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エーリッヒ・クライバー(Erich Kleiber)|ワーグナー:管弦楽曲集
ワーグナー:管弦楽曲集
エーリッヒ・クライバー指揮 NBC交響楽団 1946年3月10日ライブ録音
Wagner:Forest Murmurs(Siegfried)
Wagner:Prelude to_Act1(Parsifal)
Wagner:Good Friday Spell(Parsifal)
Wagner*Tannhauser Overture
いつ頃からの習慣なのでしょうか?
![](../Jacket_record/No_Image.jpg)
ワーグナーの管弦楽曲集というCDが巷にあふれていますが、そんな作品を書いた覚えはワーグナーにはなかったでしょう。もちろんオペラの序曲だけを抜粋してコンサートピースにすることはよくある話ですが、ワーグナーの場合はオペラの中に埋め込まれているおいしそうな部分を指揮者が適当に編曲した「管弦楽曲」があふれています。
でも、ワーグナーの作品をこのように「管弦楽曲」としてコンサート用の作品に編曲して提供するというのはいつ頃から始まったのでしょうか?
調べてみたのですがはっきりとした事は分かりませんでした。
個人的にはアンコールピースとして聞かされるのは大歓迎ですが、こればっかりでプログラムを組まれるとちょっとウンザリしてしまいます。テンシュテットの最後の来日公演のプログラムがそれだったのですが、やはり、演奏の凄さは感じながらも大阪弁で「何でやネン」と呟いてしまいました。(^^;
吉田秀和氏がどこかでセル&クリーブランドのコンサートでその様なプログラムにぶち当たって「威勢がいいだけで中途半端な作品ばかり聴かされた」とぼやき、さらには「おそらくそう言うタイトルで録音する企画でもあるのだろう」と勘ぐりを入れて、「そう言う録音の下準備につきあわされた聴衆こそいい面の皮」だと怒りをぶちまけていました。
<収録作品>
- 楽劇「ジークフリート」より「森のささやき」
- 楽劇「パルシファル」より「第1幕前奏曲」
- 楽劇「パルシファル」より「聖金曜日の音楽」
- 歌劇「タンホイザー」より「序曲」
録音の悪さも気にならないほどの熱さに満ちた演奏
何も今さらこんな古い録音をひっぱてこなくてもいいじゃないですか、と言う声が聞こえてきそうです。
それは全く持ってそうなのですが、しかし、考えようによってはこういう録音をお金を払ってでも聴きたいという人は非常に少ないでしょうから、逆にこういうサイトで紹介する価値は高いと言えるのかもしれません。
クライバーと言えばすっかり息子のカルロスの方が有名になってしまったのですが、そのカルロスが心の底でもっとも恐れていたのが父親のエーリッヒでした。彼は父親がコンサートを行った場所で指揮をしたがらなかったというのは有名な話です。
そして、プログラムに関しても、父親と比較して自信が持てたものしか演奏しなかったようで、それが彼の守備範囲の狭さにもつながったようなのです。
つまりは、彼は心の底から父親を尊敬し、それが彼にとっては大きな足枷ともなったようなのです。
しかし、多くの人はそう言うエピソードを聞くと不思議に思うはずです。
あのカルロスがそこまで神経質になるほどエーリッヒて凄かったの、録音なんかほとんど聞いたこともないし、どこのオケのシェフをやっていたのかも思い浮かばないんだけど、みたいな感じです。
そうなんですね。
それこそ、あちこちで言及されていますから今さら繰り返しませんが、彼もまた第2次大戦という歴史の波に翻弄されて、その力とは不釣り合いなほどにキャリアには恵まれなかった人です。そして、ようやくウィーンフィルやコヴェントガーデンとの関係が出来つつあった56年に世を去ってしまいます。
ナチスを嫌って多くの指揮者はアメリカに亡命したのですが、彼は南米のアルゼンチンを選びました。
ですから、アメリカでの演奏活動はほとんどないのですが、その数少ない例外が1946年から47年にかけて客演指揮したNBC交響楽団との演奏です。
私も最近になってこのライブ録音をポチポチと聞いているのですが、これが実に持って面白いのです。
エーリッヒと言えば、その演奏スタイルは息子のカルロスを思い出させるものです。
しかし、よく考えてみればこの表現はヘンですね。(^^;
カルロスのあのスピード感とエネルギー感に満ちた、それでいながらしなやかな自由さを失わない音楽の原点が父親譲りだったと書くべきですね。
しかし、ここで聞くことのできるかエーリッヒは、そう言う彼の本質的な部分は保持しながら、クライマックスに向けてかなりあざとくアッチェレランドするなどの「芸人魂」を見せているのです。たとえば、「タンホイザー序曲」などはその典型で、かなりあざとく感じないでもないのですが、そう言う「お利口ぶった考え」をねじ伏せてしまうほどの「芸」です。
スタジオ録音ではそう言う「逸脱」とは無縁だっただけに、こういうライブ録音というのは貴重ですね。
なお、これは放送音源なので音質的にはムラがありますし、部分的にはかなり気になるノイズも混入しています。
しかし、そう言うものは聞いているうちにあまり気にならなくなってくるのが「人間の耳」の賢いところですし、何よりもそう言うことが気にならなくなる「熱さ」がこの演奏には溢れています。(イヤ、でもやはり気になるか・・・^^;)
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