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ポール・パレー(Paul Paray) |ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ(管弦楽曲版)
ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ(管弦楽曲版)
ポール・パレー指揮 デトロイト交響楽団 1962年3月録音
Ravel:Pavane pour une infante defunte
シャブリエの顕著な影響と,貧弱な曲形式
ラヴェルは後にこの作品について次のように述べています。
「悲しいかな!私にはこの曲の持つ至らなさが手に取るように見えてしまう。
シャブリエの顕著な影響と,貧弱な曲形式。
思うに,この不完全かつ冒険心のない曲が成功を収めたのは,演奏家の卓越した曲解釈が大きく寄与していたからではないか。」
ただし、いわゆる人格破綻者の群れとしか思えないような大作曲家の中では、珍しくも「いい人」だったラベルと言う人の特質は割り引いて考える必要があります。しかし、そう言う自己批判力の強さを割り引いたとしても、後のラヴェルのピアノ作品と比べればあまりにもサロン的な作品だとは言えます。
しかし、その「サロン的」な雰囲気と、思わせぶりなタイトルの効用もあって、発表当時も、そして今もなおボレロなどと並んでなかなかの人気を博しているという現実はなかなかに皮肉です。
ラヴェルは単なる語呂合わせで「亡き王女のためのパヴァーヌ」・・・「infante défunte」と付けたらしいのですが、この作品を発表してからは会う人ごとに「この王女とは誰なのか」と言う質問を挨拶代わりのようにぶつけられてすっかり閉口してしまったようです。確かに、この作品の甘く夢見るような雰囲気とこのタイトルは実にピッタリで、誰しもが作曲家はどの様な王女をイメージして今作品を書いたのだろうと思わせずにはおれない魅力を持っています。
デトロイト響と言うアメリカ的なものと、彼の中にあるフランス的なものとが絶妙なバランスで共存している
パレーという人の経歴を調べてみると録音活動の中心がデトロイト響だったために、ともすればアメリカの指揮者と誤解される事が多いようです。
しかし、彼は生まれも育ちもフランスであり、さらには、アメリカで長く活動しながら最後までほとんど英語を話せなかったという(^^;生粋のフランス人です。
ただし、そう言う誤解を招く要素は彼自身の演奏の中にも存在しました。
それは、パレーと言えば真っ先に思い浮かぶシューマンの交響曲における、あの強めのアタックと目を見張るような快速テンポによる攻撃的な音楽づくりです。
あれは、疑いもなく即物主義全盛のアメリカにおける典型的な音楽のスタイルでした。
今から思えば、あれはアメリカという社会に身を添わせていくための、随分と無理をしたスタイルだったのかも知れません。
その証拠に、取り上げる作品がラヴェルやドビュッシーなどのフランスものになると、「これぞ私の音楽」という雰囲気で実に楽しげに振る舞いはじめるからです。
ただし、そうはいってもフランスの指揮者がフランスのオケを指揮したときのように、粋な雰囲気は伝わってくるのだけれど中で何をやっているのか曖昧でよく分からないという音楽にはなっていません。
それはもうきわめて精細極まる音づくりです。
音と映像の違いはあるのですが、最近何かと話題になっている4Kとか8Kとか言われる超精細な世界がこの時代から既に存在していたのかと感心させられるほどです。
しかし、そこにはシューマンのような攻撃的な姿は全くありません。
そう言えば、パレーという人は1962年にデトロイト響の音楽監督を退いてからも元気に客演活動を続けるのですが、残念ながら目立つような録音活動は行っていません。
晩年のパレーはフランスのオケを中心に悠々自適で客演活動を続けたのですが、演奏も録音も冴えないものになっています。
やはり、デトロイト響と言うアメリカ的なものと、彼の中にあるフランス的なものとが絶妙なバランスで共存していてこそ彼の音楽は輝きをはなったのかも知れません。
そう言う意味では、この一連のラヴェルの録音こそはその最上の収穫の一つかも知れません。
なお、この中で「ラ・ヴァルス」に関しては「TAS Super LP List 2017」の中で最優秀録音盤に該当する「BEST OF THE BUNCH」に選ばれています。
選ばれているレコードは初期盤の「Mercury SR 90313」なのですが、そこに収録されている録音は以下の通りです。
ラヴェル:スペイン狂詩曲
ラヴェル:道化師の朝の歌
ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ
ラヴェル:ラ・ヴァルス
イベール:寄港地
確かに、言われてみればきわめて複雑なオーケストレーションが施されているラヴェルの音楽を、まるで超精細なハイヴィジョン画像を見るかの如くにとらえているので聞きごたえは十分です。
そして、そう言う録音の優秀さは、プロコフィエフの「スキタイ組曲」のドラティ盤で感じてしまったような「虚しさ」とも無縁なので何の留保条件をつける必要もありません。
もちろん、録音が優秀なのは「ラ・ヴァルス」だけでなく、それ以外にものもきわめて優秀な録音です。
「亡き王女のためのパヴァーヌ」の冒頭のホルンの響きなどは極上と言っていいでしょう。「道化師の朝の歌」における飛び跳ねるような打楽器の燦めきも見事なものです。
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