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シューベルト:交響曲 第4番 ハ短調 D417「悲劇的」

ジョン・バルビローリ指揮 ニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団 1939年1月21日録音



Schubert:Symphony No.4 in C minor, D.417 "Tragic" [1.Adagio molto - Allegro vivace]

Schubert:Symphony No.4 in C minor, D.417 "Tragic" [2.Andante]

Schubert:Symphony No.4 in C minor, D.417 "Tragic" [3.Menuetto. Allegro vivace - Trio]

Schubert:Symphony No.4 in C minor, D.417 "Tragic" [4.Allegro]


第2番と較べればより室内楽的であり凝縮する意志が感じられる

シューベルト:交響曲 第4番 ハ短調 D417「悲劇的」

この「悲劇的」というタイトルからは、ベートーベンのようなドラマティックな音楽を指向したシューベルトの意気込みが感じられます。しかしながら、一つの素材によって音楽全体関連尽くようとしたいとは感じられるのですが、当然の事ながら、それだけではベートーベン的な展開は起こらないことは言うまでもありません。
しかしながら、そう言う異とはこの作品に刻み込まれていることは事実であり、そこには今までの交響曲にはない情念があふれ出していることは聞き手にもしっかりと伝わってきます。


  1. 第1楽章: Adagio molto - allegro vivace
    今までとよく似た序奏部の出だしですが、そこでは後年のシューベルトを特徴づける半音階的な進行がはっきりと表れています。そして、その序奏部の特徴をそのまま引き継いでソナタ形式が展開されていきます。

  2. 第2楽章: Andante
    やわらかい表情のテーマと、第1楽章の雰囲気を受け継いだ短調のテーマが強い対比を示す音楽です。

  3. 第3楽章: Menuetto (allegro vivace)
    シューベルトの「歌う人」としての長所が発揮された音楽であり、そこに微妙な陰影を与える転調の技が駆使されています。

  4. 第4楽章: Allegro
    この楽章の主題も第1楽章の主題と関連性をもち、そこにはベートーベンのように一つの素材から音楽全体を構成しようとする意図が感じ取れます。
    ただし、そこからはベートーベンのようなドラマティックな展開は起こらないのは残念というべきなのか、仕方のないことだと言うべきなのかは難しいところです。



初期シンフォニーの概要


シューベルトの音楽家としての出発点はコンヴィクト(寄宿制神学校)の学生オーケストラでした。彼は、そのオーケストラで最初は雑用係として、次いで第2ヴァイオリン奏者として、最後は指揮者を兼ねるコンサートマスターとして活動しました。

この中で最も重要だったのは「雑用係」としての仕事だったようで、彼は毎日のようにオーケストラで演奏するパート譜を筆写していたようです。

当時の多様な音楽家の作品を書き写すことは、この多感な少年に多くのものを与えたことは疑いがありません。

ですから、コンヴィクト(寄宿制神学校)を卒業した後に完成させた「D.82」のニ長調交響曲はハイドンやモーツァルト、ベートーベンから学んだものがつぎ込まれていて、十分に完成度の高い作品になっています。そして、その作品はコンヴィクト(寄宿制神学校)からの訣別として、そこのオーケストラで初演された可能性が示唆されていますが詳しいことは分かりません。

彼は、その後、兵役を逃れるために師範学校に進み、やがて自立の道を探るために補助教員として働きはじめます。
しかし、この仕事は教えることが苦手なシューベルトにとっては負担が大きく、何よりも作曲に最も適した午前の時間を奪われることが彼に苦痛を与えました。
その様な中でも、「D.125」の「交響曲第2番 変ロ長調」と「D.200」の「交響曲第3番 ニ長調」が生み出されます。

ただし、これらの作品は、すでにコンヴィクト(寄宿制神学校)の学生オーケストラとの関係は途切れていたので、おそらくは、シューベルトの身近な演奏団体を前提として作曲された作品だと思われます。
この身近な演奏団体というのは、シューベルト家の弦楽四重奏の練習から発展していった素人楽団だと考えられているのですが、果たしてこの二つの交響曲を演奏できるだけの規模があったのかは疑問視されています。

第2番の変ロ調交響曲についてはもしかしたらコンヴィクトの学生オーケストラで、第3番のニ長調交響曲はシューベルトと関係のあったウィーンのアマチュアオーケストラで演奏された可能性が指摘されているのですが、確たる事は分かっていません。

両方とも、公式に公開の場で初演されたのはシューベルトの死から半世紀ほどたった19世紀中葉です。
作品的には、モーツァルトやベートーベンを模倣しながらも、そこにシューベルトらしい独自性を盛り込もうと試行錯誤している様子がうかがえます。

そして、この二つの交響曲に続いて、その翌年(1816年)にも、対のように二つのシンフォニーが生み出されます。
この対のように生み出された4番と5番の交響曲は、身内のための作品と言う点ではその前の二つの交響曲と同じなのですが、次第にプロの作曲家として自立していこうとするシューベルトの意気込みのようなものも感じ取れる作品になってきています。

第4番には「悲劇的」というタイトルが付けられているのですが、これはシューベルト自身が付けたものです。
しかし、この作品を書いたとき、シューベルトはいまだ19歳の青年でしたから、それほど深く受け取る必要はないでしょう。
おそらく、シューベルト自身はベートーベンのような劇的な音楽を目指したものと思われ、実際、最終楽章では、彼の初期シンフォニーの中では飛び抜けたドラマ性が感じられます。

しかし、作品全体としては、シューベルトらしいと言えば叱られるでしょうが、歌謡性が前面に出た音楽になっています。
また、第5番の交響曲では、以前のものと比べるとよりシンプルでまとまりのよい作品になっていることに気づかされます。

もちろん、形式が交響曲であっても、それはベートーベンの業績を引き継ぐような作品でないことは明らかです。
しかし、それでも次第次第に作曲家としての腕を上げつつあることをはっきりと感じ取れる作品となっています。

シューベルトの初期シンフォニーを続けて聞いていくというのはそれほど楽しい経験とはいえないのですが、それでもこうやって時系列にそって聞いていくと、少しずつステップアップしていく若者の気概がはっきりと感じとることが出来ます。
この二つの作品を完成させた頃に、シューベルトはイヤでイヤで仕方なかった教員生活に見切りをつけて、プロの作曲家を目指してのフリーター生活に(もう少しエレガントに表現すれば「ボヘミアン生活」)に突入していきます。

そして、これに続く第6番の交響曲は、シューベルト自身が「大交響曲ハ長調」のタイトルを付け、私的な素人楽団による演奏だけでなく公開の場での演奏も行われたと言うことから、プロの作曲家をめざすシューベルトの意気込みが伝わってくる作品となっています。
また、この交響曲は当時のウィーンを席巻したロッシーニの影響を自分なりに吸収して創作されたという意味でも、さらなる技量の高まりを感じさせる作品となっています。

その意味では、対のように作曲された二つのセット、2番と3番、4番と5番の交響曲、さらには教員の仕事を投げ捨てて夢を本格的に追いかけ始めた頃に作曲された第6番の交響曲には、夢を追い続けたシューベルトの青春の色々な意味においてその苦闘が刻み込まれた作品だったといえます。


甘さを含んだ「哀愁」

バルビローリにとってこのニューヨーク時代はあまりよい思い出ではなかっただろうなと言うことを、この録音を聞いていてしみじみと思い知らされました。
何故ならば、これほどまでに素晴らしいシューベルトの第4番は聞いたことがないからです。

己の作り出す音楽が評価に値しないものであり、それ故にあれこれと批判されるのならばそれはそれで面白くはないでしょうが納得はいきます。しかし、自分なりに自信もあり、そしてオーケストラのメンバーや聴衆からも好意的に受け入れられているのにも関わらず、多くの評論家から不当な評価を受けて貶められれば、それは我慢できなくなって当然です。
つまりは、何が彼らの気に障ったのは分かりませんが、何かにつけてそれまでニューヨーク・フィルを率いてきたトスカニーニを引き合いに出しては粗探しを行い、さらにはそのトスカニーニが新しく率いることになったNBC交響楽団と比較しては駄目出しを行うのです。

要するに最初からバルビローリを否定することを結論として設定して、それに見合う「事実」だけを拾い出してきては攻撃を繰り返したのです。
率直に言って、このシューベルトの初期の交響曲をこれほどしみじみと聞き入ったことは初めてです。こういう初期の交響曲というものは、そのほとんどが全集を作るときに仕方がないので収録するという域を出ないものがほとんどです。しかし、このバルビローリの演奏はシューベルトが目指した古典的な佇まいを大切にしながら、尚かつシューベルトの本能とも言うべき「歌謡性」を引き出し、さらに、その二つを見事なまでに融合させています。

「悲劇的」というタイトルはシューベルト自身が後につけたタイトルですが、それはシューベルトの歌謡性から言ってそれほど相応しいタイトルとは思えません。確かに、この作品の持つ古典性に着目してその部分を強調すれば「悲劇的」な雰囲気になるのかもしれません。
しかし、この作品の魅力はシューベルトの歌謡性が古典的な佇まいの中に溶け込んでいることです。それは「悲劇的」と言うよりは何処か甘さを含んだ「哀愁」を感じさせるものであって、そういう作品の真価をこのバルビローリの録音であらためて気づかされました。

しかし、それは明らかにトスカニーニの音楽とは方向性が異なるものであったことは間違いありません。
しかし、その偉大なマエストロと方向性が違うからと言って、見るべきものも聞くべきものもシャット・アウトして、ただ「違うから」と言って否定するのは愚かの極みです。

ただ、救いだと思ったのは、そう言うバルビローリの新しい音楽をニューヨークの多くの聴衆は支持していたことです。
どうやら、アメリカの音楽評論家というのはその習性として最初から結論ありきで音楽を語るという愚かさが一部には根強く存在しているようです。(例えば、シカゴ響時代のクーベリックへの批判など・・・)

それから、同日に録音された「5つのドイツ舞曲」は演奏される機会のとても少ない作品です。1813年頃にシューベルトが数多く書いた短い管弦楽曲の一つで、このすぐ後に歌曲「糸をつむぐグレートヒェン」や二つの交響曲(2番&3番)などを書き上げています。
私も聞くのは初めてだったのですが、この時期のシューベルトらしい歌謡性が見事に表現されていて、そこにもどこか甘やかな哀愁が漂っています。

そして、最後にもう一つ言及しておきたいのは、この30年代のColumbia録音の素晴らしさです。
おそらく、これをブラインドで聞かされて音源がSP録音であることに気づく人は少ないでしょう。確かに、SP録音なので高域には限界があり(おそらく8000Hzくらいでしょうか)、些か寸詰まりの雰囲気は否定できませ。
しかし、音楽的に一番美味しい部分はしっかりとすくい上げられています。この時代の艶のあるニューヨーク・フィルの艶のある響きや豊かな質感、そして十分すぎるほどの解像度を保持しています。

音場感最優先でひたすら薄味の一部の最新録音よりもはるかに音楽的な響きを聞くことができます。

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