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ブラームス:交響曲第2番 ニ長調, 作品73

ジョン・バルビローリ指揮 ニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団 1940年3月27日録音



Brahms:Symphony No.2 in D major, Op.73 [1.Allegro non troppo]

Brahms:Symphony No.2 in D major, Op.73 [2.Adagio non troppo]

Brahms:Symphony No.2 in D major, Op.73 [3.Allegretto grazioso (quasi andantino)]

Brahms:Symphony No.2 in D major, Op.73 [4.Allegro con spirito]


ブラームスの「田園交響曲」

ブラームスが最初の交響曲を作曲するのに20年以上も時間を費やしたのは有名な話ですが、それに続く第2番の交響曲はその一年後、実質的には3ヶ月あまりで完成したと言われています。ブラームスにとってベートーベンの影がいかに大きかったかをこれまた物語るエピソードです。

第2番はブラームスの「田園交響曲」と呼ばれることもあります。それは明るいのびやかな雰囲気がベートーベンの6番を思わせるものがあるかです。

ただ、この作品はこれ単独で聞くとあまり違和感を感じないでのですが、同時代の他の作品と聞き比べるとかなり古めかしい装いをまとっています。この10年後にはマーラーが登場して第1番の交響曲を発表することを考えると、ブラームスの古典派回帰の思いが伝わってきます。
オケの編成を見ても昔ながらの二管編成ですから、マーラーとの隔絶ぶりはハッキリしています。
とは言え、最終楽章の圧倒的なフィナーレを聞くと、ちらりと後期ロマン派の顔がのぞいているように思うのは私だけでしょうか。


  1. 第1楽章 Allegro non troppo:冒頭に低弦が奏する音型が全曲を統一する基本動機となっている。静かに消えゆくコーダは「沈みゆく太陽が崇高でしかも真剣な光を投げかける楽しい風景」と表現されることもあります。

  2. 第2楽章 Adagio non troppo - L'istesso tempo,ma grazioso:冒頭の物憂げなチェロの歌がこの楽章を特徴づけています。

  3. 第3楽章 Allegretto grazioso (Quasi andantino) - Presto ma non assai - Tempo I:間奏曲とスケルツォが合体したような構成になっています。

  4. 第4楽章 Allegro con spirito:驀進するコーダに向けて音楽が盛り上がっていきます。もうブラームスを退屈男とは言わせない!と言う雰囲気です。




これ一種の文体模写でしょうか

60年代の後半にウィーン・フィルと録音したブラームスの交響曲と較べてみると、これははもう別人かと思うほどの縦割りのブラームスです。そして、それは同時にトスカニーニによるブラームスかと思うようなスタイルです。
バルビローリはニューヨーク・フィルの首席指揮者に抜擢されてからは、常に前任者のトスカニーニと比較されて酷評され続けました。

確かに、当時のアメリカはトスカニーニ流の即物的な演奏が主流であり、あのワルターでさえその風潮にあわせて自分の芸風を変えたほどです。ただし、それはそれで、ワルターの新しい側面が引き出されたことも事実なので、それを安易な迎合と見るのは誤りでしょう。
しかし、バルビローリは基本的に音楽を美しく横に流していく人です。それ故にバルビローリへの風当たりは強かったようです。

と言うことで、これはワルターがやったような芸風の変化かとも思ったのですが、この時代に録音したものをまとめて聞いてみると、シベリウスの交響曲のようにトスカニーニとは全く違う己のスタイルを貫いた録音も数多くあります。
それ故に、これは安易な迎合とは考えられません。そこで、フッと頭をよぎったのが「パスティーシュ」という言葉でした。

この「パスティーシュ」と言うのは文学の世界で使われる用語なのですが、日本語では「文体模写」などと翻訳されることが多いようです。
「文体模写」とは何かというと、過去の有名な作家などの文体をそっくりその真似をして、その作家へのオマージュかパロディかは脇におくとして、新しい文学作品を生み出す手法です。日本では清水義範が有名で、彼は古事記から始まってあらゆる作品の文体、例えば製品の取扱説明書のようなものに至るまで文体を模写して多くの作品を生み出しました。

ただし、こう書くといかにも「パクリ」みたいに聞こえるのですが、実際はそれほど簡単ではありません。
まずは、模写をするためにはその文体の特徴を完璧に理解する必要がありますし、その理解した文体をもとに自分なりのオリジナリティを出さなければいけません。

そう考えると、こういうニューヨーク・フィル時代のトスカニーニ流の演奏というのはバルビローリによるトスカニーニの「パスティーシュ」と言った方がいいのかもしれません。
ただし、それがオマージュだったのかパロディだったのかは聞く人の価値観によって変わってくるでしょう。

そう気づいて聞き直してみると、思わずニヤリとしたくなる演奏です。

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