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チャイコフスキー:交響曲 第5番 ホ短調 作品64

ピエール・モントゥー指揮 ボストン交響楽団 1958年1月8日録音

Tchaikovsky:Symphony No.5 in E minor, Op.64 [1.Andante - Allegro con anima]

Tchaikovsky:Symphony No.5 in E minor, Op.64 [2.Andante cantabile con alcuna licenza]

Tchaikovsky:Symphony No.5 in E minor, Op.64 [3.Valse. Allegro moderato]

Tchaikovsky:Symphony No.5 in E minor, Op.64 [4.Finale. Andante maestoso - Allegro vivace]


何故か今ひとつ評価が低いのですが・・・

チャイコフスキーの後期交響曲というと4・5・6番になるのですが、なぜかこの5番は評価が今ひとつ高くないようです。

4番が持っているある種の激情と6番が持つ深い憂愁。その中間にたつ5番がどこか「中途半端」というわけでしょうか。それから、この最終楽章を表面的効果に終始した音楽、「虚構に続く虚構。すべては虚構」と一部の識者に評されたことも無視できない影響力を持ったのかもしれません。また、作者自身も自分の指揮による初演のあとに「この作品にはこしらえものの不誠実さがある」と語るなど、どうも風向きがよくありません。
ただ、作曲者自身の思いとは別に一般的には大変好意的に受け入れられ、その様子を見てチャイコフスキー自身も自信を取り戻したことは事実のようです。

さて私はそれではどう思っているの?と聞かれれば「結構好きな作品です!」と明るく答えてしまいます。チャイコフスキーの「聞かせる技術」はやはり大したものです。確かに最終楽章は金管パートの人には重労働かもしれませんが、聞いている方にとっては実に爽快です。第2楽章のメランコリックな雰囲気も程良くスパイスが利いているし、第3楽章にワルツ形式を持ってきたのも面白い試みです。
そして第1楽章はソナタ形式の音楽としては実に立派な音楽として響きます。
確かに4番と比べるとある種の弱さというか、説得力のなさみたいなものも感じますが、同時代の民族主義的的な作曲家たちと比べると、そういう聞かせ上手な点については頭一つ抜けていると言わざるを得ません。


プロ中のプロ

指揮者というのはそのお国柄というものがよくあらわれる職種だと思います。
典型的なのはハンガリーです。

ザッと数え上げると、フリッツ・ライナー、ジョージ・セル、ユージン・オーマンディ、ゲオルク・ショルティという感じです。ハンガリーというのは小国であるにもかかわらず、怖ろしく恐くて、そして怖ろしく完成度の高い仕事をする指揮者を輩出しました。
そこにあるのは、ファナティックなまでの完璧さへの執着です。

今時、「本場」などと言う言葉は胡散臭いだけなのですが、それでもクラシック音楽の世界ではオーストリア・ドイツ系の指揮者がそれに当たることになっています。そんな「本場」の指揮者と較べれば、言葉はよくないのですが、彼らにはどこか「狂」という字がついて回る雰囲気があります。
ここからさらに東に進んでロシアにまで行くと、ムラヴィンスキーとかマルケヴィッチみたいな同族もいるのですが、さすがにロシアは大国なので、スラブのパワーを爆発させる全く別種の生き物も数多く棲息しています。

それに対して、今度は西に進んでいくとフランスなどと言う国があります。(^^;

主だった指揮者をあげればピエール・モントゥー、シャルル・ミュンシュ、アンドレ・クリュイタンス等が数え上げられるのですが、ここから読み取れる共通点は明晰さへの指向です。ただし、その指向はハンガリー系のような独裁によってではなくて知性とウィットによって成し遂げられているように見えます。
もちろん、こう言ったからとて、ハンガリー系の面々に「知性」が欠如していると言っているわけではありません。
その知性が要求する音楽を、怖い人たちはファナティックなまでのスパルタによって実現しようとするのに対して、フランスの指揮者の多くはウィットによって実現しようとするように見えるのです。

セルにしてもライナーにしても、彼らが要求する水準までにオケが達しなければ、待っているのは地獄の特訓です。
しかし、モントゥーにしてもクリュイタンスにしても、彼らは自らの指揮技術で実現できなければそれはそれで仕方無しとして、その範囲の中で音楽をまとめてしまいます。ただ、凄いと思うのは、その高い指揮技術によって、凡な指揮者ならば入念にリハーサルを繰りかえす事で実現できるレベルよりも高い水準に引き上げてしまうことです。

クリュイタンスのウィーンフィルでのエピソード、「あなた方はこの曲をよく知っている。私もよく知っています。では明日。」というのは有名ですが、これはいかにもフランス的なのです。もちろん、この背景には練習嫌いなウィーンフィルの面々の支持を得るためという算段もあったのでしょうが、本質的には自分の指揮技術に自信がなければ言える言葉ではありません。

そして、その様なフランス的精神を最もよく体現した指揮者がモントゥーでした。

彼の音楽の特徴は明晰なるものへの徹底した指向でした。
しかし、それ以上に彼という指揮者をよく表している言葉は「独裁せずに君臨する」でしょう。

それは、ドイツ・オーストリアを対称の軸として東西でこれほども対照的になるのかと驚かされるほどです。

不思議なのは、彼の棒にかかると、オケは結構下手くそであっても音楽の内部構造がよく分かることです。しかしながら、下手くそであってもオケは怒られもせず、「俺たち結構いけてる!」というマジックにかかるので、結果として音楽に勢いとパワーが漲るのです。そして、その勢いとパワーは時には他では得られない魅力を生み出してしまったりするのです。
そして、そう言う下手くそなオケをモントゥーという人は長い時間をかけて熟成させていき、数年も経てば、これがあのサンフランシスコのオケ(言っちゃった^^;)なのかというレベルにまで高めてしまうのです。

私はセルやライナーという指揮者が大好きで、彼らこそが「プロ中のプロ」だと確信しているのですが、モントゥーのような指揮者に出会うと、プロの形も色々あることに気づかされます。

今回紹介したチャイコフスキーの後期の3つの交響曲はボストン響を振ってのものですからオケは下手ではありませんが、同時代のシカゴやクリーブランドみたいな凄みはありません。しかし、それでもモントゥーの棒にかかると、チャイコフスキーの交響曲は古典派のシンフォニーのようにその姿が明晰に立ち上がります。
聞くところによると、この一連の録音は当初1955年に録音された第6番「悲愴」だけの約束だったようです。
しかし、そのレコードが大好評でよく売れたので、続けて4番と5番も録音されることになったそうです。

考えてみるとこれは実に幸運なことでした。
何故ならば、「悲愴」という音楽は明晰さだけではどこか不満が残る部分があるのですが、4番と5番に関しては、その様なモントゥーの方向性が万全に威力を発揮しているからです。
もしかしたらムラヴィンスキーの録音にも肩を並べられるだけの素晴らしさに達しているかもしれません。

本当に、ボストン響とのコンビでこの録音が為されたことは幸せなことでした。

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