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ベルリオーズ:幻想交響曲 作品14(Berlioz:Symphonie fantastique in C minor, H 48)

ピエール・モントゥー指揮 サンフランシスコ交響楽団 1945年2月27日~28日録音(Pierre Monteux:San Francisco Symphony Orchestra Recorded on February 27-28, 1945)



Berlioz:Symphonie fantastique in C minor, H 48 [1.Reveries - Passions. Largo - Allegro agitato e appassionato assai - Religiosamente]

Berlioz:Symphonie fantastique in C minor, H 48 [2.Un bal. Valse. Allegro non troppo]

Berlioz:Symphonie fantastique in C minor, H 48 [3.Scene aux champs. Adagio]

Berlioz:Symphonie fantastique in C minor, H 48 [4.Marche au supplice. Allegretto non troppo]

Berlioz:Symphonie fantastique in C minor, H 48 [5.Songe dune nuit de sabbat. Larghetto - Allegro]


ベートーベンのすぐ後にこんな交響曲が生まれたとは驚きです。

この作品が大好きでした。
「でした。」などと過去形で書くと今はどうなんだと言われそうですが、もちろん今も大好きです。なかでも、この第2楽章「舞踏会」が大のお気に入りです。

 よく知られているように、創作のきっかけとなったのは、ある有名な女優に対するかなわぬ恋でした。
 相手は、人気絶頂の大女優であり、ベルリオーズは無名の青年音楽家ですから、成就するはずのない恋でした。結果は当然のように失恋で終わり、そしてこの作品が生まれました。

 しかし、凄いのはこの後です。
 時は流れて、立場が逆転します。
 女優は年をとり、昔年の栄光は色あせています。
 反対にベルリオーズは時代を代表する偉大な作曲家となっています。
 ここに至って、漸くにして彼はこの恋を成就させ、結婚をします。

 やはり一流になる人間は違います。ユング君などには想像もできない「しつこさ」です。(^^;

 しかし、この結婚はすぐに破綻を迎えます。理由は簡単です。ベルリオーズは、自分が恋したのは女優その人ではなく、彼女が演じた「主人公」だったことにすぐに気づいてしまったのです。
 恋愛が幻想だとすると、結婚は現実です。そして、現実というものは妥協の積み重ねで成り立つものですが、それは芸術家ベルリオーズには耐えられないことだったでしょう。「芸術」と「妥協」、これほど共存が不可能なものはありません。

 さらに、結婚生活の破綻は精神を疲弊させても、創作の源とはなりがたいもので、この出来事は何の実りももたらしませんでした。
 狂おしい恋愛とその破綻が「幻想交響曲」という実りをもたらしたことと比較すれば、その差はあまりにも大きいと言えます。

 凡人に必要なもは現実ですが、天才に必要なのは幻想なのでしょうか?それとも、現実の中でしか生きられないから凡人であり、幻想の中においても生きていけるから天才ののでしょうか。
 ユング君も、この舞踏会の幻想の中で考え込んでしまいます。

なお、ベルリオーズはこの作品の冒頭と格楽章の頭の部分に長々と自分なりの標題を記しています。参考までに記しておきます。

「感受性に富んだ若い芸術家が、恋の悩みから人生に絶望して服毒自殺を図る。しかし薬の量が足りなかったため死に至らず、重苦しい眠りの中で一連の奇怪な幻想を見る。その中に、恋人は1つの旋律となって現れる…」
第1楽章:夢・情熱

「不安な心理状態にいる若い芸術家は、わけもなく、おぼろな憧れとか苦悩あるいは歓喜の興奮に襲われる。若い芸術家が恋人に逢わない前の不安と憧れである。」

第2楽章:舞踏会

「賑やかな舞踏会のざわめきの中で、若い芸術家はふたたび恋人に巡り会う。」

第3楽章:野の風景

「ある夏の夕べ、若い芸術家は野で交互に牧歌を吹いている2人の羊飼いの笛の音を聞いている。静かな田園風景の中で羊飼いの二重奏を聞いていると、若い芸術家にも心の平和が訪れる。
無限の静寂の中に身を沈めているうちに、再び不安がよぎる。
「もしも、彼女に見捨てれられたら・・・・」
1人のの羊飼いがまた笛を吹く。もう1人は、もはや答えない。
日没。遠雷。孤愁。静寂。」

第4楽章:断頭台への行進

「若い芸術家は夢の中で恋人を殺して死刑を宣告され、断頭台へ引かれていく。その行列に伴う行進曲は、ときに暗くて荒々しいかと思うと、今度は明るく陽気になったりする。激しい発作の後で、行進曲の歩みは陰気さを加え規則的になる。死の恐怖を打ち破る愛の回想ともいうべき”固定観念”が一瞬現れる。」

第5楽章:ワルプルギスの夜の夢

「若い芸術家は魔女の饗宴に参加している幻覚に襲われる。魔女達は様々な恐ろしい化け物を集めて、若い芸術家の埋葬に立ち会っているのだ。奇怪な音、溜め息、ケタケタ笑う声、遠くの呼び声。
”固定観念”の旋律が聞こえてくるが、もはやそれは気品とつつしみを失い、グロテスクな悪魔の旋律に歪められている。地獄の饗宴は最高潮になる。”怒りの日”が鳴り響く。魔女たちの輪舞。そして両者が一緒に奏される・・・・」


オケというのは不思議な存在です

かつて、モントゥとサンフランシスコ交響楽団の50年代の録音を取り上げて以下のようにかいたことがあります。
モントゥーのことをかつて「プロ中のプロ」と書いたことがありました。
キャリアには恵まれず、客演活動が中心だったのですが、どのオケにいってもその指揮のテクニックだけで楽団員を信服させてしまい、「独裁せずに君臨する」と言われました。

そんなモントゥーにとって、唯一、手兵とも言えるオケだったのがサンフランシスコ交響楽団でした。
どんな経緯で、フランスからサンフランシスコに流れていったのかは分かりませんが、1935年から17年間にわたってモントゥーはこのオケの音楽監督をつとめています。そして、40年代から50年代にかけてRCAレーベルからこのコンビで40枚近いレコードをリリースしています。

ただし、この一連の録音を聞いてみると、これまたどういう経緯で、かくも多くの録音活動が行われたのだろう、と首をかしげざるを得ません。
何故ならば、40年代の録音を聞いてみると、やけに元気はいいもののかなり荒い演奏をしているからです。

もっと、はっきりと言えば、かなり下手くそなのです。

かくもへたくそなオケに対して天下のRCAレーベルが継続的に録音活動オファーしたというのは、ひとえにモントゥーの商品価値が高かったということなのでしょう。

モントゥは1935年から1953年までのおよそ20年近い歳月をサンフランシスコ交響楽団とすごします。そして、初期の録音を聞く限りでは、サンフランシスコ交響楽団は本当に田舎のオケで、「下手くそなオケ」であったことは否定できません。

昔は隣接権が50年だったので毎年新しくパブリック・ドメインに仲間入りする音源をフォローするのが精一杯で、初見で「下手くそ」と感じたような録音をあらためて聞き直すような余裕はありませんでした。しかし、隣接権の保護期間が50年から70年に延長されたことで、ようやくにして「過去」に目を向ける余裕が出てきました。

そんなわけで、ここ数日モントゥとサンフランシスコ響との40年代の録音をまとめて聞き為してみました。確かに、「やけに元気はいいもののかなり荒い演奏をしているからです。もっと、はっきりと言えば、かなり下手くそなのです。」という客観的評価が覆ることはありませんでした。しかし、かなり面白く聞くことができたことも申し述べておかなければなりません。

感じたことは以下の2点です。
まずは「やけに元気はいい」演奏という点なのですが、そこには地方の小さな田舎オケにRCAというメジャー・レーベルからの録音のオファーがあったことによる驚きと喜び、そして強い意気込みが溢れた結果だと言うことに気づかざるを得ませんでした。おそらく、彼らにとっては、喜びに満ちた時間であり、己の持てる力を最大限に発揮してモントゥの棒に応えようとしていることがひしひしと伝わってきます。
その姿勢はある意味ではアマチュアのオケが持っている情熱にどこか通ずるものがあります。

アマチュアのオケが情熱を込めて為し得た演奏は至らぬ部分が多々あっても、上手なオケがルーティンワークとしてキッチリと仕上げた演奏をはるかにうわ回る感銘を与えてくれることがあるのです。それとよく似た雰囲気が彼らの40年代の録音にも感じられます。
しかし、それだけではプロのオケとしてはいささか情けないと言うことになってしまいます。
二つめに指摘しておきたいのは、彼らの40年代の録音には指揮者であるモントゥが持つ「色香」のようなものが漂っていることです。
吉田秀和は「彼はまた『より美しい性』からもたっぷり愛され、彼自身も、女性たちやよい食事、よいワイン、そうしてよい音楽を存分に愛する人間に属していた」と書いていました。

そう言えば、ムラヴィンスキーは「アトモスフェア」と言うことを大事にしました。「アトモスフェア」とは日本語に翻訳しにくい言葉なのですが、ムラヴィンスキー的に言えば、取り上げる作品が決まった時点から己の生活をその作品が持つ世界に添うように染め上げてしまうことが大切だと言うことです。
つまりは己の生活をその作品世界に染み込ませ、その世界にオケもひたらせてしまう事こそが大切だと言うのです。

そして、モントゥという人は常に華やかな色香に溢れた人生をおくった人であり、その雰囲気が彼が指揮する全ての音楽に通底しているのです。
もしかしたら、40年代のサンフランシスコ響は下手くそ故にモントゥの棒にしがみつき、そのおかげでモントゥが持つ色香がよくあらわれているような気がするのです。

オケというのは不思議な存在です。

最後に余談ながら、こういうへたくそな地方オケを引き受けたビッグネームがもう一人いましたね、ジョージ・セルです。
セルは、こういうへたくそな地方オケを前にしたときに、真っ先に実行したのはメンバーの3分の2をクビにしてしまうと言う「血の粛清」でした。

しかし、そう言うやり方はモントゥーの気質とは全く合わないものだったようです。
19世紀的素養に恵まれ、何よりも生きることを楽しんだ男にしてみれば、同じ音楽仲間であるオケのメンバーに対して強圧的態度を取るなどと言うことは性に合わなかったのでしょう。
そして、そんな長い熟成期間を経て、漸くにして一人前のオケに育ってきたのが50年代だったようです。

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