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サン=サーンス:交響詩「死の舞踏」op.40

ルネ・レイボヴィッツ指揮 パリ・コンセール・サンフォニーク協会管弦楽団 1960年録音



Camille Saint-Saens:Danse macabre, symphonic poem in G minor, Op.40


アンリ・カザリスの詩から霊感をえたシーンがきわめてを描写的に描かれている。

サン=サーンスは4つの交響詩を残しているのですが、この「死の舞踏」がその中では最も有名な作品です。
作品は、サン=サーンスがフランスの詩人アンリ・カザリスの詩からインスピレーションを得て作曲されたといわれています。まず最初は歌曲として、その後この交響詩という形でまとめられました。

スコアの冒頭には、サン=サーンスがヒント得たカザリスの詩から数行が引用されています。 引用された部分は以下の通り。

ジグ、ジグ、ジグ、墓石の上
踵で拍子を取りながら
真夜中に死神が奏でるは舞踏の調べ
ジグ、ジグ、ジグ、ヴァイオリンで

冬の風は吹きすさび、夜は深い
菩提樹から漏れる呻き声
青白い骸骨が闇から舞い出で
屍衣を纏いて跳ね回る

ジグ、ジグ、ジグ、体を捩らせ
踊る者どもの骨がかちゃかちゃと擦れ合う音が聞こえよう

静かに! 突然踊りは止み、押しあいへしあい逃げていく
暁を告げる鶏が鳴いたのだ


そして、この交響詩は午前0時の時計の音とともに骸骨が現れて不気味に踊り始める部分から始まって、最後は夜明けを告げる雄鶏の声が響きわたり再び静寂に包まれるまでのシーンきわめてを描写的に描いた作品となっています。


高い分析力と良い意味での「緩さ」が上手くマッチして実に良い雰囲気に仕上がっている

レイボヴィッツの演奏を聞くと、どうしてもマルケヴィッチの演奏が比較の対象として浮かび上がってきます。両者の共通点はともに「作曲家」でもあったと言うことです。
レイボヴィッツは「十二音技法の使徒」と呼ばれるほどに新ウィーン楽派の音楽の普及につとめ、あわせてその技法に関しても多くの著書(「現代音楽への道」「十二音技法とは何か」「シェーンベルクとその楽派」など)を残し、自らもその理論の上に立った作品を多く残しています。
マルケヴィッチもまた、第二次世界大戦開戦までは「恐るべき子供たち」の1人として「現代音楽では最も驚異的な人物」であると評されていました。しかし、結果として振り返ってみれば、同じく「恐るべき子供たち」であったストラヴィンスキーやプロコフィエフと較べてみれば、その差は歴然としています。

つまり、気楽な物言いを許してもらうならば、レイボヴィッツが「指揮活動もする作曲家」であったのに対して、マルケヴィッチの場合は「作曲もしていた指揮者」という捉え方をされるようになったのです。
ただし、両者ともに作品を分析する能力に関しては卓越したものを持っていまし。しかし、その分析したものをオーケストラに明確に伝え、統率する能力に関しては大きな差があったと言わざるをえません。もっとも、指揮者稼業だけで飯を食っている連中の中でもマルケヴィッチと肩を並べられるほどの指揮の能力を持っていた人は殆どいないでしょうから、それは仕方のないことだったのかもしれません。

しかし、マルケヴィッチの場合は自分が納得できる表現に辿りつくまでは容赦なくオーケストラのメンバーを絞り上げるので、どの録音をとっても強い緊張感に満ちた引き締まった姿が呈示されるのですが、時にはそれが行き過ぎて息苦しさを感じてしまう場合もありました。
それと比べると、レイボヴィッツの指揮には良い意味での緩さがありました。おそらくは、本意としてはマルケヴィッチのように追い込みたかったのかもしれませんが、自分にはそこまでの指揮のスキルがないことも十分に承知していたのでしょう。

そして、素言う「緩さ」のようなものが、時にシューマンの交響曲第3番「ライン」の第1楽章ようにとんでもないことになってしまうこともあるのですが、対象が多くの人が聞きなじんだことがあるような「小品」になると、その高い分析力と良い意味での「緩さ」が上手くマッチして実に良い雰囲気に仕上がっていたりします。

調べてみると、レイボヴィッツは「リーダーズ・ダイジェスト」からの依頼で膨大な数の小品を録音しています。
おそらく、レイボヴィッツにとってはそれほど楽しい仕事ではなかったのかもしれませんが、食っていくためには必要な仕事だったのでしょう。あてがわれたオーケストラも「インターナショナル交響楽団」とか「ロンドン音楽祭管弦楽団」「パリ・コンセール・サンフォニーク協会管弦楽団」などと言う「怪しげ」なものばかりです。

おそらく、それらは実在するオーケストラが契約上の関係で名前を出せないための変名である場合もあるのですが、明らかに録音用に臨時編成されたオーケストラも混じっていたようです。
そんなわけで、音楽そのものはレイボヴィッツが本来指向する方よりはどんどん緩くなっていくのですが、聞き手からするとその「緩さ」みたいなものが妙に魅力的に聞こえるのです。

たとえば「パリ・コンセール・サンフォニーク協会管弦楽団」と録音したラヴェルの「ボレロ」などは絶対に聞き物です。シューマンの「ライン」でもそうだったのですが。よくぞこれで「O.K」を出したものだと思うのですが、それが指揮者としてのレイボヴィッツの姿を如実にあらわしているのかもしれません。
しかし、結果として、ほかではぜったに聞けないユニークな「ボレロ」が仕上がっているのですから、聞き手からすればそれを楽しめばいいだけです。

「パリ・コンセール・サンフォニーク協会管弦楽団」とは、おそらく「パリ音楽院管弦楽団」の変名と思われるのですが、そう考えれば実にコンセルヴァトワールのオケらしい演奏です。このオケと若きショルティのバトルは有名なのエピソードですが、もしもこの時の指揮者がマルケヴィッチだったらきっと血を見たことでしょう。(^^;。

また、リストのメフィスト・ワルツ第1番「村の居酒屋での踊り」とか、グノーの「あやつり人形の葬送行進曲」「バレエ音楽」などは、そう言う「緩さ」が「それ行けどんどん」の華やかさに昇華していて聴き応え満点です。
サン=サーンスの「交響詩「死の舞踏」とかオッフェンバックの「「天国と地獄」のように聞き飽きるほどに聞いている音楽にしても実にユニークな表現に仕上がっています。
そして、これがドビュッシーになると、「もう少しオレが言うように明晰に演奏してほしいんだけど、まあ仕方がないかと」いう声が聞こえてきそうなのです。

そんなこんなで、こういう一連の小品の録音はレイボヴィッツという「指揮者」のもう一つの側面を明らかにしてくれているのかもしれません。

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