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ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲 作品43

(P)アルトゥール・ルービンシュタイン:フリッツ・ライナー指揮 シカゴ交響楽団 1956年1月16日録音



Rachmaninov:Rhapsody on a Theme of Paganini, Op.43


Andante cantabileだけはとても有名です

この作品は「パガニーニの主題による狂詩曲」となっていますが、実質的には疑いもなくピアノコンチェルトです。
パガニーニのヴァイオリン曲『24の奇想曲』第24番「主題と変奏」の「主題」をネタにして、ラフマニノフらしいロマンティックな世界を繰り広げています。
とりわけ有名なのが、第18変奏のAndante cantabileです。
きっと、「パガニーニの主題による狂詩曲」なんて言われても全然ピントこない人でも、この部分を聞けばピンと来るはずです。テレビのコマーシャルやドラマのBGM、さらにはフィギアスケートの音楽などに、それこそ擦り切れるほどに使い回されています。

ただ、第18変奏なんて言われても、この作品はかなり自由に変奏されていますし、おまけにかんじんの主題が最初に出てこないという変速技を使っていますので、きっとよほど訓練された人でないとどこが18番目の変奏かは聞き当てられないはずです。
でも、大丈夫です。
あのメロディが出てくれば、誰でも思い当たります。

「パガニーニの主題による狂詩曲」なんて知らないよと言う人も、「あのメロディ」が出てくるまで辛抱強く聞き続けてください。


良いようにとると、二人の巨匠による緊迫したやり取り

ルービンシュタインはハイフェッツと「100万ドルトリオ」を結成していたのは有名な話ですが、常に作品の本質に迫ろうと生真面目に演奏に向かうハイフェッツと、隙さえあれば「遊び」の要素を入れたパフォーマンスを繰り出そうとするルービンシュタインとの関係は常に険悪でした。そして、そんな険悪な二人の間に入ってなだめていたのはチェリストのフォイアマンであり、ピアティゴルスキーだっと言うのもこれまた有名なエピソードです。

そして、そんなハイフェッツが協奏曲を演奏するときに相性が良かったのがフリッツ・ライナーでした。
考えてみればすぐに分かることですが、この二人には音楽に向かう姿勢が同じ方向を向いているのですから、それは当然と言えば当然だったと思います。それだけに、この二人にはもっとたくさんの録音を残して欲しかったと思わざるを得ません。

しかしながら、そう言うことを考えれば、ルービンシュタインとライナーという組み合わせはどう考えてもよろしくありません。3人で構成されるトリオならばチェリストが間に入って調整することも可能でしょうが、協奏曲ともなればソリストと指揮者がガチンコでぶつかって、その間に入り込むことが出来る人などいようはずもありません。

二人はブラームスの1番を録音し、それに続けてラフマニノフの2番とパガニーニの主題による狂詩曲を録音しました。悲劇は、このラフマニノフの2番が好評でよく売れたことです。それに気を良くしたたRCAはそれに続けてラフマニノフの3番をこのコンビで録音を開始します。
悲劇は、このリハーサルで起こりました。

リハーサルはごく普通に第1楽章からスタートしました。しかし、と言うべきか、やはり、と言うべきか、ルービンシュタインは難場にさしかかると大きなミスをしてしまいました。
ライナーはオーケストラを止め、いくつかの指示を与えてからもう一度演奏させました。しかし、ルービンシュタインは同じところに来るとまた同じミスをしてしまいます。
ライナーは、今度は何も言わずもう一度繰り返させたのですが、ルービンシュタインはやはり同じ所でもっと派手にミスをしてしまいました。

ライナーは指揮棒を置いてオーケストラに向かって「ピアニストが練習をするので20分間休憩します。」と言ってしまいました。
それを聞いてルービンシュタインは「あなたのオーケストラはミスをしないのですか?」と言い返しました。
それに対して、ライナーは一言だけ返したそうです。

「しません。」

ルービンシュタインは無言のままステージを去り、リハーサル会場には二度と戻って来なかったそうです。

おそらく、その切っ掛けはすでにラフマニノフの2番と狂詩曲の録音の時から始まっていたことがこの録音を聞けばよく分かります。
とにかく堅実に外連味なく音楽を構築しようとするライナーに対して、ルービンシュタインはかなり自由にピアノを演奏しています。あの有名なメロディにおいても、ライナーは決して情に溺れることなく透明感の高い引き締まった響きで対応して、それはある種の玲瓏さを湛えた音楽を指向しているのですが、ルービンシュタインにとってはそんな事はお構いなしです。

何しろ彼の信条は、「自分のピアノの音はすみからすみまではっきりと聞こえることが必要」と言うものなのであって、そのポリシーをモーツァルトの協奏曲にも適用して発売不可になるほどの演奏をしでかしたこともあるのです。
おそらく、このあたりがライナーにとっては我慢の限界だったのでしょう。
ただし、そんなライナーの思いなどを忖度するようなことがないのがルービンシュタインの偉いところで、自分はご機嫌で気持ちよくピアノを弾きまくっている姿が目に浮かぶようです。そして、それは良いようにとると、二人の巨匠による緊迫したやり取りと言うことになるのですが、確かに聞いてみて面白いことは事実です。

それから、最後に付記しておかなければいけないのは、1956年録音とは思えないほどの極めて優秀な録音だと言うことです。それぞれが好き勝手に演奏しているような緊迫感がただよう中で、これほど見事にオケとピアノのバランスを保ちながら、それぞれの響きの指向するものをワンポイント的な録音でとらえていたというのは驚嘆に値します。
昨今のマルチマイク録音で、録音が終わってから編集でいじり回したのではこの魅力は生まれません。録音という営みに関してはこれ以降の半世紀ほとんど進歩はしなかったようです。

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2020-06-21:原 響平





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