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モーツァルト:クラリネット五重奏曲 イ長調 K.581

(Clarinet)レオポルド・ウラッハ シュトルス四重奏団 1954年録音

Mozart:Clarinet Quintet in A major, K.581 [1.Allegro]

Mozart:Clarinet Quintet in A major, K.581 [2.Larghetto]

Mozart:Clarinet Quintet in A major, K.581 [3.Menuetto]

Mozart:Clarinet Quintet in A major, K.581 [4.Allegretto con variazioni]


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クラリネット 〜 モーツァルトが愛した楽器

クラリネットという楽器の魅力を発見し、その魅力を最大限に引き出したのがモーツァルトでした。コンチェルトや交響曲の中でクラリネットを活躍させたのはモーツァルトが最初ではなかったでしょうか。

そして晩年の貧窮の中で彼はクラリネットのふくよかでありながら哀愁の入り交じったクラリネットの響きにますます魅せられていったようで、素晴らしい二つの作品を残してくれました。
それがここで紹介するクラリネット五重奏曲であり、もう一つはそれと兄弟関係とも言うべきクラリネット協奏曲です。

しかし、最晩年に作曲されたコンチェルトには救いがたいほどのモーツァルトの疲れが刻印されています。美しくはあっても、そのあまりに深い疲れが聞き手の側にのしかかってきます。それに対してこのクインテットの方はモーツァルト特有の透明感を保持しています。ある人はこの作品に、澄み切った秋の夕暮れを感じると書いています。

とりわけ第2楽章の素晴らしさ!!
これほどまでに深い感情をたたえた音楽は、モーツァルトといえども他には数えるほどしかありません。音楽の前に言葉は沈黙する、と言う陳腐な言い回しがここでは実感として感じ取ることができます。


ウラッハは相方のカルテットがかわったからといって何も変わることはありません

ウラッハのクラリネット五重奏曲と言えばウィーン・コンツェエルトハウス四重奏団との1952年盤というのが通り相場です。しかし、もう一枚、シュトロス四重奏団と録音したのがありました。
ウラッハ1956年に、僅か54才でこの世を去っていますから、まさに最晩年の録音と言うことになります。

ただし、少し残念なのは「Bertelsmann原盤」となっていて、ウエストミンスターによるウィーン・コンツェエルトハウス四重奏団盤と比べると録音のクオリティがいささか落ちることです。
「Bertelsmann」とは聞きなれない名前ですが、19世紀初頭に設立された出版業者で、ナチス政権下で急成長し、戦後は通信販売によるレコード販売にも乗り出した会社です。そして、80年代にはいるとアメリカにも進出をして落ち目になっていた「RCA」等を買収して「BGM」というレーベルに統合します。

そうなんです、私も調べてみてはじめて分かったのですが、「Bertelsmann」とは「BGM」の前身だったのです。「BGM」とは「Bertelsmann Music Group」の略称だったのですね。21世紀にはいるとこの「BGM」もソニーに買収されてしまうのですが、私がクラシック音楽などと言うものを聞き始めた頃は、カラー刷りの立派な広告をよく見たものです。

さて、肝心の演奏の方なのですが、ウラッハの方は相方のカルテットがかわったからといって何も変わることはありません。
ほの暗く、そしてふくよかな響きで、このモーツァルト晩年の作品を描き出していきます。そして、多くの人はその演奏スタイルに「古き良きウィーン」の姿を感じるのでしょうが、古い録音をあれこれと漁って聞いていると、こういう演奏のスタイルは「古いウィーン」にはなかったことに気づくようなにって来ます。

このあたりの話はもう少し掘り下げる必要があるのかもしれませんが、簡単に言ってしまえば、アメリカという市場を意識せざるを得ない状況で、自分たちの立ち位置と強みを再検証する中で再創造された演奏スタイルだと言えます。
レコード産業という枠で見るならば最大の市場はアメリカでした。そして、アメリカの市場で受け入れられていたのはビッグ5と言われるアメリカのメジャーオーケストラとその音楽監督たちであり、ソリストで言えばホロヴィッツやルービンシュタイン、ハイフェッツたちでした。

彼らの演奏スタイルを一つにまとめるのは乱暴に過ぎますが、それでも敢えて言い切れば硬質の響きで音楽のラインをクッキリと描き出していくものでした。そして、未だ第2次大戦の疲弊の中にあるヨーロッパの音楽家たちが録音という市場で日々の糧を稼ぐためには、そこで「売れる」必要があったのです。
そう言う状況の中で彼我の現状をふまえて自分たちの強みを見直して、その強みをより明確に意識化して生み出したのがいわゆる「ウィーン風」の演奏だったのです。

そして、その事はドイツの団体であった「シュトルス四重奏団」においても同様だったようで、あざといまでに「ウィーン的」だったコンツェルトハウスの四重奏団に負けないほどに濃い演奏になっています。
ただし、一部では録音の珍しさもあってか、こちらの方を持ち上げる物言いもあるようですが愚かなことです。

ただ素直に、ウラッハの演奏で二つの録音が残ったことを喜べばいいのです。
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