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シュナーベル(Artur Schnabel)|シューベルト:ピアノソナタ(第21番) 変ロ長調 D.960
シューベルト:ピアノソナタ(第21番) 変ロ長調 D.960
シュナーベル:1939年1月25日録音
Schubert:ピアノソナタ第21番 D.960 「第1楽章」
Schubert:ピアノソナタ第21番 D.960 「第2楽章」
Schubert:ピアノソナタ第21番 D.960 「第3楽章」
Schubert:ピアノソナタ第21番 D.960 「第4楽章」
王冠の煌めく作品
シューベルトの死の年になる1829年の9月に、わずか数週間の間に遺作となる3つのソナタが書かれました。ハイドン・モーツァルト、そして何よりもベートーベンのソナタ作品の模倣から始まったシューベルトのピアノソナタは、ここにおいて確固とした自らの言葉を獲得しました。
3作品の中でも、通常19番・20番とナンバーリングされるソナタは、シューベルト的というよりは、ベートーベン的なるものの総決算という雰囲気が強い作品です。その意味では、それらに先行するD.850やD.845などの作品よりは後退しているように見えるかもしれませんが、それは一年前に他界したベートーベンへの追悼の意味を込めて書いたためだと言われています。
そして、シューベルトはそれら2作品で内在する「ベートーベン的なもの」を総決算することで、最後の変ロ長調ソナタにおいて真にシューベルト的な世界へと歩を進みはじめたのです。
ただし、その最初の大きな一歩が、シューベルトの人生においては最後の一歩になってしまったところに言いようのない痛ましさを感じてしまいます。
シューベルトはこのソナにおいて、ベートーベンとは全く異なった言葉で音楽を語っています。
彼はもはやベートーベンのように主題を小動機に分解して音楽を構築しようとはしていません。主題は繰り返される転調によって響きを変化させ、その響きの移ろいによってによって音楽は構築されていきます。主要主題はその旋律線を崩すことなく、自立性を保って楽章全体を支配しています。
「シューベルトのピアノ作品の中で王冠の煌めいているのは何よりも変ロ長調ソナタであり、ベートーベン以後に書かれた最も美しいソナタである」という言葉は、決して誉めすぎではないのです。
シューベルトのピアノソナタを積極的に紹介したシュナーベル
シューベルトのピアノソナタは今日ではピアニストたちにとって貴重なプログラムとなっていますが、20世紀の初期においては決して重要な作品とはなっていませんでした。
これは歴史的録音を探していて気づいたことなのですが、録音そのものが非常に少ないのです。
そんな中にあって、シュナーベルは演奏会でもよく取り上げ、録音も数多く残して、シューベルトのピアノソナタの普及につとめました。
そして、これはユング君の私見ですが、シュナーベルにとってベートーベンよりもシューベルトの方が体質的に相性が良かったのではないかと思ってしまいます。
ベートーベンのソナタでは、ストイックに演奏することを自らに強いているように感じるときがありますが、シューベルトではもっとくつろいで演奏しているに感じられます。シューベルトらしい歌心に満ちたところではテンポを動かしてロマンティックに演奏していて、それはシュナーベル自身の肉声にふれるような思いがします。
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よせられたコメント
2008-05-04:津田泰孝
- アゴーギグはあっさりめではあるが方向が明確だし、なによりも音色の変化が素晴らしい名演と思います。
2009-09-24:カンソウ人
- シューベルトのピアノソナタは、ベートーベンのピアノソナタと比較して明らかにモチーフの展開する力に欠けている。聞いていて退屈するように思われます。多声的に書かれている部分がほとんど無く技術的に難しい部分が少ないように思います。演奏が終わって拍手大喝采を浴びる、批評家がピアニストの技術や音楽性をあげつらうのをマスコミから情報を得る。普通音楽が広まって行く道筋とは違うものを感じさせます。19世紀、20世紀の前半はピアニストは演奏する頻度が低かったし、何を聞きとったらよいのかわかりにくい音楽でした。
それまで、聴衆や演奏家、音楽産業にとって否定的にとらえていた部分を逆に肯定的に捉えるきっかけとなる何者かが必要でした。今は、高い頻度で演奏されそれまで退屈だったものを聴衆は受け入れています。私は、ウィンダムヒルのような環境音楽やミニマルミュージック、エリクサティの音楽の発生や流行と同じものを感じています。石油ショックの後の、それまでのエネルギー垂れ流し(言葉は悪いが)を否定したころからの流れのように思います。エコロジーの思想の始まりの時期でした。音楽の受容のあり方の変化から、退屈を肯定的な時間の使い方として(良い言葉が見つかりませんが)捉えているのだと思います。
シューベルトのピアノソナタは、技術的に結構難物のように思います。楽譜通り演奏しても見せどころがあるわけではなく、テーマごとに要求するテンポが違う、全体構成を明確に意識することなど、解釈に関してはこれからの部分が多いと思われます。
シュナーベルの演奏は、ごつごつしていたり、テンポが速すぎたりいろいろ思いはあるのですが、とにかくこの時代の演奏としては彼の物しかありませんでした。現在の流行の先駆けをしていたのですからSP時代にこの長いソナタを録音していたことはとてもすごいことだと思います。同時代の人には決して理解できなかったことを、記録しているのだと思います。
2010-08-19:シューベルティアン
あまり知ったかぶったことはいえませんが、いい演奏です。愛情が感じられて、やさしく揉みほぐされるような感じがします。
音色の味わいは、この録音ではわからない。実演を聞いたら全然違ったものだろうということを想像しながら、聞いていますが、とにかく聞くよろこびは十分です。
彼は巧いピアニストであるのかないのか、素人なのでわからないですが、巧いピアニストたらんとする気遣いが全然ないことがなんとなく聞いていてわかるものです。まるで自分の作曲を愛着込めて弾くような、自然さとしなやかさがある。聴衆のことは忘れているようだ。作曲家と演奏家のあいだの隔たり、演奏家と聴衆のあいだの隔たり、そういうものが音楽のなかで融和してなくなってしまったような、ふしぎな感じに誘われました。
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