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メンデルスゾーン:「夏の夜の夢」 作品21&61 より(抜粋)

ジョージ・セル指揮 クリーヴランド管弦楽団 1967年1月13日録音



Mendelssohn:A Midsummer Night's Dream, Op.21 [1.Overture Op.21]

Mendelssohn:A Midsummer Night's Dream, Op.61 [2.Scherzo, Op.61 No.1]

Mendelssohn:A Midsummer Night's Dream, Op.61 [3.Nocturne, Op.61 No.7]

Mendelssohn:A Midsummer Night's Dream, Op.61 [4.Intermezzo, Op.61 No.5]

Mendelssohn:A Midsummer Night's Dream, Op.61 [5.Wedding March, Op.61 No.9]


メンデルスゾーンの天才性が発露した作品

まず初めにどうでもいいことですが、この作品は長く「真夏の夜の夢」と訳されてきました。それは、シェークスピアの原題の「A Midsummer Night's Dream」の「Midsummer」を「真夏」と翻訳したためです。
しかし、これは明らかに誤訳で、この戯曲における「Midsummer」とは、「midsummer day(夏至)」を指し示していることは明らかです。この日は「夏のクリスマス」とも呼ばれる聖ヨハネ祭が祝われる日であり、それは同時に、キリスト教が広くヨーロッパを覆うようになる以前の太陽神の時代の祭事が色濃く反映している行事です。ですから、この聖ヨハネ祭の前夜には妖精や魔女,死霊や生霊などが乱舞すると信じられていました。シェークスピアの「A Midsummer Night's Dream」もこのような伝説を背景として成りたっている戯曲ですから、この「Midsummer」は明らかに「夏至」と解すべきです。
そのため、最近は「真夏の夜の夢」ではなくて、「夏の夜の夢」とされることが多くなってきました。
まあ、どうでもいいような話ですが・・・。

さらに、どうでもいいような話をもう一つすると、この作品は組曲「夏の夜の夢」として、序曲に続けて「スケルツォ」「間奏曲」「夜想曲」「結婚行進曲」が演奏されるのが一般的ですが、実はこの序曲と、それに続く4曲はもともとは別の作品です。

まず、序曲の方が先に作曲されました。これまた、元曲はピアノ連弾用の作品で、家族で演奏を楽しむために作曲されました。しかし、作品のできばえがあまりにもすばらしかったので、すぐにオーケストラ用に編曲され、今ではこの管弦楽用のバージョンが広く世間に流布しています。
これが、「夏の夜の夢 序曲 ホ長調 作品21」です。
驚くべきは、この時メンデルスゾーンはわずか17歳だったことです。
天才と言えばモーツァルトが持ち出されますが、彼の子ども時代の作品はやはり子どものものです。たとえば、交響曲の分野で大きな飛躍を示したK183とK201を作曲したのは、彼もまた1773年の17歳の時なのです。
しかし、楽器の音色を効果的に用いる(クラリネットを使ったロバのいななきが特に有名)独創性と、それらを緊密に結びつけて妖精の世界を描き出していく完成度の高さは、17歳のモーツァルトを上回っているかもしれません。
ただ、モーツァルトはその後、とんでもなく遠いところまで歩いていってしまいましたが・・・。

ついで、この序曲を聴いたプロイセンの王様(ヴィルヘルム4世)が、「これはすばらしい!!序曲だけではもったいないから続くも書いてみよ!」と言うことになって、およそ20年後に「劇付随音楽 夏の夜の夢 作品61」が作曲されます。
このヴィルヘルム4世は中世的な王権にあこがれていた時代錯誤の王様だったようですが、これはバイエルンのルートヴィヒ2世も同じで、こういう時代錯誤的な金持ちでもいないと芸術は栄えないようです。(^^;
ただし、ヴィルヘルム4世の方は「狂王」と呼ばれるほどの「器の大きさ」はなかったので、音楽史に名をとどめるのはこれくらいで終わったようです。

作品61とナンバリングされた劇付随音楽は以下の12曲でできていました。

1. スケルツォ
2. 情景(メロドラマ)と妖精の行進
3. 歌と合唱「舌先裂けたまだら蛇」(ソプラノ、メゾソプラノ独唱と女声合唱が加わる)
4. 情景(メロドラマ)
5. 間奏曲
6. 情景(メロドラマ)
7. 夜想曲
8. 情景(メロドラマ)
9. 結婚行進曲 - ハ長調、ロンド形式
10. 情景(メロドラマ)と葬送行進曲
11. ベルガマスク舞曲
12. 情景(メロドラマ)と終曲(ソプラノ、メゾソプラノ独唱と女声合唱が加わる)

ただし、先にも述べたように、現在では、作品21の序曲と、劇付随音楽から「スケルツォ」「間奏曲」「夜想曲」「結婚行進曲」の4曲がセレクトされて、組曲「夏の夜の夢」として演奏されることが一般的となっています。


セルの楽器として完成したクリーブランド管の真価が発揮されている

1967年にセル&クリーブランド管でこのメンデルスゾーンの2作品を録音して残してくれたのは有り難いことでした。実は、67年の録音ではリリースは68年で隣接権がぎりぎりアウトかと勝手に思っていたのですが、詳しくチェックしてみると両方ともに67年のうちにリリースされていて、まさにギリギリセーフでパブリック・ドメインとなっていました。

まずは、「夏の夜の夢」の方ですが、こちらは57年に録音されたコンセルトヘボウ管との録音があります。個人的に言えば、この作品に相応しいオーケストラの響きはコンセルトヘボウの方だと思います。
クリーブランド管の方はあまりにも精緻に過ぎて、妖精たちが朝の光の中に溶け込んで行くには、その輪郭があまりにも明瞭に過ぎるような気がします。
ただし、それを実現している驚くべき弦楽器群の合奏能力と、はやすぎる思うほどのテンポに着いていく管楽器群の能力には驚嘆させられます。第7番の「Nocturne」のホルン独奏の上手さなどは絶品です。

ですから、音楽にもっとも必要なものは「リズムだ!」と言い切ったセルの美意識が実現されているのは疑いもなくこの67年盤の方です。夏の夜に飛びかう妖精たちの姿は精緻な合奏によって明瞭に浮かび上がり、それが朝の光の中に溶けていく最後のシーンもメンデルスゾーンのスコアに従って十分に叙情的な情景として描き出しています。

ですから、これはそう言うセルの美意識が完璧に具現化したものだと思って味わえば、それはそれでコンセルトヘボウでは不可能だった表現が実現しています。

そして、もう一つ交響曲第4番の「イタリア」の方ですが、これはもう、どこからどう眺めても文句のつけようのない演奏です。
この「イタリア」の録音と言えば真っ先に思い浮かぶのはトスカニーニによる54年盤でしょう。あの録音は、トスカニーニ引退の引き金となった歴史的事件(1954年4月4日)のわずか1ヶ月ほど前の演奏なのですが、その驚くべき集中力によって構成された世界は数多の追随を許さないものでした。
そして、おそらくそのトスカニーニの精緻さに迫れる唯一録音がこのセルの67年盤でしょう。
とくに、セルが目指した理想のオーケストラとしてのクリーブランド管が完成したこの時期には、まさにセルはこの楽器を自由自在に操っています。基本的には早めのテンポで精緻な合奏を実現しているのですが、それはひたすら機械的に縦のラインを揃えているだけでなく、時々フッとテンポをゆるがしたりする事によってこの作品が本質的に持っている「翳り」のようなものも見事に表現しています。

そして、最後のサルタレロの複雑なリズムも快速テンポで見事に決めています。
まさにセル&クリーブランド管に脱帽です。

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