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ゲイリー・グラフマン(Gary Graffman)|The Virtuoso Liszt
The Virtuoso Liszt
(P)ゲイリー・グラフマン 1960年4月13日録音
Liszt:Liebestraume, S.541-3 Oh Lieb, so lang du lieben kannst in A-flat major
Liszt:3 Etudes de concert, S.144 Un sospiro D-flat major
Liszt:Hungarian Rhapsody No.1, S.244/1 in A minor
Liszt:Annees de pelerinage II, S.161-2 Il Pensieroso
Liszt:Consolations, S.172-3 Lento placido D-flat major
リストの超絶技巧
リストと言えば超絶技巧であり、超絶技巧と言えばリストです。まさに、高度な演奏技巧を要するピアノの難曲の代表です。
しかしながら、その超絶技巧の代表はいわゆる「超絶技巧練習曲」ではなくて、「パガニーニによる大練習曲」の1838年版の方でしょう。よく知られている話ですが、その作品は作曲者であるリスト以外には演奏不可能と言われ、あのホロヴィッツでさえ「演奏不可能」と断定したのです。
よく知られているように、この「Transcendante」というのは一般的に「超絶」と翻訳されますが、正確には宗教的な意味合いを含んだ用語で肉体や精神を超越するというニュアンスを表現した言葉だそうです。
つまりは、「逝っちゃう??!」という雰囲気です。
それで、何が逝っちゃうのかと言えば、それは「聞けば分かる!」と言うことになります。
実際、リストの演奏を聴いてあまりの凄さに悶絶して気絶する観客がいた話は有名ですが、驚くなかれ、リスト自身も演奏中に悶絶することがあったという話も伝わっています。(ただし、その「失神」は事前に仕込まれた演出だっという説もあります。)
つまり、リストと言えば、とかく技術偏重で饒舌にすぎると言われるのですが、その本質は意外と「逝っちゃう」ところにあるのです。
ただし、その「逝っちゃう」のは神の啓示や深い瞑想によってではなく、念仏踊りのような狂気の果てに「逝っちゃう」のです。
シューマンは「恋する心は恋について語らない」と言ってリストを批判をしましたが、上品なロマンティストであったシューマンには、そんなリストの本質は全く理解不能だったのでしょう。
それでも、彼は「恋する心」を鉦と太鼓で「好きだ、惚れた!好きだ、惚れた!」と念仏踊りで表現することに己のアイデンティティを見いだしたのです。そうやって目立たなければ、ハンガリーの片田舎から出てきたピアニストなどに誰も注目などしてくれなかったのです。
The Virtuoso Liszt
「The Virtuoso Liszt」とタイトルが付いた1枚からの抜粋です。1960年の録音ですが、そのクオリティの高さにはさすが「Living Stereo」と拍手を送りたくなります。
演奏の方に関しては「ヴィルトーゾと音楽性を黄金調和させた」と評する人もいるようですが(^^;、さすがにそこまでの褒め言葉を呈するのには躊躇いを感じます。ただし、ショパンのような音楽だといささか違和感を感じる若き日のグラフマン直進性と鳴らしっぷりも、リストではそれほど気にはなりません。
逆に言えば、そう言う二人の作曲家の気質の違いみたいなものを浮き彫りにしてくれる演奏だとも言えます。
- 愛の夢 第3番 S541/3
- 3つの演奏会用練習曲集第3番変ニ長調「ため息」 S144/3
- ハンガリー狂詩曲第11番イ短調 S244/11
- 巡礼の年第2年『イタリア』より第2番「 物思いに沈む人」 s161/2
- コンソレーション第3番変ニ長調 S172/3
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