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マルグリット・ロン(Marguerite Long)|ダンディ:フランス山人の歌による交響曲
ダンディ:フランス山人の歌による交響曲
(P)マルグリット・ロン ポール・パレイ指揮 コンセール・コロンヌ管 1934年5月24・25日録音
D'indy:フランス山人の歌による交響曲「第1楽章」
D'indy:フランス山人の歌による交響曲「第2楽章」
D'indy:フランス山人の歌による交響曲「第3楽章」
交響曲?ピアノ協奏曲?
ダンディと言えば、シャルル・ボルドらと共同でスコラ・カントルムを創設したことで知られています。スコラ・カントルムは古典主義的で厳格な音楽教育で知られていて、1902年に初演されたドビュッシーのオペラ、「ペレアスとメリザンド」と同時期に初演されたダンディのオペラ「異邦人」をめぐって、ドビュッシー派とスコラ・カントルム派との間に激しい論争が起こったことも有名なエピソードです。
ダンディはワーグナーの「リング」を聞いて感動し熱心なワグネリアンとして音楽家の第一歩をスタートさせますが、後にフランスの国民主義的な作曲へと変容を遂げていきます。その変容の第一歩を記したのが、この「フランス山人の歌による交響曲」です。
ダンディはパリに生まれてパリで育った人物ですが、もとは南仏アルデーシュ地方の貴族の血をひいています。その父祖の地とも言うべきアルデーシュ地方の民謡を採取する中で出会った牧夫の歌を素材として書き上げたのがこの作品です。
その素材とは、第1楽章の冒頭にコールアングレで奏される旋律で、実に伸びやかでのどかな風情がただようメロディです。ダンディはこの主題を核として、師であるフランクの交響曲と同じように循環形式によって全体の統一を図っています。
ダンディは当初この作品を管弦楽とピアノのための幻想曲として着想したようですが、結果としてそれを交響曲にスタイルを変えて1887年の夏に一気に書き上げました。ですから、聞きようによってはピアノ協奏曲の範疇に入れる方が妥当なような気もしますが、もう一歩踏み込んで聞いてみると、ピアノはあくまでもオケの中の一つの楽器として有機的に扱われているような気もします。
ダンディ自身はこの作品に「交響曲第1番」という名前を与えていますので本人としては交響曲として扱われるのが本意だったことは間違いありません。
なお、この作品にはワーグナーからの影響が色濃く残っていると指摘されることが多いのですが、ユング君にはそれよりもブルックナーのような響きがあちこちから聞こえてくるように思うのですが、いかがなものでしょうか?
マルグリット・ロン
ロン=ティボー国際コンクールの「ティボー」はヴァイオリニストのジャック・ティボーの名前をとったものだとは意識していましたが、「ロン」の方はマルグリット・ロンの「ロン」だったとは迂闊にも私の意識の中にはありませんでした。
それは今日におけるティボーとロンとの位置づけの違いから来ています。
ティボーは今もって20世紀を代表した偉大なヴァイオリニストですが、ロンは既に忘れ去られようとしています。
しかし、リクエストコーナーに彼女の演奏への要望が寄せられ、それをきっかけとして彼女の演奏をまとめて聞き直してみたのですが、忘れ去るには惜しいピアニストだと確信することができました。
演奏の特質は一言で言えば「女コルトー」でしょうか。とてもロマンティックにピアノを歌わせますが、決して下品になることはなく強い知性を感じさせる演奏です。
にもかかわらず、彼女への失礼を顧みず正直に申し述べますが、この「演奏に知性を感じる」ことと、アルバムに掲載されていた「彼女の写真」とのあいだに、埋めがたいほどのギャップを感じたことは正直に告白しなければなりません。
とくに若いころの写真からは「ひとかけらの知性」も感じられません。
そして、こういう表情の女性はどこかで見たことあるなと記憶をたぐっていって思い当たったのが、チャップリンの初期の映画などに登場してくる「美しい」女性たちです。彼女たちは「お人形」のように美しくはあっても、人間的な意志も知性も感じさせない「白痴的な美しさ」の持ち主でした。若いころのロンの写真はどれもこれも、その様な「白痴的な表情」のものばかりなのです。
「レディファースト」の本質は、女性を独立した人格を持った一人の人間として敬うものではなく、男の身辺を飾るアクセサリとして扱うことにあることは承知していましたが、女性のピアニストもまたその様なものとしてキャリアをスタートさせなければならなかったのでしょうか。(でも、今だってCDの写真にオミズ系としか言いようのないものを使っている女性演奏家は多いです。中にはHPでヌードを披露しているヴァイオリニストもいました。)
晩年の、優雅ではあってもその中に強い意志を秘めているような写真と、白痴的としか言いようのない若いころの写真とを見比べてみるたびになんだか複雑な思いにさせられました。
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よせられたコメント
2012-06-23:MAX
- 串田孫一『若き日の山』に収められた「薔薇の花びら」という随筆をご存知でしょうか。一緒に山に登った友人が戦死して、遺骨が返ってきた。遺言で無宗教の葬式をしてほしいということで、友人たちは彼の好きだったこの曲を蓄音機で流し、薔薇の花びらをとって水盤に浮かべるというお葬式をした、という内容の話です。ミュンシュで聴いて感動していましたが、串田さんと友人が聴かれたのは戦前の演奏。となると、ロンとパレーのこの演奏ですね。
どんな頼りない音質か、覚悟していたのですが、なかなかにいい。ピアノが粒の細かい、質のいい真珠みたいな音。そしてパレーのあっさりしてスピーディな棒。日本人の学生にとってあこがれの対象でしかなかったフランスの山。描写音楽ではないのですが、太陽の強い光線がてりつけたり、かとおもうと曇ったりし、鳥がすばらしいスピードで飛んでいく風景を想像してしまいます。
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