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Home|サヴァリッシュ(Wolfgang Sawallisch)|メンデルスゾーン:交響曲第3番 イ短調 作品56 「スコットランド」

メンデルスゾーン:交響曲第3番 イ短調 作品56 「スコットランド」

メンデルスゾーン:ヴォルフガング・サヴァリッシュ指揮 ニュー・フィルハーモニア管弦楽団 1967年6月録音



Mendelssohn:Symphony No.3 in A minor, "The Scotch" Op. 56 [1.Introduction. Andante con moto - Allegro un poco agitato - Assai animato - Andante come I]

Mendelssohn:Symphony No.3 in A minor, "The Scotch" Op. 56 [2.Scherzo. Vivace non troppo]

Mendelssohn:Symphony No.3 in A minor, "The Scotch" Op. 56 [3.Adagio cantabile]

Mendelssohn:Symphony No.3 in A minor, "The Scotch" Op. 56 [4.Finale guerriero. Allegro vivacissimo ? Allegro maestoso assai]


標題をつけるが好きだったみたいです(^^)

3番には「スコットランド」、4番には「イタリア」と副題がついています。
あまりポピュラーではありませんが、5番には「宗教改革」、2番にも「賛歌」と言う副題がついています。

そして、絶対音楽の象徴みたいに言われるシンフォニーですが、何故か副題がついている方が人気がでます。
もちろん、シンフォニーでなくても、副題がついている方がうんと人気がでます。もっとも、その副題も作曲者自身がつけたものもあれば、あとの時代で別人が勝手につけたものもあります。
中には、人気曲なのに名無しでは可哀想だと思ったのか、全く訳の分からない副題がついているものもあります。

あまりひどいものは次第に使われなくなって消えていくようですが、それなりに的を射ているものは結構通用しています。

そう言えば、すてきなメロディーを耳にしたときに、「この曲なんて言うの?」なんて聞かれることがよくあります。(よくあるわけないよな(^^;、時々あるほどでもないけれど、でも、たまーにこういう状況があることはあります。)
そんなときに知ったかぶりをして、「あーっ、これはね『ロッシーニの弦楽のためのソナタ』第1番から第2楽章ですよ、いい曲でしょう!」等と答えようものなら、せっかくの和んだ空気が一瞬にして硬直していくのが分かります。

ああ、つまらぬ事を言うんじゃなかったと思っても、後の祭りです。
でも、そんなときでも、その作品にしゃれた副題がついていると状況は一変します。

「あーっ、これはねショパンの革命ですよ。祖国を失った悲しみと怒りをピアノにたたきつけたんですね、ふふふっ!」と言えば、実にかっこいいのです。
ところが、全く同じ事を言っているのに、「あーっ、これはねショパンのエチュードから第12番ハ短調、作品番号10の12です、祖国を失った悲しみと怒りをピアノにたたきつけたんですね、ふふふっ!」と答えれば、これは馬鹿でなのです。

クラシック愛好家がこのような現実をいかに理不尽であると怒っても、それは受け入れざるを得ない現実です。
流行歌の世界でも、「ウタダの待望の新作「作品番号12の3変ホ長調!」なんていった日には売れるものも売れなくなります。

もっともっと素敵な標題をみんなでつけましょう(^^)
そして、クラシック音楽にいささかいかがわしい副題がついていても目くじらをたてるのはやめましょう。

なかには、そう言うことは音楽の絶対性を損なうといって「僕は許せない!」と言うピューリタン的禁欲主義者のかたもおられるでしょうが、そう言う方は「クラシック音楽修道院」にでも入って世俗との交流を絶たれればすむ話です。
いや、私たちは逆にどんどんすてきな副題をつけるべきかもしれません。

だって、今流れているこの音楽にしても、メンデルスゾーンの「交響曲第3番イ短調作品番号56」、と言うよりは、メンデルスゾーンの「スコットランド」と言う方がずっと素敵だと思いませんか。
それにしても、メンデルスゾーンは偉い、1番をのぞけば全て副題をつけています。有名なヴァイオリンコンチェルトも今では「メンコン」で通じますから大したもです。(うーん、でもこれが通じるのは一部の人間だけか、それに付け方があまりにも安直だ、チャイコン、ブラコンあたりまでは許せても、ベトコンとなると誤解が生じる。)

ピアノ曲集「無言歌」のネーミングなんかも立派なものです。
「夢」「別れ」「エレジー」あたりは月並みですが、「眠れぬ夜に」「安らぎもなく」、「失われた幸福」と「失われた幻影」に「眠れぬままに」「朝の歌」と来れば、立派なものだと思いませんか。


まさにプロの仕事

サヴァリッシュのメンデルスゾーンと言えば、1967年にニュー・フィルハーモニア管弦楽団と録音した「全集」を想起するのが普通でしょう。
ところが、このメンデルゾーンの各曲の初出年がなかなか確定できませんでした。

しかし、漸くにして1966年に録音された4番と5番が1966年にリリースされ、1967年に録音された3番も1967年にリリースされていることが確認できました。
しかし、3番と同じく1967年6月にまとめて録音された1番と2番の初出年がどうしても分かりません。
日本国内では1968年に全集としてリリースされていることは分かったので、残念ながらギリギリでアウトかなと思っていました。しかし、最近になって、3番と同じく1967年にオランダで発行(Philips SC71AX404)されていることが確認できました。

つまりは、めでたくサヴァリッシュの全集はギリギリでパブリック・ドメインになっていると言うことです。
おそらく、60年代後半におけるサヴァリッシュの録音活動としてはこのメンデルスゾーンの交響曲全集は大きな位置を占めるものですから、それらがパブリック・ドメインとして紹介できるのは幸いなことです。

サヴァリッシュのメンデルスゾーンと言えば1959年にウィーン交響楽団と録音した「イタリア」があります。
このニュー・フィルハーモニア管弦楽団を使っての全集録音は、その時のアプローチとほとんど変わっていないように思われます。さらに言えば、59年録音の特徴だった美しい響きにはさらに磨きがかかっています。

ニュー・フィルハーモニア管弦楽団とは、フィルハーモニア管がウォルター・レッグによって1964年に解散させられた後に、オーケストラ団たちが自主運営組織として再スタートさせたオーケストラです。ですから、実態はフィルハーモニア管とほとんど変わらないはずです。
そして、この新しいスタートを支えたのがクレンペラーだったのですが、クレンペラーが高齢となって引退したあともリッカルド・ムーティやロリン・マゼールなどが支え続けました。そして、1977年には再びフィルハーモニア管弦楽団(The Philharmonia Orchestra)の名称を回復することになります。

そういう事情を考えてみれば、財政的にかなり厳しかったであろう1966年と67年にメンデルスゾーンの交響曲全集の録音という仕事が入ったのはありがたかったことでしょう。

おそらく、オーケストラ側にはここで底力を見せなければ先が見えてこないという思いもあり、さらにはそう言うやる気のあるオーケストラを前にして、的確なコントロールでその能力を十全に発揮させるサヴァリッシュの手腕があいまって、過去のフィルハーモニア管とはひと味違う響きの美しさ生み出しているように思われます。
ただし、その響きは力感を排した柔らかくて透明感のある響きなので、聞き手によっては迫力不足に感じるかもしれません。しかし、ともすればある種の物語性を纏いかねない音楽から一切の物語性を脱ぎ捨てて、おそらくはメンデルスゾーンですら想像しなかったほどのスタイリッシュにしてクリアな音の造形物へと仕上げていく上では、そう言う響きこそが相応しかったのでしょう。

そういえば、この頃のサヴァリッシュの指揮を「外科医のような」と評した人がいました。
さらには、毎年日本を訪れてN響を指揮をしている姿を見て、これで演奏できなければ不思議だと言わしめたほどにクリアな指揮をする人でした。
確かに、それもまたサヴァリッシュのの本質をい当てているのでしょうが、このメンデルスゾーンの録音では響きの美しさに魅せられます。

そう言えば、サヴァリッシュにとってメンデルスゾーンはお気に入りの作曲家で、彼の管弦楽作品の校訂を全て自分で行ったという話を聞いたことがあります。おそらく、5曲の交響曲のスコアはその済みの隅まで知り尽くしていたことでしょう。
そして、その徹底的なスコア・リーディングによって読み取ったものを、的確な指示でオケに伝えて、その結果として響きの美しさを生み出している事は明らかです。

そう言う美しさというのは、全て現実的な細かい作業の精緻な積み重ねの結果であって、決して「やる気」や「根性」「気合い」などによっては実現しないものです。
それは、ごく当たり前のことなのですが、そう言う当たり前のことをあらためて思い知らされたプロの仕事でした。

この演奏を評価してください。

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