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Home|カッチェン(Julius Katchen)|リスト:ピアノ協奏曲第1番 変ホ長調 S.124

リスト:ピアノ協奏曲第1番 変ホ長調 S.124

(P)ジュリアス・カッチェン:アタウルフォ・アルヘンタ指揮 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団 1957年1月3日~4日録音



Liszt:Piano Concerto No.1 in E flat major S.124 [1.Allegro maestoso - Tempo giusto]

Liszt:Piano Concerto No.1 in E flat major S.124 [2.Quasi adagio - Allegretto vivace - Allegro animato]

Liszt:Piano Concerto No.1 in E flat major S.124 [3.Allegro vivace]

Liszt:Piano Concerto No.1 in E flat major S.124 [4.Allgro marziale animato]


循環形式によるソナタ形式を初めて完全に実現させた作品

「ピアノのパガニーニ」を目指したリストなので、ピアノの独奏曲は数多く残していますが、協奏曲となると完成した形で残されているのはわずか2曲です。これを少ないと見るか、それともこんなものと見るかは難しいところですが、作品の認知度という点で言えばかなり落ちることは事実です。
例えば、ショパンやブラームスもピアノ協奏曲は2曲しか残していませんが認知度は抜群です。
シューマンは1曲しか残しませんでしたが、認知度ではリストの協奏曲を少し上回る雰囲気です。

しかし、実際に聞いてみると、これがなかなかに面白い音楽なのです。

たとえば、ハンスリックが「トライアングル協奏曲」と冷笑した第3楽章は、そう言われても仕方がないほどにトライアングルの響きが突出しているのですが、音響的な面白さは確かにあります。
また、バルトークが「循環形式によるソナタ形式を初めて完全に実現させた作品」と評価したように、決してピアノの名人芸ををひけらかすだけの音楽でもありません。
そう言われてみれば、冒頭の音型があちこちに姿を現すような雰囲気があるので、ある種のまとまりの良さを感じさせますし、4つの楽章が切れ目無しに演奏されるので、ピアノ独奏を伴った交響詩のようにも聞こえます。

そして、最終楽章の怒濤のクライマックスは、やはり「ピアノのパガニーニ」を目指したリストの真骨頂です。
聞いて面白いと言うことでは、決して同時代のロマン派のコンチェルト較べても劣っているわけではありません。


  1. 第1楽章:Allegro maestoso

  2. 第2楽章:Quasi Adagio

  3. 第3楽章:Allegretto vivace. Allegro animato

  4. 第4楽章:Allegro marziale animato




ピアノという鑿を使って、その中に埋まっているはずの音楽を掘り出す

カッチェンには42年の歳月しか許されなかったのですが、その短い活動期間を考える残された録音の数は少なくありません。その背景には「知的ブルドーザー」」と言われたほどのパワフルな活動と、Deccaのピア部門門を結果としては一人で背負わざるを得なかったという事情もあったのでしょう。
あまりにも短すぎた人生だったのですが、その短い時間の中で並のピアニストの何倍もの活動を成し遂げたとも言えます。

そして、その卓越したテクニックを考えれば、ここで紹介しているリストの作品などはもっと多く取り上げいてもいいかと思うのですが、私が知る限りでは以下の作品しか録音していないようです。

  1. リスト:ピアノ協奏曲第1番 変ホ長調 S.124

  2. リスト:ピアノ協奏曲第2番イ長調 S.125

  3. リスト:ハンガリー民謡旋律に基づく幻想曲, S123

  4. リスト:メフィスト・ワルツ第1番 {村の居酒屋での踊り}

  5. リスト:「詩的で宗教的な調べ」より第7番「葬送」

  6. リスト:ハンガリー狂詩曲第12番


おそらく1957年に録音したコンチェルトはレーベル側からの要望も強かったともうのですが、それ以外の作品は全て1955年以前の若い時代に録音したものです。そして、57年にコンチェルトを2曲録音してからは亡くなるまでリストの作品は録音していないようです。

よく知られているように彼はアメリカ出身のピアニストなのですが、若くしてアメリカにおける音楽風土に嫌気がさして活動の拠点をパリに移してそこで永住することになりました。ですから、音楽教育はアメリカで受けながら、それをもとにヨーロッパで活躍したという異色の経歴を持ったピアニストです。

確かに、彼の録音をまとめて聞き直してみると、アメリカの音楽風土が彼には絶えがたいものであったことが少しずつ見えてきます。
彼が20代のころのアメリカはホロヴィッツに代表される、人間離れした技巧を披露して拍手喝采を浴びることが求められる時代でした。ただし、ホロヴィッツやルービンシュタインはそう言うショーマンシップに溢れながらも、それがただのアトラクションにとどまらない領域にまで突き抜けていたことでした。
しかし、彼らの後を追った若手のピアニストたちは、つまりはカッチェンと同じよう時期にアメリカで教育を受けた若手のピアニストたちはホロヴィッツを追い続けていったのですが、結局彼らの多くはアトラクションとしての音楽の壁を打ち破ることが出来ませんでした。それは今も続く弊害で、確かにコンサートで聞いているときは凄いとも思い興奮もするのですが、盛大なブラボーの後にコンサートホールを後にして最初の角を曲がるころには、何を聞いたのか定かでなくなっている類の演奏です。

それはカッチェンにとっては許し難いことだったはずです。
彼は初めての作品に取り組むときには一切ピアノには向かわず、ひたすら譜面と取り組みました。そして、その譜面と徹底的に向き合うことで自らの頭の中で確固たる音楽が出来上がってから初めてピアノの前に座るという人でした。
彼にとってピアノの演奏とは、ピアノという鑿を使って、その中に埋まっているはずの音楽を彫り出すという「仏師」のような行為だったのかもしれません。

ですから、彼が演奏するリストが、ただただ超絶技巧を誇示するだけの音楽になるはずがありません。
それは小品にしてもコンチェルトにしても同様で、おそらくはリストという音楽の中に息づいている叙情性を彫り出すことにのみ興味があったことが、この一連の録音を聞けばよく分かります。そして、リストが活躍した時代には多くのピアニストが自らの技巧を誇示するための作品を数多く作曲したのですが、それらのほぼ全ては記憶の彼方に消え去っています。

つまりは、このカッチェンによる演奏は、そう言う数多くの超絶技巧を誇示する音楽の中で、何故にリストの作品だけが生き残ってきたのかという秘密を解き明かしてくれているのです。
そして、その秘密を味わうには、極めて明晰に演奏されているかのように見えながら、すみずみまで考え抜かれた結果としての微妙なニュアンスが散りばめられていることを聞き取る努力が聞き手には求められるのでしょう。

この演奏を評価してください。

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  2. いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
  3. まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
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