってしまいました。それにしても、たくさん。ブラ4は、youtubeで、レヴァインが1楽章のラスト1分くらいのが出ていて、それが甚く気に入っています。あれ、CDにならないかな。書けばキリがありませんが、このサイトに感謝しています。
【最近の更新(10件)】
[2024-11-21]
ショパン:ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調, Op.11(Chopin:Piano Concerto No.1, Op.11)
(P)エドワード・キレニ:ディミトリ・ミトロプーロス指揮 ミネアポリス交響楽団 1941年12月6日録音((P)Edword Kilenyi:(Con)Dimitris Mitropoulos Minneapolis Symphony Orchestra Recorded on December 6, 1941)
[2024-11-19]
ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.77(Brahms:Violin Concerto in D major. Op.77)
(Vn)ジネット・ヌヴー:イサイ・ドヴローウェン指揮 フィルハーモニア管弦楽 1946年録音(Ginette Neveu:(Con)Issay Dobrowen Philharmonia Orchestra Recorded on 1946)
[2024-11-17]
フランク:ヴァイオリンソナタ イ長調(Franck:Sonata for Violin and Piano in A major)
(Vn)ミッシャ・エルマン:(P)ジョセフ・シーガー 1955年録音(Mischa Elman:Joseph Seger Recorded on 1955)
[2024-11-15]
モーツァルト:弦楽四重奏曲第17番「狩」 変ロ長調 K.458(Mozart:String Quartet No.17 in B-flat major, K.458 "Hunt")
パスカル弦楽四重奏団:1952年録音(Pascal String Quartet:Recorded on 1952)
[2024-11-13]
ショパン:「華麗なる大円舞曲」 変ホ長調, Op.18&3つの華麗なるワルツ(第2番~第4番.Op.34(Chopin:Waltzes No.1 In E-Flat, Op.18&Waltzes, Op.34)
(P)ギオマール・ノヴァエス:1953年発行(Guiomar Novaes:Published in 1953)
[2024-11-11]
ドヴォルザーク:ヴァイオリン協奏曲 イ短調, Op.53(Dvorak:Violin Concerto in A minor, Op.53)
(Vn)アイザック・スターン:ディミトリ・ミトロプーロス指揮 ニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団 1951年3月4日録音(Isaac Stern:(Con)Dimitris Mitropoulos The New York Philharmonic Orchestra Recorded on March 4, 1951)
[2024-11-09]
ワーグナー:「神々の黄昏」夜明けとジークフリートの旅立ち&ジークフリートの葬送(Wagner:Dawn And Siegfried's Rhine Journey&Siegfried's Funeral Music From "Die Gotterdammerung")
アルトゥール・ロジンスキー指揮 ロイヤル・フィルハーモニ管弦楽団 1955年4月録音(Artur Rodzinski:Royal Philharmonic Orchestra Recorded on April, 1955)
[2024-11-07]
ベートーベン:ピアノ協奏曲第4番 ト長調 作品58(Beethoven:Piano Concerto No.4, Op.58)
(P)クララ・ハスキル:カルロ・ゼッキ指揮 ロンドン・フィルハーモニック管弦楽団 1947年6月録音(Clara Haskil:(Con)Carlo Zecchi London Philharmonic Orchestra Recorded om June, 1947)
[2024-11-04]
ブラームス:交響曲第3番 ヘ長調, Op.90(Brahms:Symphony No.3 in F major, Op.90)
アルトゥーロ・トスカニーニ指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1952年9月29日&10月1日録音(Arturo Toscanini:The Philharmonia Orchestra Recorded on September 29&October 1, 1952)
[2024-11-01]
ハイドン:弦楽四重奏曲 変ホ長調「冗談」, Op.33, No.2,Hob.3:38(Haydn:String Quartet No.30 in E flat major "Joke", Op.33, No.2, Hob.3:38)
プロ・アルテ弦楽四重奏団:1933年12月11日録音(Pro Arte String Quartet]Recorded on December 11, 1933)