Home|
クルト・レーデル(Kurt Redel)|J.S.バッハ:トッカータとフーガ ニ短調, BWV 565
J.S.バッハ:トッカータとフーガ ニ短調, BWV 565
クルト・レーデル指揮:ミュンヘン・プロ・アルテ室内管弦楽団 1961年録音
J.S.Bach:Toccata und Fuge in D minor, BWV 565
この冒頭のメロディを知らないという人はまずいないでしょう。

クラシック音楽などには何の興味もない人でも、この冒頭のメロディを知らないという人はまずいないでしょう。その強烈な下降パッセージからは若きバッハのあふれんばかりの覇気を感じ取ることができます。
また、この作品の特徴として、ひんぱんに速度が変化することがあげられます。それは前半のトッカータの部分でもそうですし、中間のフーガでもその終結部ではめまぐるしく速度が変化します。この変化をどのように処理するかは演奏者に任される部分が多く、まさにオルガニストの腕の見せ所だといえます。
この作品はいつ頃作曲されたかについてはいくつかの説があり未だに確定していません。しかし、ブクステフーデやスウェーリングなどの強い影響から抜け出して、バッハらしい緊密で簡潔な様式へと脱皮をとげた作品であることは間違いありません。さらに、ワイマール時代(1708~1717)のバッハはオルガニストとしての名声が高まり、各地に招待されることも増えて、そのための作品も数多く作られた時期なので、おそらくはそのころの作曲されたものだというのが有力です。
後ろを見ながら前へと進んでいった人
カール・リヒターとクルト・レーデルはともにミュンヘンを活動の拠点として、ほぼ同じ時期に活動してたいことに気づいて不思議な感情を抱きました。
50年代の初め頃、カール・リヒターは無名の若者であり、ミュンヘンの街角で「僕たちと新しい音楽をやりませんか」と言いながらビラをまいては仲間を集めていました。それに対して、クルト・レーデルはすでにフルーティストとしての地位を築いており、1952年にはミュンヘン・プロ・アルテ室内管弦楽団を創設して指揮者としての活動をはじめます。
しかし、両者の音楽感は対照的なものでした。
そして、言うまでもなく後世に大きな影響を与えたのはリヒターの峻厳にして厳格なバッハ演奏でした。そして、その演奏は後の時代にピリオド演奏という潮流が大きな影響力を持つようになっても、そして彼らがリヒターの演奏をどれほど批判しようとも多くの聞き手はリヒターを見捨てることはありませんでした。
それに対して、レーデルの音楽はリヒターと較べれば極めて保守的でした。
もっとも、保守的と言っても当時の巨匠たちが常識としていた重厚長大な演奏と較べれば、それは疑いもなくこの時代における古楽復興の一翼を担うものでした。しかし、おそらく、そう言う50年代の古楽復興のムーブメントの中にレーデルの演奏をおいてみれば、それはもっとも保守的な部類にはいると言わざるを得ないでしょう。
彼らは60年代にエラートを中心として熱心に録音活動を行い多くの賞も取ってその時代においては一定の支持を得ていました。しかし、時代が過ぎるにつれて彼らの存在は遠ざかり、いつしかほとんどの人の記憶からは消え去ってしまいました。現在では、デジタル化されてCDとなっている録音は彼らの業績から見ればごく僅かであり、その多くがすでに廃盤となってしまっているようです。
しかし、この世知辛い世の中において、今一度彼らの演奏を聞くと、そのゆったりとした穏やかな音楽の作り、そして何よりも低声部にそれなりの厚みを持たせたふくよかな響きは、苛立ちささくれだった気持ちを鎮めてくれます。
そして、ひたすら前ばかりを見つめて突き進んできた「今」のあり方に対する一つの疑問を提起してくれるような気がします。
ここで紹介している録音は中古レコード屋さんの300円均一コーナーに投げ込まれていた一枚です。収録されていたのは以下の6曲です。
- パッヘルベル:カノン ニ長調
- パッヘルベル:シャコンヌ ヘ短調
- J.S.バッハ:アリア(管弦楽組曲第3番 ニ長調 BWV1068より)
- J.S.バッハ:トッカータとフーガ ニ短調, BWV 565
- J.S.バッハ:幻想曲とフーガ イ短調, BWV 904
- J.S.バッハ:主よ、人の望みの喜びよ
パッヘルベルはともかくとして、バッハに関して言えば緩い音楽と言われても仕方がないでしょう。しかし、その「緩さ」がなんだか妙に魅力的に思えてくるのです。
バッハのオルガン曲の編曲も色彩の豊かさよりはオルガンが持つ響きを管弦楽に置き換えたようで聞いていて心が落ちつきます。有名なアリアもこうやってふくよかな響きで歌い上げてくれた方が一つの救いとなるような気がするのです。
そう言えば、ポール・ヴァレリーがこんな事を言っていました。
湖に浮かべたボートをこぐように人は後ろ向きに未来へ入っていく。目に映るのは過去の風景ばかり、明日の景色は誰も知らない
レーデルとはまさに後ろを見ながら前へと進んでいった人なのかもしれません。
この演奏を評価してください。
- よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
- いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
- まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
- なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
- 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10
5206 Rating: 4.6/10 (128 votes cast)
よせられたコメント
2023-01-09:コタロー
- バッハの音楽をオーケストラで演奏したものといえば、かのストコフスキーのものが有名ですね。レーデルにこんな演奏があるなんてとても意外です。でもなかなかいけていますね。バッハのほかの演奏もぜひ聴いてみたいものです。
【最近の更新(10件)】
[2026-10-17]

ベートーベン:ヴィンターの歌劇「妨げられた奉納式」より四重唱「子供よ、静かにお休み」の主題による7つの変奏曲 WoO 75(Beethoven:7 Variations on the Quartet Kind, willst du ruhig schlafen from Winter's Das unterbrochene Opferfest, WoO 75)
(P)アルフレッド・ブレンデル 1958年&1960年録音(Alfred Brendel:Recorded on 1958 & 1960)
[2026-10-15]

メンデルスゾーン:ピアノ協奏曲第1番 ト短調, Op.25(Mendelssohn:Piano Concerto No.1 in G minor, Op.25)
(P)モーラ・リンパニー:ラファエル・クーベリック指揮、フィルハーモニア管弦楽団 1952年録音(Moura Lympany:(Con)Rafael Kubelik The Philharmonia Orchestra Recorded on 1952)
[2026-10-13]

ドヴォルザーク:スラブ舞曲 第2集 作品72(Dvorak:Slavonic Dances Op.72)
クルト・ザンデルリング指揮 レニングラード・フィルハーモニー交響楽団 1952年&1954年録音(Kurt Sanderling:Leningrad Philharmonic Orchestra Recorded on, 1952 & 1954)
[2026-10-11]

ヴィオッティ:ヴァイオリン二重奏曲 ト長調(Viotti:Duet for Violin Solo in G minor)
(Vn)ジョコンダ・デ・ヴィート:(Vn)イェフディ・メニューイン 1955年12月4日&6日録音(Gioconda de Vito:(Vn)Yehudi Menuhin Recorded on Decembr 4&6, 1955)
[2026-10-09]

ヴィヴァルディ:ヴァイオリン協奏曲 ハ長調 「喜び」 Op. 8, No. 6, RV 180(Vivald:Violin Concerto in C Major, Op. 8, No. 6, RV 180, "Il piacere")
(Vn)フェリックス・アーヨ:イ・ムジチ合奏団 1961年9月20日~28日録音(Felix Ayo:Musici, I Recorded on September 20-28, 1961)
[2026-10-07]

J.S.バッハ:カンタータ第51番「全地よ、神を向かえて歓呼せよ」,BWV 51(J.S.Bach:Cantata: "Jauchzet Gott in Allen Landen", BWV 51)
(S)エリーザベト・シュヴァルツコップ:ペーター・ゲルホルン指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1950年10月6日録音(Elisabeth Schwarzkopf:(cpn)Peter Gellhorn Philharmonia Orchestra Recorded on October 6, 1950)
[2026-10-05]

J.S.バッハ:管弦楽組曲第4番 ニ長調 BWV1069(J.S.Bach:Orchestral Suite No.4 in D major, BWV 1069)
クルト・レーデル指揮:ミュンヘン・プロ・アルテ室内管弦楽団 1962年2月録音(Kurt Redel:The Pro Arte Chamber Orchstra of Munich Recorded on February, 1962)
[2026-10-02]

ルイス・デ・ミラン:「エル・マエストロ」からのファンタジア、舞曲、そしてロマンセ(Luys Milan:Fantasias, Dances And Romances From El Maestro)
(Lute)ヴァルター・ゲルヴィッヒ:(T)ベルンハルト・ミヒャエリス 1956年11月30日~12月1日録音(Walter Gerwig:(T)Bernhard Michaelis Recorded on Novembar 30~December 1, 1956)
[2026-09-30]

ヴィヴァルデ:オーボエ協奏曲 ハ長調, Rv.447(Vivaldi:Oboe Concerto in C major, RV.447)
レナート・ファッサーノ指揮:(Ob)レナート・ザンフィーニ ローマ合奏団 1958年発行(Renato Fasano:(Ob)Renato Zanfini Virtuosi Di Roma Published in 1958)
[2026-09-28]

マヌエル・ポンセ:南の協奏曲(Manuel Ponce:Concierto del Sur)
(Gt)アンドレス・セゴビア:エンリケ・ホルダ指揮 シンフォニー・オブ・ジ・エア 1958年録音(Andres Segovia:(con)Enrique Jorda the Symphony of the Air Recorded in 1958)