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J.S.バッハ:ブランデンブルク協奏曲 第1番 ヘ長調 BWV.1046

クルト・レーデル指揮 ミュンヘン・プロ・アルテ室内管弦楽団 1962年5月録音



Bach:Brandenburg Concerto No.1 in F major, BWV 1046 [1.(Allegro)]

Bach:Brandenburg Concerto No.1 in F major, BWV 1046 [2.Adagio]

Bach:Brandenburg Concerto No.1 in F major, BWV 1046 [3.Allegro]

Bach:Brandenburg Concerto No.1 in F major, BWV 1046 [4.Menuet - Trio - Polonaise]


就職活動?

この第1番だけがいささか盤面の状態が悪くパチパチ・ノイズがかなりのります。まあ、それも味わいのうちとお考えください。(^^;

順調に見えたケーテン宮廷でのバッハでしたが、次第に暗雲が立ちこめてきます。楽団の規模縮小とそれに伴う楽団員のリストラです。

バッハは友人に宛てた書簡の中で、主君であるレオポルド候の新しい妻となったフリーデリカ候妃が「音楽嫌い」のためだと述べていますが、果たしてどうでしょうか?
当時のケーテン宮廷の楽団は小国にしては分不相応な規模であったことは間違いありませんし、小国ゆえに軍備の拡張も迫られていた事を考えると、さすがのレオポルドも自分の趣味に現を抜かしている場合ではなかったと考える方が妥当でしょう。

バッハという人はこういう風の流れを読むには聡い人物ですから、あれこれと次の就職活動に奔走することになります。

今回取り上げたブランデンブルグ協奏曲は、表向きはブランデンブルグ辺境伯からの注文を受けて作曲されたようになっていますが、その様な文脈においてみると、これは明らかに次のステップへの就職活動と捉えられます。
まず何よりも、注文があったのは2年も前のことであり、「何を今さら?」という感じですし、おまけに献呈された6曲は全てケーテン宮廷のために作曲した過去の作品を寄せ集めた事も明らかだからです。
これは、規模の小さな楽団しか持たないブランデンブルグの宮廷では演奏不可能なものばかりであり、逆にケーテン宮廷の事情にあわせたとしか思えないような変則的な楽器編成を持つ作品(第6番)も含まれているからです。

ただし、そういう事情であるからこそ、選りすぐりの作品を6曲選んでワンセットで献呈したということも事実です。


  1. 第1番:大規模な楽器編成で堂々たる楽想と論理的な構成が魅力的です。

  2. 第2番:惑星探査機ボイジャーに人類を代表する音楽としてこの第1楽章が選ばれました。1番とは対照的に独奏楽器が合奏楽器をバックにノビノビと華やかに演奏します。

  3. 第3番:ヴァイオリンとヴィオラ、チェロという弦楽器だけで演奏されますが、それぞれが楽器群を構成してお互いの掛け合いによって音楽が展開させていくという実にユニークな作品。

  4. 第4番:独奏楽器はヴァイオリンとリコーダーで、主役はもちろんヴァイオリン。ですから、ヴァイオリン協奏曲のよう雰囲気を持っている、明るくて華やかな作品です。

  5. 第5番:チェンバロが独奏楽器として活躍するという、当時としては驚天動地の作品。明るく華やかな第1楽章、どこか物悲しい第2楽章、そして美しいメロディが心に残る3楽章と、魅力満載の作品です。

  6. 第6番:ヴァイオリンを欠いた弦楽合奏という実に変則な楽器編成ですが、低音楽器だけで演奏される渋くて、どこかふくよかさがただよう作品です。




どうです。
どれ一つとして同じ音楽はありません。
ヴィヴァルディは山ほど協奏曲を書き、バッハにも多大な影響を及ぼしましたが、彼にはこのような多様性はありません。
まさに、己の持てる技術の粋を結集した曲集であり、就職活動にはこれほど相応しい物はありません。

しかし、現実は厳しく残念ながら辺境伯からはバッハが期待したような反応はかえってきませんでした。バッハにとってはガッカリだったでしょうが、おかげで私たちはこのような素晴らしい作品が散逸することなく享受できるわけです。

その後もバッハは就職活動に力を注ぎ、1723年にはライプツィヒの音楽監督してケーテンを去ることになります。そして、バッハはそのライプツィヒにおいて膨大な教会カンタータや受難曲を生み出して、創作活動の頂点を迎えることになるのです。


厳しいコロナ禍では一つの救いのように聞こえる

40年代の終わり頃から50年代の初め頃に、何人もの若手音楽家が中心となって自主的にオーケストラを組織して、バッハ以前の音楽の復興を志しました。
リヒター、ミュンヒンガー、パウムガルトナー、そしてレーデル等です。もちろん、数え上げればきりがありません。

しかし、そのような古楽復興は戦後になって始まったものではなく、ランドフスカなどに代表されるようにその萌芽はすでに戦争前から始まっていました。そして、そのようなムーブメントは世界中を巻き込む戦争によって中断を余儀なくされました。しかし、そのような萌芽は戦争によって消え去ったわけではないので、戦争が終わると、その傷手が未だ癒えない時期から再びその芽は伸びはじめることになったのです。

そして、そう言うメンバーの中でもっとも成功したのは疑いもなくカール・リヒターでしょう。彼の描き出した峻厳なるバッハ像は、それまでのバッハ演奏の常識を覆すものでした。そして、彼のそのような峻厳なるバッハ像はリヒター一人による成果ではなくて、その音楽の根っこは彼の師でであったギュンター・ラミンから受け継いだものであったことも忘れてはいけません。

芸術における創造的活動というのは確かに一人の天才の出現を求めますが、その天才もまた多くの前人の肩の上にのってこそ成し遂げられるものです。
そして、そう言うリヒターなどと較べると、このレーデルは今となってはもっとも影の薄い存在なのかもしれません。

彼の経歴を見てみると、1952年にミュンヘン・プロ・アルテ室内管弦楽団を組織して指揮活動を積極的に行うようになります。しかし、彼はそれ以前に、基本的にはフルート奏者であり、そしてフルート演奏の教育者でした。おそらく、そう言う経歴の故か、彼のバッハ演奏はリヒターのような強烈な個性を発揮する演奏とは大きく異なった、ある意味では時代の常識に少しばかりのスパイスを混ぜたくらいのものでした。
それ故に、時を経るにつれてその名前も忘れ去られていったのでしょう。

さらに言えば、彼らの後に続いたピリオド演奏のムーブメントが始まると、リヒターでさえも、そのモダン楽器を使った演奏スタイルは時代遅れのものとされていったのですから、レーデルのスタイルの演奏ならばさらにその忘却は加速されました。

しかし、あらためて、レーデルの音楽を今という時代に聞き直してみれば、ある意味では穏やかで常識的な演奏はそれはそれで悪くはないなと言う気にさせられます。とりわけ、低声部を厚めにならしたふくよかな響きは聞くものの心を穏やかにしてくれます。

厳しいばかりがバッハではありません。
おそらく、このような柔和な表情もまたもう一つのバッハの素顔であり、それを否定するのは狭量に過ぎるでしょう。
もちろん、モダン楽器を使用した演奏などは全て「間違い」だと糾弾した一部の原理主義者たちも幸いなことに最近は姿を消したようです。

そうしてみれば、歴史は一つの「環」のようにまた再びもとあったような場所に舞い戻ってきたりするものです。
こうして、レーデルが見せてくれる世界は、今の厳しいコロナ禍に喘ぐ閉塞社会では一つの救いのように聞こえると言えば誉めすぎでしょうか。

なお、個々の作品のソリストに関しては詳しいクレジットはなく、ひとまとまりにして紹介されていました。

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