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ブラームス:交響曲第2番 ニ長調, 作品73

ラファエル・クーベリック指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1957年3月4日~8日録音



Brahms:Symphony No.2 in D major, Op.73 [1.Allegro non troppo]

Brahms:Symphony No.2 in D major, Op.73 [2.Adagio non troppo]

Brahms:Symphony No.2 in D major, Op.73 [3.Allegretto grazioso (quasi andantino)]

Brahms:Symphony No.2 in D major, Op.73 [4.Allegro con spirito]


ブラームスの「田園交響曲」

ブラームスが最初の交響曲を作曲するのに20年以上も時間を費やしたのは有名な話ですが、それに続く第2番の交響曲はその一年後、実質的には3ヶ月あまりで完成したと言われています。ブラームスにとってベートーベンの影がいかに大きかったかをこれまた物語るエピソードです。

第2番はブラームスの「田園交響曲」と呼ばれることもあります。それは明るいのびやかな雰囲気がベートーベンの6番を思わせるものがあるかです。

ただ、この作品はこれ単独で聞くとあまり違和感を感じないでのですが、同時代の他の作品と聞き比べるとかなり古めかしい装いをまとっています。この10年後にはマーラーが登場して第1番の交響曲を発表することを考えると、ブラームスの古典派回帰の思いが伝わってきます。
オケの編成を見ても昔ながらの二管編成ですから、マーラーとの隔絶ぶりはハッキリしています。
とは言え、最終楽章の圧倒的なフィナーレを聞くと、ちらりと後期ロマン派の顔がのぞいているように思うのは私だけでしょうか。


  1. 第1楽章 Allegro non troppo:冒頭に低弦が奏する音型が全曲を統一する基本動機となっている。静かに消えゆくコーダは「沈みゆく太陽が崇高でしかも真剣な光を投げかける楽しい風景」と表現されることもあります。

  2. 第2楽章 Adagio non troppo - L'istesso tempo,ma grazioso:冒頭の物憂げなチェロの歌がこの楽章を特徴づけています。

  3. 第3楽章 Allegretto grazioso (Quasi andantino) - Presto ma non assai - Tempo I:間奏曲とスケルツォが合体したような構成になっています。

  4. 第4楽章 Allegro con spirito:驀進するコーダに向けて音楽が盛り上がっていきます。もうブラームスを退屈男とは言わせない!と言う雰囲気です。




50年代のウィーンフィルによるブラームスを聴くべき演奏

クーベリックは1956年から1957年にかけてウィーン・フィルとブラームスの交響曲の全曲録音を行っています。
クーベリックにとってこの時期は、チェコからイギリスに亡命し、その後にシカゴ響での不遇の時代を過ごし、再びイギリスに戻ってコヴェント・ガーデン王立歌劇場の音楽監督をつとめていた時期でした。この時期にDeccaとの結びつきが多くなり、ウィーン・フィルとは随分多くの録音を残しています。

しかし、何故かこのブラームスの交響曲の録音はあまり話題になることはありません。何故ならば、多くの人はクーベリックのブラームスと言えばバイエルン放送交響楽団との録音を思い出してしまうからです。
さらに、ブラームスの交響曲という側面から見てみれば、この50年代というのはLPレコードが広く普及していくことで、SP盤の時代にはとんでもない大事業だった全曲録音というものが随分と垣根が低くなりました。ですから、この時代には数多くの大物を起用して各レーベルは積極的に録音を行ったために、そう言う大波の中ではクーベリックという名前はそれほど目立つものではなかったようです。

さらに言えば、クーベリックと言う指揮者は安易な効果を狙うことを潔しとせず、真っ正面から作品と向き合って外連味なく楽曲を構築するタイプです。良く言えば玄人好み、悪く言えば地味と言うことになります。どうしても、カラヤンのような人気を集めるのは向いていませんし、フルトヴェングラーやワルターのようなカリスマ性を発揮する時代は過ぎ去っていますし、さらに言えばセルやライナーのように極限までオケを絞り上げるには好人物にすぎました。

そこへ持ってきて、相手はウィーン・フィルです。
この世界でもっとも性悪なオーケストラは、クーベリックのような芸風にはあまり向いていないように思えます。要は、彼らは隙を見つけては指揮者の言うことを聞かないのです。おそらく、クーベリックは作品本来の姿を求めて丁寧に造形したいと思っているのでしょうが、ウィーンフィルのメンバーは隙あれば好き勝手に己の腕前を誇示しようとします。そして、それを咎めて駄目出しをすることはやはり難しかったのでしょう。
その意味では、彼が手兵のバイエルン放送交響楽団との録音では、オケは実に献身的にクーベリックの思いに応えています。おそらく、クーベリックの棒でブラームスを聴くならばファーストチョイスはやはりバイエルン放送交響楽団との録音でしょう。

しかし、音楽というのは不思議なもので、そのウィーンフィルの好き勝手が思わぬいい味を醸し出していることも事実なのです。ウィーンフィルから見れば、未だ40歳過ぎのクーベリックなどは鼻垂れ小僧に見えたのかもしれません。彼らにとってブラームスは我が町の作曲家であり、そことへの矜恃もあったでしょう。
おかげで、ある意味では50年代のウィーンフィルらしい響きが実現しています。

しかし、そう言う性悪のオケを相手にクーベリックも必死でブラームスの音楽を古典的な形式感の中に描き出そうと頑張っています。
それともう一つ、この時期のウィーンフィルのウィーンフィルらしい響きが、ステレオ録音で残されていることにはも感謝したいと思います。

そう言う意味では、これはクーベリックのブラームスと言うよりは、50年代のウィーンフィルによるブラームスを聴くものだと思った方がいいのかもしれません。

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