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ヴィターリ:シャコンヌ

(Vn)ヘンリク・シェリング:(P)チャールズ・ライナー 1959年3月録音



Vitali:Chaconne in G minor


ヴァイオリンを演奏する人にとってはとても有名な作品らしいです

「Vitali(ヴィターリ)」の「シャコンヌ」は、ヴァイオリンを演奏する人にとっては有名な作品らしくて、「シャコンヌ」と言えばバッハかヴィターリと言うほど認知度が高いようです。ただし、「聴き専」の人間にとっては、「シャコンヌ」と言えばバッハの無伴奏しか思い浮かばないのが普通です。

私も、ミルシテインが録音した小品をチェックしていてこの作品に初めて出会いました。
「シャコンヌ」と言うことなので、バッハのあの有名な「シャコンヌ」との違いに興味がひかれたのですが、聞いてみるとまるでロマン派の小品みたいな音楽です。もちろん、バロック時代の音楽にもロマンティックな音楽はたくさんあるのですが、このネットリ感みたいなものはちょっとバロック時代の音楽とは異質です。
あれれ、不思議だなと思ってGoogle先生に聞いてみると、19世紀にフェルディナント・ダーヴィトというヴァイオリニストがヴィターリの作品をヴァイオリンと通奏低音のための作品に編曲したものだと言うことが分かりました。なるほどね、と納得していると、さらにその後の研究で原曲はヴィターリのものではないことが判明したそうで、もしかするとヴィターリの名を借りたダーヴィト自身の作品かもしれないという見方もあることが分かりました。
そういえば、クライスラーも自分の作品を有名作曲家の未発見の作品だと「偽って」発表したことはよく知られていますが、事情は似たようなものだったのかもしれません。

しかし、そんなトリビアは脇に置いておくとしても、実際にこの音楽を耳にしてみれば、なぜに今まで人気が出なかったのかと不思議な思いに駆られるほどの素晴らしさです。一言で言えば、この上もない甘美な悲劇性と言えるのでしょうか。やはりどう聞いてもこれはロマン派の音楽です。でも、この胸にぐっとくるような素晴らしさは間違いなく一級品です。
変に勘ぐると、このすばらしい音楽はヴァイオリンを演奏する人間だけの「秘密」にしておこうという申し合わせでもあったのではないか・・・とすら思ってしまいます。


ロマン派にはある種のダークさが似合うようです

月に一度程度のペースで日本橋を中心として中古レコード店をまわるのが楽しみの一つとなっています。若い頃は、ランチを終えたあとに妻の買い物に同行していたのですが、それは途轍もない「忍耐(^^;」を強いられますし、彼女にしても「落ち着かない」と言うことで、いつの頃からか食事のあとは待ち合わせ時間を決めて「現地解散」するようになりました。
そして、解散した後は、昔はオーディオ・ショップやパソコン関係のお店をまわることが多かったのですが、最近はほとんど中古レコード店巡りです。

面白いなと思うのは、大手のCDショップの大部分は閉店してしまい、オーディオ関連の店も活気がなかったり、もしくは閉店してしまったところが多いのに反して、中古レコード店は逆に数は増えているのです。ただし、その店も多くのお客さんでごった返していると言う雰囲気もないので、中古レコード店というのはそれなりの客数で成り立つ仕組みのようなものがあるのかもしれません。

ただし、私が中古レコード店をまわると言っても、高価な希少盤などにはほとんど興味がありません。精々が1000円前後のあたりを上限として、大部分は数百円程度の中古レコードの中からめぼしいものを探します。ですから、中古レコード店巡りというのは結構な体力勝負と言うことになるのです。
そして、ここで紹介しているシェリングによる「ヴィターリのシャコンヌ」もそう言う体力勝負の中で探し出した一枚でした。

中古レコードというのは買って帰ってからのクリーニングがとても重要です。
傷がついているものは論外ですが、それ以外のパチパチノイズは丁寧にクリーニングを行えば驚くほどに音質は改善されます。何故ならば、そう言うパチパチノイズの原因の大部分は「ホコリ」や「カビ」だからです。そう言う「ホコリ」や「カビ」を丁寧に取り除いてあげることで全くの別物に変身してくれることもあり、このシェリングの一枚もそう言う「お利口な中古レコード盤」の一枚でした。

言うまでもないことですが、この音源は「リヴィング・ステレオ・ザ・リマスタード~コレクターズ・エディション(60枚組)」というボックス盤にも収録されていますから、どうしても中古レコードを探してくるしかないというわけではありませんので、いわゆる「希少盤」の部類には入りません。ですから、数百円というリーズナブル価格で入手できたのですが、デジタル盤とはひと味違う響きが楽しめる一枚でした。

もちろん、デジタル化された音源にも艶やかなシェリングらしい素晴らしい響きは納められているのですが、アナログ盤の方にはそれとは少し雰囲気の違う、どちらかと言えばもう少し「ダークな雰囲気」が漂う響きを振りまいてくれましたす。
もっとも、こんな事を書いたからと言って相手はアナログですから、音の入り口から出口に至る様々な条件、たとえば、プレーヤーの機種から始まって、その設置の仕方、使っているカートリッジの種類と取り付け方、そしてフォノイコの種類等などで音の雰囲気は全く変わってしまいます。そう考えてみれば、アナログ時代のレコード批評というのは随分と曖昧で主観的なものだったろうなと想像されます。

ただし、こうして中古レコードを買い集めてきて気づいてきたのは、アナログには綺麗にクリーニングをしていけば、どこかそう言う「ダーク」な魅力があふれて来るような気がするのです。
当然のことですが、それは極めて主観的な趣味嗜好に関わる話であって、デジタルとアナログのどちらが優れているのか・・・、見たい無益な論争に分け入りたいわけではありません。
しかしながら、時にそう言う「ダーク」な世界に身を浸したくなってアナログレコードに手が伸びることが増えてきたことは、わたしの中におけるひとつの変化であることは事実です。

そして、このシャコンヌのダークな雰囲気をシェリングのヴァイオリンで聞かされれば、やはりこの作品は疑いもなくヴィターリの名を借りたロマン派小品というのが正体だろうなと思わせられます。
この種のダークさふりまく音楽はどこからどう見てもロマン派のものでしょう。

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2019-06-24:ヴィターリ・DE・グッターリ





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