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ショパン:ワルツ集(第1番~14番)

(P)ディヌ・リパッティ:1950年7月録音



Chopin:ワルツ集 「第1番」

Chopin:ワルツ集 「第2番」

Chopin:ワルツ集 「第3番」

Chopin:ワルツ集 第4番

Chopin:ワルツ集 第5番

Chopin:ワルツ集 第6番

Chopin:ワルツ集 第7番

Chopin:ワルツ集 第8番

Chopin:ワルツ集 第9番

Chopin:ワルツ集 第10番

Chopin:ワルツ集 第11番

Chopin:ワルツ集 第12番

Chopin:ワルツ集 第13番

Chopin:ワルツ集 第14番


簡単な作品の解説

いわゆるウィーン風のワルツからはほど遠い作品群です。
ショパンがはじめてウィーンを訪れたときはJ.シュトラウスのワルツが全盛期の頃でしたが、その音楽を理解できないと彼は述べています。
いわゆる踊るための実用音楽としてのワルツではなく、シューマンが語ったようにそれはまさに「肉体と心が躍り上がる円舞曲」、それがショパンのワルツでした。また、全体を通して深い叙情性をたたえた作品が多いのも特徴です。

ショパンの手によってはじめてワルツと言う形式は芸術として昇華したと言えます。

ワルツ第1番 変ホ長調 作品18 「華麗なる大円舞曲」
ワルツ第2番 変イ長調 作品34-1「華麗なる大円舞曲」
ワルツ第3番  イ短調 作品34-2
ワルツ第4番  ヘ長調 作品34-3「子猫のワルツ」
ワルツ第5番 変イ長調 作品42
ワルツ第6番 変ニ長調 作品64-1「子犬のワルツ」
ワルツ第7番 嬰ハ短調 作品64-2
ワルツ第8番 変イ長調 作品64-3
ワルツ第9番 変イ長調 作品69-1(遺作)
ワルツ第10番  ロ短調 作品69の2(遺作)
ワルツ第11番 変ト長調 作品70-1
ワルツ第12番  ヘ短調 作品70-2
ワルツ第13番 変ニ長調 作品70の3(遺作)
ワルツ第14番(ヘンレ版第16番)ホ短調(遺作)


あらためて思い知らされるリパッティの実力

これは疑いもなく20世紀におけるショパン演奏の一つの頂点をなすものだといえます。そして、若くしてこの世を去ったリパッティというピアニストの実力を改めて私たちに認識させてくれる演奏です。

リパッティはこの一連のワルツを順番に演奏するのではなく、彼なりの配列で、まさに全体で一つの作品であるかのように再構成をして私たちに提示してくれています。ショパンのワルツの最大の特徴である叙情性がこれほどまでに見事に表現された演奏はそうあるものではありません。

それにしても、この演奏がわずかばかりに病状が好転した合間を塗って録音されたものとはにわかに信じがたいものがあります。(1950年に多くの音楽家たちの寄付によって新薬コーチゾンが投薬された)
ウォルター・レッグはリパッティの才能に惚れ込んで、大きな機材をスイスにまで運び込んでは、体調が安定する期間をねらって録音活動を続けていました。このときも、このわずかの合間を縫うようにジュネーブで録音が行われたようです。

その後9月にはブザンソンで告別演奏会が行われ、12月2日にこの世を去ることになるのですが、このワルツ集からはそのような死の影のかけらさえも伺えません。わずか33歳というあまりにも短すぎる生涯でした。

<重要な追記:2008年8月7日>
最近になって、この録音について興味深い「疑義」が出されているようです。それは簡潔に述べれば、レッグによる「すり替え」です。
リパッティとレッグのコンビは47年にロンドンのスタジオでワルツの全曲録音を行っているのですが、その出来にリパッティが満足できなかったためにその録音は破棄されたとされていました。しかし、病状がわずかに好転した合間を縫って演奏され、リパッティ自身もOKを出した50年の録音より、破棄されたことになっている47年のスタジオ録音の方がはるかに出来がいいと判断したレッグは、彼の独断ですり替えたのではないかという話なのです。
この「疑惑」は、正直言ってこの録音を聞く限り、真実ではないかと思わせるものがあります。上でも述べたように、「この演奏がわずかばかりに病状が好転した合間を塗って録音されたものとはにわかに信じがたいものが」あるからで、リパッティはその年の「12月2日にこの世を去ることになるのですが、このワルツ集からはそのような死の影のかけらさえも伺え」ないからです。
もちろん上記の「疑義」はあくまでも「疑義」の域を出ませんし、おそらくレッグ自身が何も語らずにその秘密を墓場まで持って行ってしまった以上、「真実」が明らかになることはないのかもしれません。

しかし、この「疑義」は私たちに、「録音におけるプロデューサーの役割とは何か?」ということに思いを致させます。
年をとって衰えのはっきりしてきた「老巨匠」に何の意味もない再録音をさせ、それを「巨匠の枯れた芸」としてリリースして、本来は残すべき絶頂期の録音を廃盤にしていくという「愚」を多くのメジャーレーベルはどれほど繰り返してきたでしょう?
その事を思えば、もしも上記の「疑義」が真実だったとしても、私はレッグを責めるどころか、逆に大きな拍手を送りたいと思います。
演奏の出来不出来は必ずしも演奏者自身が最もよく分かるというものではありません。それどころか、演奏者自身も気づかないようなパフォーマンスを引き出すのが真の録音プロデューサーというものでしょう。その意味では、レッグこそはまさにプロの中のプロでした。
こういう、本当の意味でのプロがいなくなったところにもクラシック音楽衰退の一因があるのかもしれません。

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