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ヤッシャ・ホーレンシュタイン(Jascha Horenstein) |シベリウス:交響曲第2番 ニ長調 Op.43
シベリウス:交響曲第2番 ニ長調 Op.43
ヤッシャ・ホーレンシュタイン指揮 フランス国立放送管弦楽団 1956年11月録音
Sibelius:Symphony No.2 in D major, Op.43 [1.Allegretto]
Sibelius:Symphony No.2 in D major, Op.43 [2.Tempo Andante, Ma Rubato]
Sibelius:Symphony No.2 in D major, Op.43 [3.Vivacissimo]
Sibelius:Symphony No.2 in D major, Op.43 [4.Finale (Allegro Moderato)]
シベリウスの田園交響曲
シベリウスの作品の中ではフィンランディアと並んでもっとも有名な作品です。そして、シベリウスの田園交響曲と呼ばれることもあります。
もちろん、ベートーベンの第6番を念頭に置いた比喩ですが、あちらがウィーン郊外の伸びやかな田園風景だとすれば、こちらは疑いもなく森と湖に囲まれたフィンランドの田園風景です。
さらに、この作品にはフィンランドの解放賛歌としての側面もあります。
重々しい第2楽章と荒々しい第3楽章を受けた最終楽章が壮麗なフィナーレで結ばれるところが、ロシアの圧政に苦しむフィンランド民衆の解放への思いを代弁しているというもので、この解釈はシベリウスの権威と見なされていたカヤヌスが言い出したものだけに広く受け入れられました。
もっとも、シベリウス本人はその様な解釈を否定していたようです。
言うまでもないことですが、この作品の暗から明へというスタイルはベートーベン以降綿々と受け継がれてきた古典的な交響曲の常套手段ですから、シベリウスは自分の作品をフィンランドの解放というような時事的な際物としてではなく、その様な交響曲の系譜に連なるものとして受け取って欲しかったのかもしれません。
しかし、芸術というものは、それが一度生み出されて人々の中に投げ込まれれば、作曲家の思いから離れて人々が求めるような受け入れ方をされることを拒むことはできません。シベリウスの思いがどこにあろうと、カヤヌスを初めとしたフィンランドの人々がこの作品に自らの独立への思いを代弁するものとしてとらえたとしても、それを否定することはできないと思います。
この作品は第1番の初演が大成功で終わるとすぐに着手されたようですが、本格的取り組まれたのはアクセル・カルペラン男爵の尽力で実現したイタリア旅行においてでした。
この作品の中に横溢している牧歌的で伸びやかな雰囲気は、明らかにイタリアの雰囲気が色濃く反映しています。さらに、彼がイタリア滞在中にふれたこの国の文化や歴史もこの作品に多くのインスピレーションを与えたようです。
よく言われるのは第2楽章の第1主題で、ここにはドンファン伝説が影響を与えていると言われています。
しかし、結局はイタリア滞在中にこの作品を完成させることができなかったシベリウスは、フィンランドに帰国したあとも精力的に作曲活動を続けて、イタリア旅行の年となった1901年の末に完成させます。
一度聞けば誰でも分かるように、この作品は極めて少ない要素で作られています。そのため、全体として非常に見通しのよいすっきりとした音楽になっているのですが、それが逆にいささか食い足りなさも感じる原因となっているようです。
その昔、この作品を初めて聞いた私の友人は最終楽章を評して「何だかハリウッドの映画音楽みたい」とのたまいました。先入観のない素人の意見は意外と鋭いものです。
正直言うと、若い頃はこの作品はとても大好きでよく聴いたものですが、最近はすっかりご無沙汰していました。
やはり、食い足りないんですね。皆さんはいかがなものでしょうか。
薄いオレンジのベールを纏ったような「暖色系」のシベリウス
トマス・イェンセン指揮によるデンマーク国立放送交響楽団の録音を紹介したときに「暖色系のシベリウス」だと書いたのですが、このホーレンシュタインによるシベリウスは、もしかしたらそれ以上に「暖色系」かもしれません。
それは、例えてみれば、薄いオレンジのベールを纏ったようにすら聞こえるのです。ただし、この響きはホーレンシュタインの持ち味であることも事実です。
言うまでもないことですが、シベリウスと言えば北国のイメージであり、その音楽は基本的に「寒色系」の色彩で描かれるのが普通です。しかし、このホーレンシュタインによるシベリウスにはそう言う寒々とした雰囲気は全く存在しません。その意味では、これはかなりの「異演」といえるのかもしれません。
しかし、そのスケールは雄大です。そして、不思議なことに、どこかマーラーを思わせるような雰囲気も漂います。
マーラーとシベリウスというのはある意味では同時代の作曲家のですが、そのポリシーは真逆です。
マーラーは「交響曲は世界のようでなくてはならない」語ったのに対して、ベリウスは「交響曲には内的な動機を結びつける深遠な論理が大切」だと語りました。しかし、世界の全てを表現しようとするときに必要な響きでもって、シベリウス的な論理を語って見せようとしたのがこのホーレンシュタインの演奏のような気がするのです。
そして、おそらくはあまり言うことをきちんと聞きそうにもない(コンセルヴァトワールのオケよりはましかもしれないですが)フランス国立放送管を手際よく手綱を引き締めるものの、オケが嫌気がさすほどには強制せずに所期の目的を達しているように聞こえます。おそらく、締めすぎないことによって、この暖色系の響きが実現しているのでしょう。
客演指揮一本で生きてきたホーレンシュタインは、作品を手際よくまとめるものの、ここぞというところで踏み込む込むことを躊躇う傾向がある人でした。
しかし、このシベリウスでは、ホーレンシュタインにしては、なかなかに面白い、一歩踏み込んだ解釈を打ち出しているように思えます。
賛否は分かれるでしょうが、たくさんのシベ2を聞いてきた人にとっては面白く聞ける演奏だと言えるのではないでしょうか。
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よせられたコメント 2021-07-29:コタロー フランスのオーケストラによるシベリウスとは珍しいですね。ホーレンシュタインはマーラー指揮者として名前を聞いたことがありましたが、彼の指揮ぶりを聴くのはこれが初めてです。実際に聴いてみると、どっしりとした演奏ながら、ライヴ録音ならではの熱気をはらんでいて、それがなかなかに魅力的なのです。録音も良好で、これは隠れた名演奏だと感じました。アップありがとうございました。
余談ですが、写真にみるホーレンシュタインは、酸いも甘いも噛み分けたいい男ですね(笑)。
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