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バッハ:ヴァイオリン協奏曲第2番 ホ長調 BWV1042

レナード・バーンスタイン指揮 (Vn)アイザック・スターン ニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団 1966年2月16日録音



Bach:Violin Concerto in E major, BWV 1042 [1.Allegro]

Bach:Violin Concerto in E major, BWV 1042 [2.Adagio]

Bach:Violin Concerto in E major, BWV 1042 [3.Allegro assai]




3曲しか残っていないのが本当に残念です。

バッハはヴァイオリンによる協奏曲を3曲しか残していませんが、残された作品ほどれも素晴らしいものばかりです。(「日曜の朝を、このヴァイオリン協奏曲集と濃いめのブラックコーヒーで過ごす事ほど、贅沢なものはない。」と語った人がいました)
勤勉で多作であったバッハのことを考えれば、一つのジャンルに3曲というのはいかにも少ない数ですがそれには理由があります。

バッハの世俗器楽作品はほとんどケーテン時代に集中しています。
ケーテン宮廷が属していたカルヴァン派は、教会音楽をほとんど重視していなかったことがその原因です。世俗カンタータや平均率クラヴィーア曲集第1巻に代表されるクラヴィーア作品、ヴァイオリンやチェロのための無伴奏作品、ブランデンブルグ協奏曲など、めぼしい世俗作品はこの時期に集中しています。そして、このヴァイオリン協奏曲も例外でなく、3曲ともにケーテン時代の作品です。

ケーテン宮廷の主であるレオポルド侯爵は大変な音楽愛好家であり、自らも巧みにヴィオラ・ダ・ガンバを演奏したと言われています。また、プロイセンの宮廷楽団が政策の変更で解散されたときに、優秀な楽員をごっそりと引き抜いて自らの楽団のレベルを向上させたりもした人物です。
バッハはその様な恵まれた環境と優れた楽団をバックに、次々と意欲的で斬新な作品を書き続けました。

ところが、どういう理由によるのか、大量に作曲されたこれらの作品群はその相当数が失われてしまったのです。現存している作品群を見るとその損失にはため息が出ます。
ヴァイオリン協奏曲も実際はかなりの数が作曲されたようなですが、その大多数が失われてしまったようです。ですから、バッハはこのジャンルの作品を3曲しか書かなかったのではなく、3曲しか残らなかったというのが正確なところです。
もし、それらが失われることなく現在まで引き継がれていたなら、私たちの日曜日の朝はもっと幸福なものになったでしょうから、実に残念の限りです。

バーンスタインとスターンの気質が被さりあって、とんでもなく「大トロ」のバッハになってしまっている


バーンスタインのバッハ録音はとても少ないの驚かされます。
その数少ない中に「マタイ受難曲」という大物もあるのですが、それがまた、大幅にカットされた英語による歌唱というスタイルなので、果たしてそれを「バッハ録音」と言っていいものか躊躇ってしまいます。
それ以外ではヴァイオリンやオーボエのコンチェルトを3曲、そして、グールドとのコンチェルトを1曲だけ残しているだけです。


  1. Concerto No. 1 in D Minor for Harpsichord & Orchestra, BWV 1052(Glenn Gould):57年録音

  2. Concerto No. 2 in E Major for Violin & Orchestra, BWV 1042(Isaac Stern):66年録音

  3. Concerto in C Minor for Oboe, Violin & Strings, BWV 1060(Isaac Stern & Harold Gomberg):66年録音

  4. Concerto in D Minor for 2 Violins & Orchestra, BWV 1043(Yehudi Menuhin & Isaac Stern):76年録音



こうして残された数少ないセッション録音を眺めていると、スターンをソリストとして招いた協奏曲が大部分を占めていることに気付かされます。
穿ちすぎた見方かも知れませんが、そうなってしまった背景には彼が一番最初にバッハを録音したグールドとの57年録音が大きな影響を与えているのではないかと思われます。
何故ならば、その最初の録音でグールドという光と出会うことで、バーンスタインのバッハの驚くほどの「古さ」があからさまになってしまったからです。

ですから、それ以後は、資質的に違和感を感じないスターンとの共演が増えたのではないでしょうか。
ただし、その事が結果として「時代錯誤」としか言いようのないバッハを生み出すことになってしまいました。

私は常日頃、ピリオド演奏による青白い音楽の悪口ばかりを書いているのですが(^^;、それでも、これはさすがに古いと言わざるを得ません。
グールドとのコンチェルトに限って言えば、そのグールドのピアノのおかげでそこまでの「古さ」からは免れているのですが、スターンとの演奏となると、お互いの気質が被さりあって、とんでもなく「大トロ」のバッハになってしまっているのです。

何しろ、スターンという親分さんは、セル&クリーブランド管と組んで録音したモーツァルトでも、「モーツァルトって後期ロマン派か!!?」と突っ込みを入れたくなるほどに濃厚でねちっこいヴァイオリンを聞かせてくれました。
バーンスタインと言えば、直線的でパワフルなニューヨーク時代、濃厚でねちっこいウィーンフィルを中心とした客演の時代と二分されるのですが、こういう録音を聞いていると、彼の本性はこの濃厚でねちっこい方だったのではないかと思ってしまいます。

バッハという音楽家はどこまで行っても対位法の人でした。
何本ものラインが精妙に絡まり合いながら一つの世界を描き出していくのがバッハの音楽です。

ところが、ここではその横に流れていくラインが縦に積み直されています。
この分厚くてボッテリとしたバッハは半世紀前に持っていってもそれほど違和感を感じずに受け入れられることでしょう。

そして、バーンスタインほどの才能がバッハに関してはどうしてこうなってしまったのかは不思議と言うしかありません。
彼ほどの才人であっても相性というものがあるのでしょうか。

そして、70年代以降はほとんどバッハには手を出さなかったのですが、それこそがバーンスタインならでは見識だったのかも知れません。


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