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クライスラー(Fritz Kreisler) |ベートーベン:ヴァイオリンソナタ 第5番 「春」
ベートーベン:ヴァイオリンソナタ 第5番 「春」
Vn:クライスラー P:ルップ 1936年録音
Beethoven:ヴァイオリンソナタ第5番「第1楽章」
Beethoven:ヴァイオリンソナタ第5番「第2楽章」
Beethoven:ヴァイオリンソナタ第5番「第3楽章」
Beethoven:ヴァイオリンソナタ第5番「第4楽章」
初期に集中するベートーベンのヴァイオリンソナタ
ベートーベンのヴァイオリンソナタは、9番と10番をのぞけばその創作時期は「初期」といわれる時期に集中しています。9番と10番はいわゆる「中期」といわれる時期に属する作品であり、このジャンルにおいては「後期」に属する作品は存在しません。
ピアノソナタはいうまでもなくチェロソナタにおいても、「後期」の素晴らしい作品を知っているだけに、この事実はちょっと残念なことです。
ベートーベンはヴァイオリンソナタを10曲残しているのですが、いくつかのグループに分けられます。
まずは「Op.12」として括られる1番から3番までの3曲のソナタです。この作品は、映画「アマデウス」で、すっかり悪人として定着してしまったサリエリに献呈されています。
いずれもモーツァルトの延長線上にある作品で、「ヴァイオリン助奏付きのピアノソナタ」という範疇を出るものではありません。しかし、その助奏は「かなり重要な助奏」になっており、とりわけ第3番の雄大な楽想は完全にモーツァルトの世界を乗り越えています。
また、この第3番のピアノパートがとてつもなく自由奔放であり、演奏者にかなりの困難を強いることでも有名です。
続いて、「Op.23」と「Op.24」の2曲です。この二つのソナタは当初はともに23番の作品番号で括られていたのですが、後に別々の作品番号が割り振られました。
ベートーベンという人は、同じ時期に全く性格の異なる作品を創作するということをよく行いましたが、ここでもその特徴がよくあらわれています。悲劇的であり内面的である4番に対して、「春」という愛称でよく知られる5番の方は伸びやかで外面的な明るさに満ちた作品となっています
次の6番から8番までのソナタは「Op.30」で括られます。この作品はロシア皇帝アレクサンドルからの注文で書かれたもので「アレキサンダー・ソナタ」と呼ばれています。
この3つのソナタにおいてベートーベンはモーツァルトの影響を完全に抜け出しています。そして、ヴァイオリンソナタにおけるヴァイオリンの復権を目指したのベートーベンの独自な世界はもう目前にまで迫っています。
特に第7番のソナタが持つ劇的な緊張感と緻密きわまる構成は今までのヴァイオリンソナタでは決して聞くことのできなかったスケールの大きさを感じさせてくれます。また、6番の第2楽章の美しいメロディも注目に値します。
そして、「クロイツェル」と呼ばれる、ヴァイオリンソナタの最高傑作ともいうべき第9番がその後に来ます。
「ほとんど協奏曲のように、極めて協奏風に書かれた、ヴァイオリン助奏付きのピアノソナタ」というのがこの作品に記されたベートーベン自身のコメントです。
ピアノとヴァイオリンという二つの楽器が自由奔放かつ華麗にファンタジーを歌い上げます。中期のベートーベンを特徴づける外へ向かってのエネルギーのほとばしりを至るところで感じ取ることができます。
ヴァイオリンソナタにおけるヴァイオリンの復権というベートーベンがこのジャンルにおいて目指したものはここで完成され、ロマン派以降のヴァイオリンソナタは全てこの延長線上において創作されることになります。
そして最後にポツンと創作されたような第10番のソナタがあります。
このソナタはコンサート用のプログラムとしてではなく、彼の有力なパトロンであったルドルフ大公のために作られた作品であるために、クロイツェルとは対照的なほどに柔和でくつろいだ作品となっています。
「フリッツはバイオリンを奏でる時、寛容と思い遣りに充ちた1人の男としての彼そのものを奏でるのだ」−ジャック・ティボー
ある意味では、この録音は「功成り名を遂げた」人の手すさびかもしれません。
ベートーベンのヴァイオリンソナタのスタジオ録音としては世界初のものだということですから、それなりの意気込みを持って録音にのぞんだとは思うのですが、テクニックの衰えはハッキリしていますし、音程も結構怪しいです。
それでは聴くに値しないようなつまらない演奏なのかと聞かれれば、半分イエスで半分ノーです。
もしこの演奏に完璧なテクニックに裏打ちされた繊細さと明晰さを期待するのなら失望するしかないでしょう。ピアノとヴァイオリンのスリリングな駆け引きを期待する人も失望するしかありません。
しかし、ベートーベンのヴァイオリンソナタから深い情念を宿した人間の声を聞き取ろうとする人にとっては、今もってかけがえのない演奏だと言えます。どこをとっても「力み」と言うものがない飄々とした演奏であり、サラリと流しているようで、至るところのパッセージから歌が聞こえてきます。どこかシューリヒトに共通したものを感じるのはユング君だけでしょうか。
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