クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~



AmazonでCDをさがすAmazonでビーチャムのCDをさがす
Home|ビーチャム|ディーリアス:フロリダ組曲

ディーリアス:フロリダ組曲

トマス・ビーチャム指揮:ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団 1956年11月10日,19日,21日~22日&12月14日録音



Delius:Florida Suite [1.Daybreak - Dance]

Delius:Florida Suite [2.By the River]

Delius:Florida Suite [3.Sunset - Near the Plantation]

Delius:Florida Suite [4.At Night]


田園での生活を生涯の憧れと感じるイギリス人の感性にマッチする音楽

イギリスは音楽を旺盛に消費する国でしたが、長きにわたって生産する国ではありませんでした。そんな長き欠落の時代に終止符を打った立役者がエルガーとディーリアスでした。
しかしながら、エルガーへの評価はすでに定まっていますが、ディーリアスに関してはイギリス以外ではいささか微妙です。それは、彼の音楽がいかにもイギリス的であることが理由なのかもしれません。

イギリス人はエルガーの音楽が退屈だと言われればもう少し我慢して聞いてくれれば理解してくれるはずだと説得はしても、ディーリアスが退屈だと言われれば苦笑するしかないと言われたものです。

ところが、そんなイギリス的なディーリアスなのですが、その生涯を眺めてみれば彼はほとんどイギリス以外で活動しているのです。
裕福な商人の息子として生まれたディーリアスは家業を継ぐことを期待されるのですが、そのたびに彼は父親の目を盗んでは仕事をさぼり音楽に没頭します。そして、ついにはアメリはフロリダのプランテーションにおくられるのですが、逆にそこで聞いた黒人音楽が本格的な作曲活動へと向かう情熱を決定的なものにしたのでした。
そして、遂に父親も彼に家業を継がせることを断念し、音楽の道に進むことを容認します。

しかし、その後もディーリアスは活動の拠点をドイツやフランスに据えて、イギリスに腰を落ち着けることはありませんでした。
彼の作品を最初に評価したのはドイツでした。しかし、その音楽はどこまでもイングランドの大地を思わせるような音楽でした。これは考えてみれば実に不思議な話であり、「ドイツの血筋を持ちフランスに居住した人物であるにもかかわらず、『イングランド』という言葉が思い浮かぶ」作曲家だと評されたこともありました。

そして、このイングランド的な音楽が結果としてイギリス人以外にはなかなか受け入れられない原因となっているのですから、不思議と言えば不思議な話です。そして、かんじんのイギリスに於いてこのイングランド的な音楽の価値に初めて気づいたのがビーチャムでした。
そして、その後もバルビローリやサージェントと言うそうそうたるメンバーが彼の音楽を積極的にコンサートで取り上げ、録音も行ってイギリスにおける地位は確固たるものとなりました。

ディーリアスの音楽の特徴を一言で言えば、響きも旋律もどこかふんわりとしてどこか焦点の定まらない雰囲気に包まれていて、有り体に言えばあまり「印象」に残りにくいと言えます。
彼が活躍した時代はバリバリ元気だった頃のバルトークや12音技法を駆使した新ウィーン楽派の音楽なんかが全盛期でしたから、その「印象」の薄さはどうにも心のどこかに引っ掛かる「尖った部分」が欠落した音楽だったとも言えます。
つまりは、ディーリスの音楽と来たら、何とも言えずまったりとした音楽が右から左へ流れていくだけなので、聞いていて気分は悪くないのですが、それは最初から最後まで何事も起こらなかった映画みたいな雰囲気なのです。

しかし、それこそが「イングランド」的なものなのでしょう。
正直言って、若い頃は聞く気もおこらなかったのですが、年を経るにつれてしだいにそう言う音楽にひかれるようになってきている自分に気がつきます。そして、そのまったり感こそが田園での生活を生涯の憧れと感じるイギリス人の感性にマッチするのでしょうし、同時に兼好法師の隠遁生活に憧れる日本人の古い感覚にもあうのかもしれません。

私も、もう少し彼の作品を積極的に聞いてみようかと思います。

フロリダ組曲


羊毛業を営む裕福な商人の家庭に生まれたディーリアスは音楽の道に進みたい自分の思いと、家業を継がせたい父親の思いの狭間の中で青年期を過ごします。そして、何をやらせてもビジネスの世界から逃避する息子に対して父親は遂に彼をフロリダのプランテーションに送り込んでしまいます。
しかし、それはイギリスから遠く離れることで逆に父親の束縛がなくなり、より一層ディーリアスを音楽に没頭させる結果となります。

そんなディーリアスの姿に遂に家業を継がせることを諦めた父親は彼が音楽の道に進むことを認めます。
そんなディーリアスがフロリダ時代に聞いた黒人音楽の影響を受けて書き上げたのがこの「フロリダ組曲」でした。

そして、この作品は1888年にライプティッヒで初演されるのですが、その場にいた聴衆は本人以外ではグリーグとシンディングだけだっとと伝えられています。やはり、金持ちは強い!!
そして、それがディーリアスにとっては出来上がった自作を実際に耳にした最初でした。

作品は以下の4つの楽章からなり、それはフロリダにおける普通の一日の情景を描き出したものとなっています。

  1. 夜明け ? 踊り

  2. 河畔にて

  3. 夕暮れ ? 農場のそばで

  4. 夜に


なお、ディーリアスはこの作品をその後も何度も改訂するのですが、その改訂版が広く世に知られたのはビーチャムが演奏会で取り上げたからです。
その時にはすでにディーリアスはすでにこの世を去っていてそれを聞くことはできなかったのですが、これもまた二人の強い結びつきをあらわしたエポックだったと言えます。


唯一、ディーリアスと一体化できた指揮者

「イギリスの生んだ最後の偉大な変人」と呼ばれたビーチャムがいなければ、おそらくディーリアスという作曲家は存在しなかったでしょう。
かつて、ロベルト・カヤヌスをシベリウス演奏の「原点(origin)」と書いたことがあるのですが、ビーチャムとディーリアスの関係はそれ以上のものがあります。

ディーリアスの音楽を一番最初に見いだしたのはイギリスではなくてドイツでした。しかし、イギリスにおいて彼の音楽を広く知らしめた功績はビーチャムにこそ帰せられます。彼がディーリアスの音楽に初めて接したのは1907年のことですが、それにすっかり魅了されたビーチャムはその翌年から彼の作品を頻繁に取り上げます。
そして、ディーリアス畢生の大作とも言うべき「人生のミサ」を初めて全曲演奏したのもビーチャムであり、1909年のことでした。

おそらく、この頃から両者は良好な関係を築いていくのですが、おそらくその根っこにはどちらも金持ちの息子という共通点があったことも大きく関わっていたのかもしれません。やがて、ビーチャムは己の音楽感からして不十分だと思う点があれば、ディーリアスの作品を勝手に編曲しはじめます。
いわゆる「ビーチャム版」と呼ばれているのですが、そう言うビーチャムの行為にディーリアスは一切の文句をつけなかったのです。かといって、そう言う行為にディーリアスが無頓着だったのではなくて、逆に他の作曲家よりも自作に手の入れられることを嫌っていたというのですから、この両者の信頼関係の深さは並々ならぬものだったようなのです。

ですから、このビーチャムが最晩年にまとめてステレオ録音した一連の演奏について、何らかの評価を下すことは不可能ですし、おそらく誤りであろうと言うべきでしょう。
それはカヤヌスがシベリウスのオリジンであった以上に、この演奏こそがあらゆるディーリアス演奏の基準点になっているからです。そして、その事をディーリアスもまた決して否定しないでしょう。
ディーリアスの音楽には外面的な視点が存在しない。自らの存在の奥底で彼の音楽に彼の音楽を感じるか、または何も感じないか、このどちらかしかない。ビーチャム氏の指揮する場合を除き、彼の作品の超一流の演奏に出会うことが滅多にないのは、一部にはこうした理由もあると思われる

まさに最高の讃辞ですが、まさにここで述べられている「ディーリアスの音楽には外面的な視点が存在しない。自らの存在の奥底で彼の音楽に彼の音楽を感じるか、または何も感じないか、このどちらかしかない」と言うことこそが演奏する方にとっても聞く方にとってももっとも大きな課題となるのでしょう。
そして、そのようなディーリアスに完全に一体となれたのは、おそらくビーチャム以外には存在しなかったと言い切ってもいいでしょう。
まさに彼こそはあらゆる意味において「最後の偉大な変人」だったのです。

Youtubeチャンネル登録

古い録音が中心ですがYoutubeでもアップしていますので、是非チャンネル登録してください。

関連記事(一部広告含む)

この演奏を評価してください。

  1. よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
  2. いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
  3. まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
  4. なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
  5. 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10



4752 Rating: 5.0/10 (4 votes cast)

  1. 件名は変更しないでください。
  2. お寄せいただいたご意見や感想は基本的に紹介させていただきますが、管理人の判断で紹介しないときもありますのでご理解ください
名前*
メールアドレス
件名
メッセージ*
サイト内での紹介

 

よせられたコメント

2021-10-08:コタロー





【リスニングルームの更新履歴】

【最近の更新(10件)】



[2021-10-16]

ヘンデル:合奏協奏曲, Op.6 第6番ト短調, HWV 324
アレクサンダー・シュナイダー指揮 アレクサンダー・シュナイダー室内管弦楽団 1966年1月録音

[2021-10-15]

グラナドス:ゴイェスカス
アタウルフォ・アルヘンタ指揮 スペイン国立交響楽団 (S)コンスエロ・ルビオ (Ms)アナ・マリア・イリアルテ (T)ヒネス・トラノ (Br)マヌエル・アウセンシ マドリード・シンガーズ

[2021-10-14]

J.S.バッハ:音楽の捧げもの, BWV 1079(B面)
クルト・レーデル指揮:ミュンヘン・プロ・アルテ室内管弦楽団 (Fl)クルト・レーデル (Vn)ヴォルフガング・.マルシュナー (Cello)ヴィルヘルム.シュネラー (Harpsichord)レナード・ホカンソン 1962年5月録音

[2021-10-13]

J.S.バッハ:音楽の捧げもの, BWV 1079(A面)
クルト・レーデル指揮:ミュンヘン・プロ・アルテ室内管弦楽団 (Fl)クルト・レーデル (Vn)ヴォルフガング・.マルシュナー (Cello)ヴィルヘルム.シュネラー (Harpsichord)レナード・ホカンソン 1962年5月録音

[2021-10-12]

ヴォーン・ウィリアムズ:「すずめばち」(アリストファネス組曲)序曲
サー・ジョン・バルビローリ指揮 ハレ管弦楽団 1953年6月15日~16日録音

[2021-10-11]

ベートーヴェン:交響曲第7番 イ長調, Op.92
オットー・クレンペラー指揮 フィラデルフィア管弦楽団 1962年11月3日録音

[2021-10-10]

ベートーベン:ピアノ・ソナタ第31番 変イ長調 Op.110
(P)フリードリヒ・グルダ 1953年11月26日録音

[2021-10-09]

ヘンデル:合奏協奏曲, Op.6 第5番ニ長調, HWV 323
アレクサンダー・シュナイダー指揮 アレクサンダー・シュナイダー室内管弦楽団 1966年1月録音

[2021-10-08]

コダーイ:「ガランタ舞曲」
フェレンツ・フリッチャイ指揮 RIAS交響楽団 1953年9月14日録音

[2021-10-07]

ディーリアス:フロリダ組曲
トマス・ビーチャム指揮:ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団 1956年11月10日,19日,21日~22日&12月14日録音